現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 【本当に体感できる?】タイプR純正用品に採用の“実効空力”を乗り比べてみた。

ここから本文です

【本当に体感できる?】タイプR純正用品に採用の“実効空力”を乗り比べてみた。

掲載 5
【本当に体感できる?】タイプR純正用品に採用の“実効空力”を乗り比べてみた。

ホンダアクセスの「実効空力(じっこうくうりき)勉強試乗会」なるイベントが、“群サイ”こと群馬サイクルスポーツセンターで行われた。
 
基本的には、新型シビック タイプRに純正アクセサリーとして新開発された「テールゲートスポイラー」の効果を体感する試乗会だが、お楽しみはもう一つあった。
 

ホンダアクセスの変態集団(開発陣)が自信を持つ核心技術
 
このテールゲートスポイラーには一見目立たないが、キーテクノロジーとして新しい実効空力デバイスが搭載されている。その効果を一般的な車種でも実証すべく、実験用に手作りしたデバイス(ホンダアクセスの匠による力作)をNボックスに装着し、走りの違いを検証するという趣向だ。マニア集団のホンダアクセスらしく、なかなか変態濃度の高いコンテンツである。
 
ホンダアクセスがエアロダイナミクスの開発でキーワードにしているのが「実効空力」。「日常の速度域でも体感できる空力効果」を同社ではこう呼んでいる。
 
実効空力の狙いは、「路面に吸いつくような安定感」。前後リフトバランスを最適化し、4輪のタイヤグリップを使い切れる接地荷重を得ることで、外乱の影響やヨーの発生を最小化する。ホンダアクセスが手がけるエアロパーツやコンプリートモデルの「モデューロX」で、すでにご存じの方も多いだろう。
 
そして、2022年にマイナーチェンジされたフリード モデューロXからは、空力効果をさらに高める実効空力デバイスを搭載(フリードのデバイスはエアロフィン)。ホンダアクセスのエアロダイナミクスはたゆまない進化を続けているのだ。
 
ギザギザのあり・なしを体験。ありはアリアリだった!!
 
新型シビック タイプR用のテールゲートスポイラーに採用された実効空力デバイスは、ギザギザの鋸歯形状。シェブロンとも呼ばれるユニークなカタチだ。これが強力なダウンフォースを生み出すメインエレメントの下面に実装されているわけだが、その鋸歯形状の効果をシンプルに試すのがNボックス(NAのFF車)を使った実験である。
 
まずノーマル(非装着)の状態で走りの感触を確かめたあと、いったんピットイン。今度は鋸歯形状の実効空力デバイスをテールゲートに装着する。装着といってもデバイスの裏面はマグネットシートなので、ペタッと貼る(というか置く)だけだ。
 
何となくオカルト的なこの手の比較試乗モノは、その効果が本当に感じられるのか、自分のセンシング能力を含めていつも軽い不安を覚える。しかし、眉に唾をつけて再びコースインすると、あら不思議!
 
いきなり直進性が向上しているのだ。ノーマルではストレートでも路面の複雑なうねりで右に左に修正舵をゆっくり繰り返したが、その必要性が格段に少ない。路面の外乱にステアリングが影響を受けにくく、挙動が落ち着いて運転しやすい。車速は一般的な50~60km/hだ。
 
ノーマルとの違いはコーナーでも体感できる。実効空力デバイス装着車はステアリング中立付近の曖昧な感触が軽減。初期から操舵の効きが向上し、ハンドリングのリニアリティが高くなる。修正舵はここでも少なく、旋回中の操舵角やボディの姿勢はピタッと安定している。路面に追従するサスペンションのストロークも、しなやかさが増しているように感じられる。
何だかキツネにつままれたようだが、実効空力デバイスの効果はアリアリだ。
 
開発担当者によると、鋸歯形状の三角形の一つひとつが小さな縦渦の流れをいくつも生成し、ルーフエンドから剥離する気流の乱れを整えるという。この整流によって走行中に発生するリフト(揚力)の前後バランスが最適化され、ボディの姿勢がピタッと安定する。ダウンフォースは発生しないものの、土台となるボディを空気の力で上からある程度抑えることで、その下のサスペンションも動きがよくなるという仕組みだ。
 
しかも、鋸歯形状が生み出す渦流はボルテックスジェネレーターと違って指向性が強くない。そのため直進状態から旋回に移る際にも渦流が壁にならず、左右方向にもスムーズな整流効果が得られるというのだ。
 
効果はあるが、可視化に至らず
 
じつはこの鋸歯形状、渦流があまりにも細かいため、その様子を可視化して確認はできていないらしい。とはいえ、航空機のジェットエンジン(シェブロンノズル)では、排気流とエンジン周囲の気流の混合を穏やかにする騒音低減効果が実証されている。つまり、ノイズの原因となる乱流の発生を軽減していると考えられるのだ。
 
