新型車の名前だけでなく、コマーシャルなどのキャッチコピーは広報活動のうえでも大切なもの。かつての「いつかはクラウン」などの名言がその最たるもの。
そんなネーミングで最近凄いのがダイハツ。「カクカクシカジカ」など大ヒットしたキャッチコピーなど近年のCMイメージが強いかもしれない。
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しかし思い起こせばダイハツのネーミングセンスは、昔からとてつもなく高いレベルにあった。そんなダイハツのネーミングセンスを振り返ります。
文:ベストカー編集部
ベストカー2019年2月10日号
■ブイブイ言わせているダイハツのネーミングセンス
2018年12月5日、トヨタが後付け安全装備「踏み間違い加速抑制システム」の発売を開始した。
ペダルの踏み間違いによる事故を減らすための画期的な装備で、壁などの障害物を検知する超音波センサーを車両の前後に後付けできるというもの。まずは30プリウスとアクア用が用意される。
同じ日にダイハツも同様のシステムを発表。内容はトヨタと同じで、こちらは先代タント用から始まり、順次対象車種を増やしていくという。
今、ダイハツはトヨタの子会社という位置づけだが、意外なことに開発はまったく別に進んでいたらしい。「こういう装備が必要だ」という意識は同じだったということだろう。
しかし、まったく違うところもあって、それはネーミング。トヨタが「踏み間違い加速抑制システム」という遊び心ゼロの名前を付けたのに対し、ダイハツはこれを「つくつく防止」としてきた!
後付けの「つく」に事故防止の「防止」でつくつく防止。控えめに言っても天才的な仕事である。
その大仕事をやってのけた担当氏は「つくつく防止、突っ込みぼーし! と覚えていただければ幸いです」とマジなのかネタなのかわからないコメントをくれたが、思えばダイハツにはユニークな名称が多い。本企画で、そのいくつかを紹介したい。
■「カクカクシカジカ」だけじゃない!! スペース効率の表現
【カクカクシカジカ】2008年ムーヴコンテ
四角いボディが特徴のムーヴコンテ用CMキャラクターだった「カクカクシカジカ」だが、今ではダイハツ全体のマスコットに成長。
四角いデザインを表現するのに「カクカクシカジカ」とするセンスがダイハツ流だ!
【ドデカクつかおう。ウェイク】2014年ウェイク
玉山鉄二があんちゃん役で登場するCMが人気のウェイク。背の高さを荒唐無稽なストーリーでアピールする内容がウケている。
写真はキャンプに持っていく冷蔵庫を積み込むために、あんちゃんが背の低いクルマを改造しているシーン。こういうわかりやすいCMを作れるのもダイハツのいいところ。
それでキャッチコピーが「ドデカクつかおう」なのだから完璧だ。
この「わかりやすさ」がダイハツネーミング術のミソで、(一部を除き)消費者に一瞬にしてアピールポイントを理解させるのが得意。
2013年の東京モーターショーに出展したウェイクを示唆するコンセプトカーの車名は「DEKA DEKA」(デカデカ)だったのだから徹底している。
【ミラクルオープンドア】2003年タント
タントといえば、Bピラーをスライドドアに組み込んだピラーインドアで有名だが、2代目でこの機構を初めて採用した時に付けたネーミングが「ミラクルオープンドア」。
ミラクルのように大きく開くという意味だ。そのまんまだが、わかりやすい。
ちなみに現行車種でピラーレスドアを採用しているのはタントとN-VANのみ。かつてはラウムとアイシスにはあり、トヨタはそれを「パノラマオープンドア」と称していた。
■捻りを効かせた「座布団一枚!!」なネーミング
【置きラクボックス 置きラクレイアウト】2016年ムーヴキャンバス
「置きラク」=「お気楽」。置きラクボックスとは後席下の収納ボックスの名称で、置きラクレイアウトとは置きラクボックスとスライドドアを組み合わせたレイアウトの名称。
トランクまで回っていかなくても後席下に荷物を置けて、そのまま運転席にすぐ行けるというのがポイント。「パッと積んで、サッと乗れる」というサブコピーもあり、それもまたわかりやすい。
【いつもの私で、ラクしトコット。】2018年ミラトコット
出ましたダイハツ得意のダジャレシリーズ! トコットで「ラクしトコット」。もはや車名が先なのかこのフレーズが思い浮かんじゃったのでトコットにしたのか、その順番さえわからない。
なお、この車名の由来はTO Character(自分らしさ)、TO Comfortableness(安全、安心)、TO Convenience(使いやすさ)の頭文字である"TO C"からきている。
なんか後付けの理由っぽいが、そうらしい。
