2021年スーパーGTの中で、最長距離で争われるシリーズ第2戦、富士GT500kmレースは、終盤にきて流れが二点三転するレースとなった。この荒れたレースを制したのはNo.17 Astemo NSX-GT(塚越広大/ベルトラン・バゲット)だった。
昨年も第2戦の富士と第4戦のもてぎ、計2勝を挙げてランキング3位につけた彼らにとって、実はこの週末は決して楽なレースではなかった。優勝記者会見場に現れた塚越は「昨日の走り初めから、決して好調な滑り出しではなく、公式予選でも速さを出せなかった」と話し始めた。
■スーパーGT第2戦富士:初めて運用されたFCY。残り18分の大激戦をAstemo NSXが制す
「予選は、時間が足りずにちゃんとアタックできませんでした」と言う塚越だが「ちゃんとアタック出来ればQ2には行けたかもしれませんが、ポールを狙うだけの速さはなかった」と分析した。そして「元々僕たちのクルマは、決勝の速さはあっても予選での速さが足りないところがあります。(同じNSX勢でも)8号車(No.8 ARTA NSX-GT)や1号車(No.1 STANLEY NSX-GT)には予選では負けていました」としたが、「彼らのデータも参考にしながら、見直すべきところを見直して改善していきたい」と次戦以降に期待を繋いだ。
決勝で大きなターニングポイントとなったのは、1回目のルーティンのピットインだ。彼らがピットインしたタイミングはFCY(フル・コース・イエロー)とほぼ同時で、その結果順位を大きく引き上げることになった。それに関して塚越は「あのタイミングは狙ったものじゃなかったのですが、勝智さん(金石勝智監督)が流れを変える判断をしてくれました」と明かし、「流れを変える判断というか、流れを呼び寄せる良さがあった」と金石監督の判断を讃えた。
それでもこの週末は、最後まで厳しい戦いとなった。
「トップに立っていても、追いつかれてもおかしくないペースでしか走れなかった」と苦しい戦いを振り返った塚越は「それでも持っているものはすべて出し切って、やれるだけのことはやり切ろう」と気持を強く持ち、「ライバルはストレートが速く、セクター3でも、少し気を許すとインを指してくるから、FCY明けでも決して油断することなく走った」とコメントした。
また先行していた8号車や36号車(No.36 au TOM'S GR Supra)がペナルティやトラブルで遅れていったことに対しても「チームやスポンサーさん、皆に後押しされていたので最後まで粘り強く走れた」とチームや関係者の応援に謝意を語った。
昨年までのスポンサーであるKEIHINが今年から企業統合の結果、Astemoのブランドをタイトルスポンサーに掲げることになったが、その発表会で今年の走りのスタイル/キャッチフレーズを問われた塚越は「優勝したら話します」と取材記者に約束していたが、これについては「昔は“弾丸ボーイ”と呼ばれたこともありましたが、もうボーイと呼ばれる歳でもないし…」と一息置いて「だからAstemoさんのイメージカラーである赤から“輝嚇の弾丸”としました。意味も漢字も難しいので、ちょっと恥ずかしくて発表会では話せなかったのですが、今日は勝ったので……」と少しはにかんだ。
次戦、月末の鈴鹿戦に向けて聞かれると「今回優勝したことで、開幕戦のポイントと合わせると、鈴鹿では燃料リストリクターを絞られることになると思います。鈴鹿では厳しい戦いになると思いますが、チャンピオンシップを狙うためにはチームとしてもミスできない」とし「1ポイントでも多く稼げるようなしぶといレースをしたい」と塚越は締めくくった。
塚越とコンビを組んで3シーズン目となるバゲットは、今回の決勝では2番目のスティントを担当。優勝会見では「500kmレースが戻って来たのはよかったし、普段通りとはいかないけれど、お客さんの前で走って優勝することができて嬉しかった」と優勝のファーストインプレッションを語った。そして「グリップが足りなくて厳しいから、最後のスティントではタイヤを(別のスペックのモノに)交換した方が良い、と監督に進言したんだ。それも含めてチームはミスひとつせず完璧なサポートをしてくれた。優勝できたことで、次のレースに向けて、また一つ大きなやりがいが出てきたと思う」と次戦以降への意気込みを語った。
その次戦、鈴鹿戦については「自分たちのクルマは、鈴鹿では(テストで)良いクルマに仕上がっている。元々ハイスピードコーナーでは優位があるから鈴鹿には強いと思う」とし、「サクセスウェイトで重くなるから厳しい戦いにはなるけど、チャンピオンを獲るためにはミスをせず、粘り強く戦って1ポイントでも多く稼ぐレースにしたい」と塚越と同じ目標を語った。
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