シビック タイプR用にホンダアクセスが新開発したテールゲートスポイラーでは、この鋸歯形状の実効空力デバイスがメインエレメント部の下面にズラリと配置されている。これによって下面に沿って流れる空気を整流。直後のガーニーフラップ部までスムーズに導く。さらなるダウンフォースを生み出すガーニーフラップ形状の効果を、いっそう高める狙いがある。
 
タイプRの日常使いをもっと快適にするために開発
 
テールゲートスポイラーの動的コンセプトは、「いかなる道でもFUNなGT(グランドツーリング)性能」。タイムを削り取るサーキットの走りだけでなく、圧倒的なパフォーマンスを高速道路のロングドライブでも快適に楽しめる直進安定性、またワインディングなどでもハンドリングのさらなる一体感や運転がうまくなったように感じさせる寛容性が追求されている。
 
「ノーマルのタイプRはフロントのダウンフォースが強めで、このテールゲートスポイラーを装着すると前後のリフトバランスが均等近くになります。ノーマルはフロントで路面を捉える印象が強いですが、FRみたいな乗り味に感じられると思います」(開発担当者)
 
ホンマかいな!? ただ、筆者はそもそも新型タイプRの試乗自体が今回初めて。330馬力FFの過激さに圧倒されてスポイラー付け替えの違いが入ってくるか一抹の不安があった。
 
ともかく赤いバケットシートに収まり、ドライブモード「スポーツ」で乗り比べしてみると、これがホントにそうなのだ。今度はNボックスと異なり、そこそこタイプRなりの走り方である。
 
“リヤの存在感”が増し、FR車のようなハンドリングに!
 
まず、ステアリングのフィーリングが違う。新型はノーマルでも洗練度を高めているが、リヤのスポイラーをホンダアクセス製に換装すると、中立でノーマルと同等以上の直進性を発揮しながら、舵を入れるとさらにスッキリ軽い上質な手応えを味わわせる。
 
そして、真っ直ぐ走っていてもリヤの確かな存在を感じるのだ。群サイの荒れた舗装路面にもサスペンションが見事に追従し、後輪がしっかり接地する様子が手に取るように伝わってくる。サスの動きもいっそうしなやかになり、乗り心地も向上。後輪で路面を蹴りながら(実際は違うが)高速道路を矢のように、かつ快適に走り続けるツアラーのような雰囲気が確かに出ている。
 
コーナリングにしてもそう。ノーマルは前輪で路面を鷲掴みにして曲がり、アクセルオンで前輪が駆動力で引っ張りながらさらに曲がるという、フロント主体で曲がるイメージだ(FFだから当然だが)。
 
アクセス装着では操舵して外側の後輪にグッと荷重が乗り、旋回中の姿勢はノーマルよりもボディが吸いつくように安定。再びアクセルを踏み込むと、外側のリヤサスがグッと沈み込んで一気に駆動力をかける。ステア特性にアンダー傾向が表れることもない。コーナーにおける一連の動きは、まさしくFRのようなボディの前後バランスと一体感の密なハンドリングを実感させるのだ。
 
強力なダウンフォースによって前後リフトバランスを均等に近づけ、タイヤにかかる荷重もすべて均等にするというテールゲートスポイラーの性能はホンモノ。旋回でも空力効果が切れ目なくスムーズにつながる感触は、鋸歯形状の実効空力デバイスが威力を発揮しているに違いない。
 
魔法をかけられたよう……“味変”効果は絶大だった!
 
テールゲートスポイラーはコレ一つでタイプRの走り味を別モノにチューニングできる、魔法のような純正エアロパーツだ。そして、鋸歯形状にはまだナゾも多いというから、形状や大きさなどに今後新たな発見がある可能性は十分ある。ホンダアクセスの実効空力デバイスは今後の進化も楽しみなのだ。
 
〈文=戸田治宏 写真=山内潤也〉

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油5円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

