バランスに優れ狙った通りに操りやすい
text:James Disdale(ジェームス・ディスデイル)
【画像】スタード・フィエスタERX VWゴルフとEQCのEVコンセプトも 全85枚
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)
激しく加速する、フィエスタERX。状態を理解するまでに数秒は要する。すぐにタイトなコーナーが迫る。ラリークロスだから、ターマックとグラベルとが入り混じり、楽しさをプラスしてくれる。
ありがたいことに、ブレーキは極めてパワフルで漸進的。左足の動きに同調するように、制動力が立ち上がる。
初めて走るラリークロス・コースのグラベルを、少し慎重に回る。再びターマックへ切り替わる直前、助手席のストールがアクセルペダルを踏み込む指示を出す。3基のモーターが、もう一度すべてのパワーを開放する。
今回許されたスタード・フォード・フィエスタERXの試乗は、3周のみ。勇気を振り絞るしかないが、素晴らしいセットアップと、気にすべきコーナーは4か所という覚えやすいコースで、2周目からは少しクルマの能力を探れるようになった。
凄まじいパワーに慣れることはなくても、扱いやすい。操縦性のバランスは高く、狙った通りに操れるような気がしてくる。ラリークロス・マシンらしく走らせられそうに思えてくる。
ドライビングポジションも丁度いい。時間が限られていて、シートやペダルの調整時間はなかった。筆者がストールと似た背格好だったのは好都合。身長の高い別のドライバーは、窮屈そうに運転していた。
背もたれはやや直立気味で、ステアリングホイールは手前にある。低重心に寝そべって運転するオンロードレーサーではなく、ラリーカーに近い。視界に優れ、コースも確認しやすい。
強烈な加速や軽いドリフトも楽しめる
ペダル位置は完璧。カーボンファイバー製の深いバケットシートと4点ハーネスが、身体をガッチリ固定してくれる。リッデン・ヒル・サーキットは短く、変速は不要。アクセルペダルとブレーキペダル、ステアリングホイールに集中していれば良い。
巨大なゴーカートと呼ぶには不適切かもしれないが、扱いやすい操作系のレイアウトで、想像以上に運転に馴染める。短い時間だったが、ラリークロス・マシンの本物の体験に迫れたと思う。
電動油圧式のパワーステアリングが備わり、レシオはクイックで重み付けも丁度いい。フィードバックも濃密で、見定めたラインを完璧にトレースできる。砂利だらけのグラベルでも、ターンインの食いつきは圧巻だ。
進入時のオーバーステアに気をつける必要はあるが、スリップからグリップが戻る変化も掴みやすく、修正はとても自然に行える。少し自信が付いた頃には、ふんだんなパワーとトラクションで、強烈な加速や軽いドリフトも楽しむことができていた。
フロント側より、リアモーターの方が2基で強力。アクセルペダルを踏み込めば、自然とテールは流れ出す。
ラリークロス用のサーキットは、深いワダチと穴ぼこだらけ。しかしテイン社製のサスペンションが見事に機能し、まるで舗装したての高速道路のように車内は滑らか。悪ふざけも許してくれる。
約60%も安いランニングコスト
実際はプロドライバーの10%くらいの走りなのだろうけれど、もっと激しく運転したいと思えてくる。クーパー社製のタイヤは、不気味なほどグラベルでもグリップし、ターマックの左コーナーも機敏に回る。
最後の1周、ストールはクールダウンするように指示した。筆者が体験できたのは、ごく表面的な部分だけ。ストールが自らフィエスタERXをドライブする様子も見れたが、目を剥くほどに速く、派手なドリフトは壮観だった。
同時に、スタード社が主張するように、ユーザーフレンドリーなマシンだということは間違いないだろう。筆者が今まで試乗してきた中で、ドライビングマシンとして最高の1台に加えたいと思えるほど。
内燃エンジンが載っていないという事実を忘れるくらい、アドレナリン全開だった。
スタード・フォード・フィエスタERXの英国価格は、32万ポンド(4800万円)から。既存のクルマに純EVのシステムを組む場合は、17万ポンド(2550万円)前後だという。
確かに安くはない。だが内燃エンジンのラリークロス・マシンも、それに近い金額が付いている。さらにスタード社の技術力は、極めて高い。
スタード・フォード・フィエスタERXの最大の強みは、ランニングコストの低さ。内燃エンジンのマシンより、約60%も安く済むという。
もちろん、タイヤやブレーキの交換は走れば頻繁に行なう必要がある。サスペンションのリビルドも、定期的に必要だろう。しかし、基本的に駆動用モーターとバッテリーはメンテナンスフリーなのだ。
興奮に化石燃料は必須要素ではない
スタード・フォード・フィエスタERXはFIAの認定を受け、英国のラリークロス選手権、BRX 5ネーションズのほか、5か国でのチャンピオンシップへの出場資格がある。既にエレクトリック・ラリークロス選手権にも出場経験がある。
競争力は充分証明済みで、昨年のデビュー戦ではストール自身がフィエスタERXのステアリングを握り、優勝している。ケン・ブロックと同じくらい多くの注目を集めた。
電気自動車だけによるレースは、クルマ好きを不安にさせる未来かもしれない。しかし、ストールのチームが開発したフォード・フィエスタERXを見れば、モータースポーツでの興奮に化石燃料は必須要素ではないと理解できるだろう。
外見は見事なラリークロスマシン。その内側には、スタードの生み出した驚異的な興奮が宿っている。
スタード・フォード・フィエスタERX(ラリークロス・マシン)のスペック
英国価格:32万ポンド(4800万円)
全長:−
全幅:−
全高:−
最高速度:−
航続距離:非公表
CO2排出量:−
車両重量:1450kg(予想)
パワートレイン:トリプルAC同期モーター
バッテリー:35kWhリチウムイオン
最高出力:611ps
最大トルク:101.9kg-m
ギアボックス:2速マニュアル
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
愛車管理はマイカーページで!
登録してお得なクーポンを獲得しよう
「なんで“鳴らした”!?」 後続車の「クラクション」に“イラ”っと! 一度は感じる「ブレーキ問題」! 見直すべき“ブレーキ技術”とは
日産が93.5%の大幅減益! ハイブリッドの急速な伸びを読めなかったのは庶民感覚が欠けていたから…「技術の日産」の復活を望みます【Key’s note】
ホンダ新型「プレリュード」まもなく登場? 22年ぶり復活で噂の「MT」搭載は? 「2ドアクーペ」に反響多数!海外では“テストカー”目撃も!? 予想価格はいくら?
日産『エルグランド』、15年目の大変身へ! 燃費倍増も、BEV化はおあずけ?
給油所で「レギュラー“なみなみ”で!」って言ったら店員にバカにされました。私が悪いんですか?怒りの投稿に回答殺到!?「なにそれ」「普通は通じない」の声も…悪いのは結局誰なのか
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!
みんなのコメント
1000万くらいならリアルに買うんだけどな…。