前回「シール」の構成や仕様を確認した小川フミオ氏は、同車の内外装デザインに注目する。どんな印象を持ったのだろうか。
美しいプロポーションを選択
日本デビュー目前のBYD「シール」に試乗!テスラ「モデル3」のガチンコライバル!
BYDのスポーティセダン「シール」は、同社の「海洋デザイン(Marine Aesthetic Design)」に連なるモデル。
「シーガル(カモメ)」や、日本で既発の「ドルフィン(イルカ)」と並んでアザラシを車名としている。
デザイン的には、「X」と呼ばれるデザインモチーフがフロントマスクに採用されている。ヘッドランプ下のLEDによるシグネチャーランプの意匠が、そのように見えるからだろう。
LEDによるドットライトを採用しているのはリアコンビネーションランプも同様。遠目からではわかりにくいものの、近寄ると、ラインとドットのコンビネーションが質感を生んでいるのがわかる。
サイドウインドウの輪郭は、弧を描いているが、じっさいはリアクオーターに明かり採りをもたない、いわゆる4ライト。つまり欧州の”お約束”ではドライバーズカーを意味している。
4ライトにこだわるのは、BMWやメルセデス・ベンツ。レクサスも同様で、「LS」をはじめ「ES」や「IS」と、同ブランドのセダンはみなドライバーズカーであることが主張されているのだ。
プロポーションは、奇をてらっていない。Aピラーの位置も、ことさら前のほうに移されていないし、リアクォーターパネルは、後輪の上に位置している。
BEV(バッテリー電気自動車)だから変わっているべき、という時期はとうに卒業して、100年を超える自動車の歴史のなかで、みなが美しいと思うプロポーションに忠実であることを選んだのだろう。
じっさい、BYDのヘッドオブデザインを務めるウォルフガング・エッガー氏が、過去のICE(エンジン車)で確立した美を継続する、と語っているのをミュンヘンのIAAモビリティのリポートで読んだこともある。
質感が高く、余裕のある室内
シールの内装でまず目がいくのは、かなり立体的な形状のスポーツシート。サイドサポートが大きく張り出すとともに、からだがあたる背面と座面には立体的なダイヤモンドパターンが刻まれている。
ダッシュボードのデザインは、シンプルでクリーン。目を惹くのは、ドライバー正面の10.25インチのモニターと、中央の15.6インチの巨大なサイズのインフォテイメントシステム用モニター。
インフォテイメントシステムのモニターは、スイッチで90度回転。これは日本にすでに導入されている「ATTO3」と「ドルフィン」でもおなじみのシステムだ。
ホイールベースが2,920mmと長いため、後席空間も余裕がある。室内の質感も、豪華ではないものの、それなりに高い。
スマートフォンのチャージャーは、最近のプレミアムカーでは標準装備になった観があるが、シールには、昨今の競合に負けず、2台が同時に置くだけで充電できるようスペースが設けられている。
先述の大型スクリーンでどんなエンタテイメントが提供されるか。この時点では不明だけれど、BMWが“走らせなくても乗りたくなることを目指す”とアプリ開発に熱心なように、BYDもおそらく充実をはかるのではないかと思われる。
プレミアム市場ねらいのせいだろうか。車体色は、落ち着いたものばかりが設定されている。ブラック、ホワイト、グレー、くすんだブルーといったぐあい。内装色もブラックか、薄いブルーのみ。
全体として、内外装ともにていねいに質感高く仕上げられている印象で、日本での価格は未発表だけれど、ATTO3とドルフィンとともに、バリューフォーマネーと呼べる価格設定で驚かせてくれただけに、楽しみにしよう。
次回に続く。
BYD シール(AWD仕様)
全長:4,800mm 全幅:1,875mm 全高:1,460mm ホイールベース:2,920mm 車両重量:2,185kg 乗車定員:5名 一充電走行距離:520km 最高出力:390kW(530ps) 最大トルク:670Nm(68.3kgm) バッテリー総電力量:82.5kWh モーター数:前1基、後1基 駆動方式:AWD(全輪駆動) フロントサスペンション:ダブルウィッシュボーン リアサスペンション:マルチリンク 最小回転半径:5.7m 荷室容量:400L(フロント53L)
※スペック値は現地で配布された資料に基づくもので、日本仕様の値はまだ発表されていません。
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みんなのコメント
エクステリアデザインも充分に洗練されている。
が、BYDというメーカーに自分や家族の生命を預けられるかどうかが選択のキモとなるであろう。