【第3のエコカー】2011年ミライース
ミライースは「イーステクノロジー」を採用した初めてのクルマとして2011年に登場。
従来型のミラより約4割もの燃費向上を果たし、JC08モード燃費は30.0km/Lと、当時としては画期的な数値を実現した。
その燃費のよさを表現したのが「第3のエコカー」という言葉。電気自動車、ハイブリッド車に続く3つめのカテゴリーとして「低燃費ガソリン車」をアピールしたわけだ。
なお、2017年登場の2代目現行型は「新みんなのエコカー」というコピーを使っている。
■ウケ狙いがやりすぎた!? わかりにくいけど味わい深いネーミング
【エアロヘミサイクル】1986年リーザ
ウェイクの項で、ダイハツのネーミングは「一部を除き」わかりやすさがミソと記したが、その一部の例外がこれ。「エアロヘミサイクル」はなかなか伝わりにくい。
ヘミサイクルとは半円球のことで、まさにこのクルマのデザインテイストを表わしているのだが、ヘミサイクルの認知度があまりに低かった。
このコピーを考えた人は頭がよすぎたのかもしれない。
ちなみに「リーザ」の車名はモナ・リザのように多くの人に愛されてほしいという願いが込められていたのだ。
【凄いビートだぜ、ROCK'N ディーゼル】1983年シャレード
1983年登場の2代目にも名キャッチあり! それがロックンディーゼル。
当時のディーゼルでは避けられなかった振動の大きさを「凄いビート」と言い換え「それがロックだ」と表現したセンスは内田裕也も真っ青。
「静か」だとか「振動はない」などとウソはついていないのが素晴らしい。当時の燃費チャンピオンでもあった。
【街のヘリコプター】1957年ミゼット
前身の発動機製造社から数え、今年で112年目を迎える恐ろしく長いダイハツの歴史上、とても重要な車種が1957年の初代ミゼット。
この三輪トラックの爆発的ヒットで、1951年に改名したばかりのダイハツの名が世間に知れ渡ったのだ。そのキャッチコピーが「街のヘリコプター」。
身軽に飛び回れる(飛ばないが)様を表現したもので、これもインパクトがある。なお、1996年に復活したミゼットIIは「夢は大きいよ、ミゼットII」だった。
【お、パイザー。】1996年パイザー
元祖巨乳アイドル、アグネス・ラムをイメージキャラクターに起用し「お、パイザー。」としたパイザーのキャッチコピー。
ダイハツ、ダジャレだけでなく下ネタもいける懐の深さを発揮した名文句だったが、パイザー自体は真面目を絵に描いたようなクルマだっただけに違和感は否めなかった。
共演の双子はアグネス・ラムの実の子どもだったという豆知識もおひとつどうぞ。
■手堅くいったぜ!! 地味だけど名言炸裂キャッチコピー
【農業女子パック】2014年ハイゼットトラック
2013年から始まった農水省の「農業女子プロジェクト」は1業種につき1社の参加しか認められておらず、自動車メーカーではダイハツのみ。
2014年にFMCしたハイゼットトラックは農業女子プロジェクト用の格好の素材で、ピンクまであるカラフルな色の設定、UVカットガラス、バニティミラー、ステッカーなど女性が喜ぶ装備を揃え「農業女子パック」として発売している。
その発表会では安倍昭恵夫人が出てはしゃいでいたことも報告しておく。
【ゴツかわいい】2006年ビーゴ
同じ「かわいい」でもミラココアの「ココかわ」とは相当ニュアンスの異なる「ゴツかわいい」をキャッチフレーズにしたのがビーゴだ。
姉妹車のトヨタラッシュが「見晴らしのいいコンパクト」だったのに対し、やはりダイハツのほうがインパクトがある。
キャッチフレーズに関しては、ダイハツがトヨタの親会社になったほうがいいのではないだろうか。
見た目はゴツいけど、サイズが小さいかわいさもあるということでこうなった。ま、そのまんまかな?
【家族は成長する。クルマはどうする?】2016年トール
2016年に登場したトールは、トヨタ(タンク/ルーミー)、スバル(ジャスティ)にもOEM供給している頑張り屋さん。
そのキャッチフレーズが「家族は成長する。クルマはどうする?」というもので「次はもう少し大きなクルマにしませんか?」と問いかけているわけだが、トールだってリッターカー。
大きいといっても小さいクルマであり、これは軽自動車ユーザーを狙ったものだということがわかる。
つまり、リッターカーを3ナンバーが重荷になってきたダウンサイザー(年配層)ではなく、軽自動車を卒業したい若年層の憧れの存在に仕立てているのだ。
このあたりがダイハツのうまさ。決定権を持つ奥さんにも「次はトール」と思わせる魔力を持っている。
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