多くの長所があるカブリオレ
故ダイアナ妃も乗っていたという、アウディ・カブリオレ。端正なスタイリングと美しいプリンセスとの結びつきは、ネオクラシック・モデルにとって触れるべき過去の1つだといえる。
【画像】アウディ・カブリオレ A5 カブリオレと生産を終えたTT ロードスターも 全36枚
王室が所有していた例は、以前に高額でオークションへ掛けられているが、普通に乗られていた中古車なら身近な金額が付いている。今ところ、価格上昇に巻き込まれてはいないようだ。
レストアが必要そうな例なら、英国では1000ポンド(約16万円)程度から購入でき、普通に乗れるカブリオレでも4000ポンド(約62万円)ほど用意すれば充分。執筆時の最も高い例で、約8000ポンド(約124万円)だった。
アウディ・カブリオレには多くの長所がある。強化されたAピラーのおかげで、横転時に展開するロールオーバー・バーは存在せず、ウエストラインはエレガント。ボディは戦車のように堅牢に作られており、サビに強い亜鉛メッキで仕上げてある。
欧州では、エンジンにも複数の選択肢が用意された。パワフルで信頼性に優れた4気筒1.8L 20バルブと2.0L 8バルブ、2.3Lの5気筒に、2.6Lと2.8LのV型6気筒が、モデルライフ中に登用されている。
エンジンはすべて燃料インジェクションで、最高出力は116psから176psまで。アウディらしくもあり珍しい2.3L 5気筒は、134psを発揮した。
トランスミッションは5速マニュアルか、4速オートマティック。駆動方式はFFのみで、四輪駆動は設定されていなかった。
B3プラットフォームを最終まで維持
アウディ・カブリオレは、運転好きの選択肢には入りにくかった。その理由は、同時期のE36型BMW 3シリーズ・カブリオレの方が、ずっとスポーティなキャラクターだったことが挙げられる。
製造品質に力が込められ、ボディは強化され車重は重い。そのぶん、コーナリングが鋭いわけではなかった。
また、登場が30年以上昔のカブリオレだから、走行時の衝撃でボディが震えることもある。とはいえ、クルマの魅力を否定するほどではない。エンジンはもう少しエネルギッシュでも良かったと思うが、5気筒エンジンは快音を楽しませてくれる。
そんなアウディ・カブリオレの発表は1991年。B3世代の、アウディ80がベースとなっていた。
一方で、アウディ80は1992年にB4系としてフェイスリフトを受け、さらに1994年からはB5プラットフォームを採用したA4へモデルチェンジしている。だが、カブリオレは2000年のモデル終了まで、B3プラットフォームのままだった。
その理由は、固定ルーフ・ボディと比べてカブリオレは開発費用が多く必要なのに対し、販売台数が限られるため。投じた予算の回収を考えると、モデルチェンジが難しかったのだろう。
S2譲りのボンネットとサスペンション
確かにA4へ進化したアウディに、内面では追い越されていたかもしれない。しかし、カブリオレの端正な佇まいはモデル末期まで、充分な訴求力を持っていたと思う。
ボディには、B3世代のS2クーペ譲りとなる、スタイリングなボンネットとテールライトを採用。また、S2と同じスポーツ・サスペンションも与えられていた。
1997年のフェイスリフトでは、シンプルなリアバンパーと、プロジェクター・ヘッドライトを獲得している。1999年に登場したファイナル・エディションでは、上質なレザーインテリアとエアコンが標準。16インチのアルミホイールで足もとを飾っていた。
登場から年数が経つから、探すなら細かな仕様よりも状態の良さを優先したい。ネオクラシックとして、アウディ・カブリオレが評価を高める日も遠くはないかもしれない。
オーナーの意見を聞いてみる
マーク・サンプター氏
「20歳の頃からアウディの大ファンです。最初に買ったのが、20バルブエンジンのクーペ。それから80スポーツに乗り換え、クーペへ戻り、現在のカブリオレへと乗り継いでいます」
「今は、2.8Lエンジンを搭載した、ファイナル・エディションのATモデルです。走行距離は20万kmを超えました。見た目も良いですし、走りも驚くほど。段差でスカットルシェイクが生じますが、古い年式のカブリオレは大体そんなものでしょう」
