2023年8月8日に発表となったスカイライン400Rの限定車「スカイラインNISMO」。NISMOがレースで培った空力テクノロジーを折り込んだ前後のド迫力なエアロバンパーを装備するなど、V37史上、最上級のスポーツセダンに仕上がっているようだが、SNSや自動車メディア記事などでは、フロントフェンダーの両サイドに装着されたスカGやハコスカ時代にあったエンブレムをオマージュしたGTエンブレム(赤バッヂ)がについて、「過去の栄光にすがりすぎ」「歴史の安売り」と酷評されてしまっている。
スカイラインについては、400Rというグレード名についても否定的に感じる人が多いようだが、筆者は400Rも赤バッヂもアリだと思う。
スカイラインに「GT赤バッジ」&「400R」復活!! 懐古趣味へ突っ走る日産よ…それでいいのか…??
文:吉川賢一
写真:NISSAN
V37史上、最上級のスポーツセダンに!!
2014年2月にデビューし、2019年には世界初の高速道路本線上での手放し走行を可能とした「プロパイロット2.0」を搭載(現在は廃止)した現行のV37型スカイライン。まさか9年目にしてNISMOが追加されるとは思いもしなかった。今年になってから400Rを買った人は、悔しさでいっぱいなのではないだろうか。
スカイラインNISMOのエンジンは、GT500レース用エンジンに携わった開発者が、同じ開発設備で手組みによるチューニングを施し、400Rの405ps/475Nmから、NISMO仕様では420ps/550Nmまでチューニング。また、NISMOがレースで培った空力テクノロジーを折り込んだ前後のド迫力なエアロバンパーが装備されているほか、軽量化と走りのしなやかさを出すため、ランフラットタイヤからノーマルの高性能タイヤに変更したうえで、リアタイヤの幅を20ミリ拡大。この高性能タイヤに合わせ、サスペンションとスタビライザーにはNISMO専用のチューニングが施されている。
スカイラインNISMOが788万円、スカイラインNISMOリミテッドが947万円というぶっ飛んだ価格だが、既に一部の店舗では予約枠でいっぱいだという。クルマに金をかける余裕のあるオジサン世代に、大いに響いているようだ。
SNSの反応を見ると、現400Rオーナーの中には、「400Rでも性能は十分だが、NISMOはさらに魅力的で欲しくなった」「やはりNISMOはカッコ良い、もっと早く出してほしかった」「メルセデスやBMWで400ps超を求めると1500~2000万円なので、むしろNISMOはお買い得だ」など、プラスの意見が多くあった。V36を所有していた筆者としても、今作のスカイラインNISMOはかなり胸アツなモデルで、(購入は泣く泣くあきらめざるを得なかったが)、手にできるオーナーさんが、心の底から羨ましい。
エンジンは手組みによるチューニングが施され、最高出力420ps/最大トルク550Nmまで向上したスカイラインNISMO。前後のNISMO専用エアロバンパーを装着しているほか、ランフラットタイヤを廃したうえで、リアタイヤの幅を20ミリ拡大している
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スカイラインの本質は、直6や丸目4灯ではなく「ロングドライブに行きたくなるクルマ」
冒頭でも触れたように、今回の「GT赤バッヂ」のほか、「400R」というグレード名についても似たような評価がある(「400R」という名は、R33 スカイラインGT-Rのオーテックチューンカーで使用されていた)スカイライン。SNS上では、「いまさらオマージュするなんてみっともない」とする意見や、「結局は昔の世代のスカイラインへ戻っているだけ」、「取って付けた感があってカッコ悪い」などという意見がみられた(あまりに酷いコメントは無視した)。
スカイラインの黄金期といえば、ハコスカ・ケンメリ時代、もしくはR32~R34時代といわれ、それ以降のモデル、特に2002年登場のV35スカイラインは、否定されることが多い。だがこのV35はビジネス的には大成功したモデルだ。車両パッケージングやエンジン形式、シャシー構成まで大改革したことで、当時の北米市場では「BMWイーター(※BMWの顧客を喰うという意味)」といわれるほど大成功しており、世界で認められたモデルだ。
筆者は、スカイラインの本質は「ロングドライブに行きたくなるクルマ」であることにあると思っている。安心して気持ちいいドライブが誰でも楽しめるようにするため、最新のアイテムや制御アイテムを搭載して、時代の水準に合わせた性能を確保していく。今後、エンジンがモーターになっても、テールランプが角型になろうとも、「ロングドライブに行きたくなるクルマ」というスカイラインの本質が変わらなければ、それがその時代の「スカイライン」なのだと思う。
実際に現行のV37型は、高いシャシー性能によってダイナミクスの仕上がりが素晴らしい。もちろん課題がないわけではないが十分に素晴らしいモデルであり、乗ったことのない人は、ぜひ何かしらの機会を得て、乗ってみてほしい。乗ればきっと「悪くない」と感じてもらえるはずだ。
スカイライン400Rを作ったエンジニアの中には、R33時代の400Rをほとんど知らずに作っていたものもいるという。あくまで、「スカイラインの走りを磨き、誰でも安心して運転ができるスポーツセダン」を作り上げたのだ
次の世代にスカイラインを引き継いでいくことのほうが大切では??
そして、その現行スカイラインに懐かしいGT赤バッヂや400Rという名がつけられることについても、何がそんなに悪いことなのかと思う。子孫が先祖の誇りを身に着けている姿は、自分の血筋に誇りをもっていることの現れであり、スカイラインというモデルの歴史を感じさせるものだ。
ビジネス的にやり方が気に入らないとするのもわからなくないが、実際にビジネスなのだから、他に迷惑をかけることがないのであれば、売れれば正解だ。今回のことが「スカイライン」というブランドに傷をつけるようなことになるとも筆者は思わない。それよりも、こうしてスカイラインに手を加え続けて、次の世代にスカイラインを引き継いでいくことのほうが大事であるはず、と筆者は考えるが、どうだろうか。
リヤディフューザーにはNISMOラインが施されており、またリアタイヤの拡幅もよいアクセント。ハイパフォーマンスさを隠しきれていない様子が、またそそられる
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みんなのコメント
今の日産の状況とスカイラインの販売台数考えたら
新型出してくれとも言い難い
ノンポリのクラウンみたいに、ワケわからないクルマじゃ、スカイライン党は買わないよ
吉川賢一ライターよもう少し在籍していた関連会社のこと勉強してください。ニスモ400Rはオーテックチューンカーではありません、ニスモ単独開発であり、(エンジンは日産工機製)1996年ニスモ400R発表当時は株式会社オーテツクジヤパンならびにニッサン・モータースポーツ・インターナショナル株式会社は別会社である。