中国のBYDが日本へ導入する新型「シール」に、世良耕太が試乗した。ライバルと較べても遜色ない最新セダンに迫る!
「これがおなじBYDのクルマ?」
BYDの新型シールは、コンパクトSUVの「アットスリー(ATTO 3)」、さらにコンパクトなサイズの「ドルフィン(DOLPHINE)」に次ぐ、BYD Auto Japanが日本に正規輸入するモデルの第3弾で、セダンタイプの電気自動車(BEV)だ。2022年にBYDの本拠地がある中国でローンチして以来、グローバルでの販売実績は23万台を超える。
シールはアザラシの意味で、ドルフィン(イルカ)と同様、BYDの海洋シリーズに属する。フロントバンパーサイド部のC字型ラインを反復させたイルミネーションは、海の波をイメージ。リヤの左右貫通式テールライトは空と海の広大さを表現しているという。
海や海洋生物をイメージしているとはいうものの、イルカのヒレを模したインナードアハンドルを採用したドルフィンほど、海洋生物のイメージをダイレクトには造形に落とし込んでいない。それに、ドルフィンのインテリアは有機的な造形とカラフルな色使いで「夢の国のアトラクション施設に迷い込んだ?」と、錯覚させるようなところがあるものの、シールのインテリアはオーセンティック。
ポップなインテリアだけでなく、シックなインテリアだってできるんだぞ! と、見せつけられた。海洋シリーズではないもののドルフィンと同様にポップな路線のアットスリーも含め、国内導入済みの2車種からBYDのイメージを築き上げてしまうと、雰囲気が大きく異なるシールに打ちのめされることになる。「これがおなじBYDのクルマ?」と。
全長4800mm、全幅1875mmのシールは国内輸入車マーケットのDセグメントに属する。同セグメントに属するのは、おなじBEVではテスラ「モデル3」、内燃機関を積んだモデルではBMW「3シリーズ」、メルセデス・ベンツ「Cクラス」、アウディ「A4」などがある。国産ではトヨタ「クラウンシリーズ」との競合が予想される。つまり激戦区だ。個性派ぞろいのDセグメントに放り込んでも、アルファロメオやアウディで辣腕をふるったデザイナー、ヴォルフガング・エッガーがデザインを手がけたシールは埋没しない。どのブランドのクルマにも似ていないし、個性的で、流麗であり美しい。
運転席・助手席ともにベンチレーションとヒーターを装備したパワーシートは、ダイヤモンドパターンを刻んだナッパレザーを使う。前席もラグジュアリーなムードがいっぱいで居心地はいいが、後席にも座りたくなる。
広々としているのはもちろん、パノラミックガラスルーフの恩恵で眺めが良い。1.9平方メートルの面積を持つ二重構造のガラスルーフがはめ込まれているおかげで、空が視界に入る。都会を走ればビルの谷間を縫うダイナミックな景色が楽しめるし、山を走れば木々が目に飛び込む。紫外線カット率は99%、可視光線透過率は4.2%、日射透過率は16%だ。6月中旬での短時間の試乗だったが、室内は強力なエアコンのおかげで快適な環境に保たれていた。
高性能に衝撃!強力なのはエアコンだけではない。強力なモーターがもたらす動力性能は驚異的だ。
シールにはリヤにモーターを搭載する後輪駆動モデルと、リヤにくわえてフロントにもモーターを搭載するAWDモデルがある。後輪駆動のベースモデルは312ps、AWDモデルは529psのシステム最高出力を発生する。0-100km/h加速はベースモデルが5.9秒、AWDモデルは3.8秒だ。
529psの実力がどれだけスゴイかというと、車速を問わず(低車速のほうが効果は大きいが)、アクセルを全開にした瞬間に首が後ろに倒れそうになり、そのままにしておくと血液が後頭部にかたよって意識が遠くなりかけ、まずいまずいとアクセルペダルを戻し、フーッと息を吐いて、「何だったんだ、今のは!?」と、呆然とする感じである。自分の意思でペダルを踏んでおきながら。
シールのAWDモデルはポルシェ「タイカン」のターボ系やメルセデスAMG「EQS」と同類の、加速というより“ワープ”と評したくなるほどの、瞬間移動を披露する。BYDはシールを“e-Sport Sedan”と表現しているが、その表現に恥じないパフォーマンスの持ち主であることは間違いない。
望むなら瞬間移動を体験させてくれるAWDモデルは(電子制御ではなく)メカニカルな油圧可変ダンパーを標準装備。あり余るパワーを生かしてワインディングロードで思い切り振りまわすのに向いた足まわりのセッティングになっているようで、市街地や高速道路を巡航時には少々硬めに感じる。一方、312psのベースグレードでも十分にパワフルだ。こちらはコンベンショナルなダンパーを搭載。フロントの軽さもあるのか、AWDに比べて乗り味はしなやかである。
両グレードともバッテリー容量は82.56kWh。これだけの容量があれば、日帰りドライブなら残量を気にすることなく過ごすことができそうだ。シールが優れているのは充電性能で、最大105kWの出力を受け入れることができる。BYDのスタッフが90kWの充電器で30分間充電したところ(充電開始時の残量32%)、42kWhの充電ができたという。kWhあたり6kmは走るというから(車格を考えると優秀な数字だ)、30分間の充電で約250km分のエネルギーが補充できる計算だ。
BEVとの付き合いが深くないと実感しづらいかもしれないが、シールのこの充電性能、とんでもなく高い。ロングドライブを苦手とするBEVの固定観念をくつがえす高性能ぶりだ。固定観念をくつがえしにかかっているのは車両価格も同様で、ベースグレードが528万円、AWDは605万円である。CEV補助金(申請中)がドルフィンなどとおなじ35万円で適用されると、ベースグレードは実質400万円台、AWDは500万円台で購入できることになる。
(海洋シリーズだけに)円安の“波”にあらがってDセグメントBEVセダンの価値感を破壊しにかかっているのが、BYDの新型シールだ。見て、触れて、走らせた印象からすると、人気の波に乗るだけの実力は十分ありそうである。
文・世良耕太 写真・小塚大樹 編集・稲垣邦康(GQ)
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まずはそこから。
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