かつてのA110の造形と思想を最新技術で表現。傑作MRと呼びたい!
過去の名声とその特徴的なデザインを再現させた、いわゆる“パイクカー”のひとつではないのか?――“アルピーヌA110復活”の第一報に接して、かつての自分は、そんな思いを抱いた。
【注目モデル試乗】軽さが正義! アルピーヌA110の圧倒的なドライビングファンは世界最高レベルである
2016年に“アルピーヌ・ビジョン”という名前のコンセプトモデルで雰囲気が明らかになり、翌年春に開催されたジュネーブ・モーターショーで実車が公開された。コンパクトなボディサイズなども徐々に明確になっていく段階でも、「とはいえ、“走り”に関してはあまり期待しないほうがいいかもね」などと、ちょっと冷めた目で様子をうかがっていたというのが正直なところ。
オールアルミ製ボディに本格ミッドシップ・レイアウトを採用といったスペックはもちろん魅力的なポイントではあったものの、そうした事柄が余りに大胆でチャレンジングに感じられて、逆に不安要素につながったという面もあった。
しかし、そんな斜めからの見方がいずれも的外れで、不安を抱く必要など微塵もなかったということは、テストドライブの機会が訪れて走り始めた瞬間に、嫌というほど教えられる展開になった。
ルノーと日産のアライアンスによって生み出されたターボ付きの1.8ℓ4気筒ガソリンエンジンが生む絶対的な加速力は“一級のスポーツカー”に名乗りを上げるに十二分。その回転フィールやサウンドこそやや情感に欠ける印象はあるものの、パフォーマンスに魅了された。それと組み合わされて2名分のシート背後に横置きされたゲトラグ製の7速DCTは、予想していたよりもはるかに高い完成度だった。さしたる変速ショックもなく滑らかな走りを実現する街乗りシーンから、アクセルペダルを深く踏み込んだ状態でのダイレクト感に富んだ電光石火の変速シーンまで、見事な仕上がりが堪能できたのである。
さらに、高い剛性感を演じながらいかにも軽やかな加速感で軽量ぶりを実感させるアルミボディや、コーナリングのたびにドライバー自身が“旋回中心”に位置することがわかるミッドシップ・レイアウトらしい挙動。さらには最新レーシングマシンばりのフラットフロア構造がもたらす、速度が高まってもリフト感が皆無の安定性など、走り込むほどにA110に採用された特徴的スペックが、決してギミックに終わっていないことを知らされたのである。
硬めの乗り味ながら、決して凹凸で跳ねることのないフットワークも高い完成度を実感するポイントだった。
当初抱いていた疑念が現在ではすっかり晴れ渡ったどころか、かつての自身の眼が、いかに節穴であったかを教えられる結果になった。理想に向けた大胆なチャレンジを行い、着実に成果へと結実させた新たな時代のアルピーヌA110は、まさに気持ちを昂らせてくれる一級のリアルスポーツカーである。パワーユニットの電動化やADASの装備とは無縁。とはいえ、「それがどうした」とドライビング中に思えてくる、そんな心に響く1台だ。
アルピーヌA110主要諸元
グレード=A110S
価格=7DCT 975万円
全長×全幅×全高=4205×1800×1250mm
ホイールベース=2420mm
トレッド=フロント:1570/リア:1565mm
車重=1110kg
エンジン=1798cc直4DOHC16Vターボ(プレミアム仕様)
最高出力=221kW(300ps)/6300rpm
最大トルク=340Nm(34.6kgm)/2400rpm
WLTCモード燃費=14.7km/リッター(燃料タンク容量45リッター)
(市街地/郊外/高速道路:10.0/15.8/17.6km/リッター)
サスペンション=前後ダブルウィッシュボーン
ブレーキ=前後ベンチレーテッドディスク
タイヤ&ホイール=フロント:215/40R18/リア:245/40R18+アルミ
駆動方式=MR
乗車定員=2名
最小回転半径=5.8m
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