「わたしは古いアウディのスタイリングの方が、新しいモデルより遥かにクリーンで好きですね。ロールオーバー・バーがないので、ルーフを開いたシルエットもとても美しい」
「低調な価格には、疑問を持ちます。ネオクラシックだと話してくれる人も多いですが、中古車の相場は上昇していません。今のところ。掘り出し物を見つけて、楽しんで欲しいですね」
購入時に気をつけたいポイント
エンジン
カブリオレのV6エンジンは、滑らかで静かに回転するのが正解。5気筒エンジンは、爽快なノイズを楽しませてくれる。バルブリフターの不具合が生じることがあるが、エンジンオイルの経路が詰まり、油圧が下がることが原因。パワーダウンを招く。
エンジンに関係なく、タイミングベルトとウオーターポンプの交換履歴は確かめたい。
サスペンションとタイヤ
車重は軽くなく、ショックアブソーバーやボールジョイント、リンク、ブッシュ類は劣化しやすい。定期的な交換が必要になる。ショックアブソーバーのトップマウントと、ウイッシュボーンも同様。
フロントタイヤの摩耗も早い。偏摩耗がないか確かめたい。
ボディ
ソフトトップの開閉がスムーズか確かめる。トランクリッド側と兼用のハーネスの不調や、油圧を保つプラスティック製リザーバータンクからのフルード漏れが起きやすい。
ソフトトップ・シールの隙間をつたってボディパネルの間へ水が侵入し、荷室フロアが錆びることがある。同時に、フロントガラスのラバーシールの状態も確かめたい。
ボディトリムの状態も、よく観察したい。交換が必要だとしても、純正部品は高価になっている。新品のヘッドライトは、もはや入手困難だという。
インテリアと電気系統
エアバッグなど、警告灯の状態を確かめる。初期のカブリオレにはポーレンフィルターが付いておらず、エアコンのヒーターマトリックスが目詰まりしてしまう。正常にヒーターが機能するか確かめておきたい。交換は安くできない。
英国ではいくら払うべき?
1000ポンド(約16万円)~2499ポンド(約38万円)
ある程度のメンテナンスが前提の、アウディ・カブリオレが英国では中心。17万kmほど走った1997年式や、オプションだったハードトップを備える例を執筆時に見つけた。
2500ポンド(約39万円)~2999ポンド(約46万円)
整備記録は完璧ではないものの、乗れる状態のカブリオレを英国では探せる。
3000ポンド(約47万円)~5999ポンド(約92万円)
状態の良い、後期モデルのカブリオレが視野に入ってくる。整備記録の状態はまちまちのようだ。
6000ポンド(約93万円)以上
2.8Lエンジンのファイナル・エディションを含む、状態の良いカブリオレが中心。1995年式で、整備記録の揃った走行距離8万kmの2.6Lエンジン・モデルという例も、執筆時には英国で売られていた。
知っておくべきこと
ソフトトップがくたびれていたら、高品質な革靴用ブラシで磨いてみることをオススメする。プラストX(PlastX)というクリーナーは、樹脂製のリアウインドウをきれいにしてくれる。
Kシール(K-Seal)と呼ばれるクーラントの添加剤は、ヒーターマトリックスの漏れを止めるのに有効。試してみる価値はあるだろう。
エンジンの吹け上がりが良くない場合、スリック50(Slick 50)というインジェクター・クリーナーを試用してみたい。バルブリフターの不調には、オイル添加剤のトップエンド・トリートメント(Top End Treatment)が良いだろう。
英国で掘り出し物を発見
アウディ・カブリオレ 2.6E 登録:1995年 走行距離:14万4800km 価格:4000ポンド(約62万円)
整備記録もしっかり残り、タイミングベルトはすでに2度交換済み。3オーナー車で、レザーインテリアにブルーのソフトトップ、滑らかに回転する2.6L V6エンジンが載った、魅力的なカブリオレだ。
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