「AI EV時代のトヨタ」めざすファラデー・フューチャー、新型EV『FX』最初の試作車が完成
「AI EV時代のトヨタ」めざすファラデー・フューチャー、新型EV『FX』最初の試作車が完成
レスポンス
待ってろスイスポ!!! FF1.3Lターボのピリ辛ボーイズレーサー[新型GRスターレット]は若者にも手が出しやすい250万円で登場か!?
待ってろスイスポ!!! FF1.3Lターボのピリ辛ボーイズレーサー[新型GRスターレット]は若者にも手が出しやすい250万円で登場か!?
ベストカーWeb
F1関係者への入国拒否が続くラスベガス。角田裕毅も足止め「危うく帰国させられるところだった。来られてラッキー」
F1関係者への入国拒否が続くラスベガス。角田裕毅も足止め「危うく帰国させられるところだった。来られてラッキー」
AUTOSPORT web
Team HRC、S耐の2年計画を完遂。初期メンバーの武藤「楽しい環境がいつまでも続けばいいな」
Team HRC、S耐の2年計画を完遂。初期メンバーの武藤「楽しい環境がいつまでも続けばいいな」
AUTOSPORT web
“ボロボロ”のランボルギーニ「ミウラ」に価値はある? マニア垂涎“ジャンクヤードのガラクタ”がオークションに登場! 気になる価格は?
“ボロボロ”のランボルギーニ「ミウラ」に価値はある? マニア垂涎“ジャンクヤードのガラクタ”がオークションに登場! 気になる価格は?
VAGUE
“45年ぶり”マツダ「サバンナGT」復活!? まさかの「オープン仕様」&斬新“レトロ顔”がサイコー!ワイドボディも魅力の「RXカブリオレ」とは?
“45年ぶり”マツダ「サバンナGT」復活!? まさかの「オープン仕様」&斬新“レトロ顔”がサイコー!ワイドボディも魅力の「RXカブリオレ」とは?
くるまのニュース
なんとハイブリッド仕様も!! クラシックなボディに6気筒を押し込んだ[クラウン]セダンがスゴすぎる
なんとハイブリッド仕様も!! クラシックなボディに6気筒を押し込んだ[クラウン]セダンがスゴすぎる
ベストカーWeb
ミニバンなら日本車……とも言い切れんぞ! ちょっとマイナーだけどヨーロッパにも個性派ミニバンが存在した
ミニバンなら日本車……とも言い切れんぞ! ちょっとマイナーだけどヨーロッパにも個性派ミニバンが存在した
WEB CARTOP
「すごい多重事故…」 関越道で「トラックなど3台が衝突」発生! 2車線が一時通行規制で「通過時間70分」の大渋滞 圏央道も混雑
「すごい多重事故…」 関越道で「トラックなど3台が衝突」発生! 2車線が一時通行規制で「通過時間70分」の大渋滞 圏央道も混雑
くるまのニュース
SS12は“安全上の問題”でキャンセルに。SS11を終えた時点でトヨタ勝田貴元は総合3番手|WRCラリージャパンDAY3午前
SS12は“安全上の問題”でキャンセルに。SS11を終えた時点でトヨタ勝田貴元は総合3番手|WRCラリージャパンDAY3午前
motorsport.com 日本版
コンチネンタル、車内の生体情報を検知する革新的ディスプレイ発表へ…CES 2025
コンチネンタル、車内の生体情報を検知する革新的ディスプレイ発表へ…CES 2025
レスポンス
[圧倒的燃費]と環境性能! [トヨタ・ヤリス]を超えるクルマってぶっちゃけある? 
[圧倒的燃費]と環境性能! [トヨタ・ヤリス]を超えるクルマってぶっちゃけある? 
ベストカーWeb
給与が高いスイスに拠点を置くザウバーは例外? ハースF1小松代表、FIAが検討する予算上限”優遇措置”に反論「皆反対している。シンプルなままでいい」
給与が高いスイスに拠点を置くザウバーは例外? ハースF1小松代表、FIAが検討する予算上限”優遇措置”に反論「皆反対している。シンプルなままでいい」
motorsport.com 日本版
日産「新型スカイライン」発売! 歴代最強「匠“手組み”エンジン」×旧車デザインの「特別仕立て」登場も「次期型」はもう出ない…? 「集大成」完売した現状とは
日産「新型スカイライン」発売! 歴代最強「匠“手組み”エンジン」×旧車デザインの「特別仕立て」登場も「次期型」はもう出ない…? 「集大成」完売した現状とは
くるまのニュース
実は大きく違う!? モータースポーツ総合エンターテイナー濱原颯道が開催した「クシタニライダー台湾人スクール」で感じた台湾人ライダーと日本人ライダーの練習環境の違いとは
実は大きく違う!? モータースポーツ総合エンターテイナー濱原颯道が開催した「クシタニライダー台湾人スクール」で感じた台湾人ライダーと日本人ライダーの練習環境の違いとは
バイクのニュース
旧車への憧れ、理由の1位は「デザイン」、人気車種は…旧車王が調査
旧車への憧れ、理由の1位は「デザイン」、人気車種は…旧車王が調査
レスポンス
いずれスポーツカー[バブル]は崩壊する!! その時あなたは買う勇気があるか!?
いずれスポーツカー[バブル]は崩壊する!! その時あなたは買う勇気があるか!?
ベストカーWeb
レゴとF1、パートナーシップを締結…2025年からクリエイティブな遊び提案へ
レゴとF1、パートナーシップを締結…2025年からクリエイティブな遊び提案へ
レスポンス

みんなのコメント

5件
  • FFがFRのようなハンドリングにはなる訳ないかと
    FFでリアが安定すると4WDの様な乗り味になる 恐らく4WDの様な乗り味なのだと思う
    普段辛口のモータージャーナリストの面々が、タイプRに関しては皆が口を揃えて大絶賛 よほど良い出来なのでしょう
    峠と高速で是非一度乗ってみたい
  • シビック海苔はFRを仇だと思って運転したことないからこれがFRっぽいんだよと言われれば鵜呑みにできる。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

193.7235.2万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

25.0234.9万円

中古車を検索
シビックの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

193.7235.2万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

25.0234.9万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村