■SUV市場に続々登場するクロスオーバーSUV。各モデルにはどんな特徴がある?
ここ数年、クロスオーバーSUVは世界的な人気で、これまで興味がなかったブランドも積極的な参入をおこなっています。なかでもCセグメント以下のコンパクトクラスは激戦区となっており、各メーカーのエース級のモデルが投入されています。
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そもそもクロスオーバーSUVとは何者なのでしょうか。
クロスオーバーの意味は「違う分野を組み合わせて、新しい物事を作り出すこと」。SUV(スポーツ・ユーティリティ・ビークル)の意味は「スポーツ/レジャーに適した利便性を備えたクルマ」です。
要するに「何でもアリ」なのですが、筆者(山本シンヤ)はビジネスライクではない「華のあるデザイン」と、目線の高さと乗用車と変わらない走りのバランスから来る「運転のしやすさ」が基本だと考えます。
それに加えてさまざまなニーズ(1人で使う/家族で使う、カッコで選ぶ/居住性で選ぶ、オンロードが主体/オフロードも使いたい)といった“プラスα”の魅力を備えたモデルの総称といえるでしょう。
では、国産メーカーのコンパクトクロスオーバーSUVには、それぞれどのような特徴があるのでしょうか。
トヨタはここ数年でラインアップ拡大。「ライズ」はダイハツ「ロッキー」のOEMモデルで、5ナンバーサイズの扱いやすいサイズが特徴で、見た目はアクティブですが走りは都会派でFFがメインのモデルです。
2020年4月に発表されたばかりの「ヤリスクロス」は、コンパクトカー「ヤリス」の派生モデルながら独自のデザインを採用。一見都会派モデルかと思いきや4WDがメインで、ヒルディセントコントロールなどの悪路走破アシストデバイスを用意しており、オン/オフのバランスが取れた走りのようです。
トヨタが以前からラインナップしていた「C-HR」は完全なる都会派で、個性派スタイルと目線の高いハッチバックといっていいスポーティな走りが特徴となっています。
日産のクロスオーバーSUVは、現時点では空白地帯となっています。「ジューク」は2代目が欧州で発表されたものの残念ながら日本導入はありません。しかし、その代わりに「キックス」が導入予定です。
キックスは、日産SUVを代表する「エクストレイル」の弟分らしくオン/オフのバランスが取れたキャラクターでしょう。もちろん、日産お得意の電動パワートレイン「e-POWER」がメインとなっています。
ホンダは、2台の世界戦略車がカバーしています。「フィット クロスター」は、2020年2月に発売されたフィットにクラッディング処理や専用デザインで、クロスオーバー“らしさ”を演出したモデル。最低地上高もアップしていますが、基本はオンロードがメインです。
以前までC-HRとコンパクトクロスオーバーSUVの代表だった「ヴェゼル」は見た目、居住性/積載性、走りなど、このクラスを求めるユーザーのニーズを高次元でバランスよく捉えたモデル。走りはややオンロード寄りですが、コンパクトクロスオーバーSUVのど真ん中に位置するモデルといってもいいでしょう。
■人気のクロスオーバーSUVが焼肉で人気の「カルビ」だった?
最近、クロスオーバーSUV比率が高いマツダですが、コンパクトクロスオーバーSUVは「CX-3」と「CX-30」を用意。一見、キャラクターが被っているように思えますが、強いえていえば、前席優先でパーソナルユースならCX-3、後席やラゲッジも重視するファミリーユースがメインならCX-30。ですが、CX-30がすべてをカバー可能でしょう。
スバルは「XV」です。「インプレッサ」をベースにクロスオーバー化させたモデルですが、スバル伝統のシンメトリカルAWDに加えて200mmの最低地上高により、下手なSUV顔負けの悪路走破性も備えています。一見ライトなキャラクター見えますが、走りに関してはクラス最強のオールラウンダーといってもいいと思います。
三菱は「RVR」です。ボディサイズやオン/オフの走りのバランスなどは決して悪くないのですが、デビュー時期が2010年と基本設計の古さは隠せないのも事実です。
スズキはキャラクターが異なる3台を用意しています。「クロスビー」は軽自動車「ハスラー」の兄貴分といったモデルで、4WDやグリップコントロール/ヒルディセントコントロールなどの悪路走破支援デバイスも用意されますが、あくまでも都会派寄りのキャラクター。
2018年7月にフルモデルチェンジを遂げ大きな話題となった「ジムニーシエラ」はコンパクトサイズと機動性の高さを活かした悪路走破性が特徴で、日本でも数少ないオフ重視モデル。
そして、「エスクード」は日本では地味な存在ですが、欧州仕込みのオンオフ両刀の走りは「隠れた逸品」といっていいと思います。
※ ※ ※
これらのモデルの多くは「コンパクト」といいながらも、世界戦略車として開発されていることもあり、ボディサイズは同じクラスの乗用車よりは大きめなのも事実です。そんなことから、数少ない5ナンバーサイズのライズ/ロッキーの人気の高さが解ると思います。
そこで、今はより小さな軽自動車がベースとなるクロスオーバーも注目されています。スズキ「ハスラー」はありそうでなかった軽クロスオーバーの先駆者で、現行モデルは2020年1月に2代目が発売されました。
その後を追うべく、ダイハツからは「タフト」が2020年6月に発売予定となっています。どちらもコンパクトクロスオーバーよりもアソビ心がある大胆な内外装デザインと「ちょっと行ってみようかしら!」と思わせる、いい意味で“ほどほど”のオフロード性能が特徴となっています。
この辺りは「日本人のため」というニーズに的確な商品企画が可能な軽自動車らしい部分かもしれません。このように、それぞれのモデルの特徴はさまざまなことが解ると思います。つまり、ユーザーが「どのように使いたいのか?」によって、選択肢はおのずと絞ることができるはずです。
実は、筆者はクロスオーバーSUVは焼肉の定番「カルビ」に似ていると思っています。カルビは韓国語で「あばら」を指す言葉で、あばら周辺の肉であることを以外は明確な定義は存在しません。つまり、お店によって特徴はバラバラなのですが、どれでも人気メニューであることは間違いないと、まさしく現在のクロスオーバーSUVと同じなのです。
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