■なぜ販売好調? トヨタの高級ミニバンが持つ強みとは
トヨタ「エスクァイア」は、同社の「ヴォクシー」や「ノア」と基本設計を共有するミニバンです。ヴォクシー/ノアとの違いは内外装が高級かつ上質に仕立てられている点で、これがセールスポイントとなっています。
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そんななか、ヴォクシー/ノアは2019年10月以降対前年比の販売台数が大きく落ち込んだものの、エスクァイアは2019年10月以降も販売台数の落ち込みが小さかったといいます。なぜ販売台数の落ち込みに差が出たのでしょうか。
現行型ヴォクシー/ノアは2014年1月に登場し、その後同年10月にヴォクシー/ノアの上級車種としてエスクァイアが発売されました。
エスクァイアについて、外装ではメッキ加飾が施された縦基調のフロントグリルが特徴的なほか、内装では随所に金属調加飾やステッチなどがあしらわれ高級感を表現。
また車両価格(消費税込)を見ても、ヴォクシー/ノアの255万6400円から、というエントリーグレードの価格設定に対し、エスクァイアは271万3700円からと、約15万円の価格差があります。
そんな3台ですが、日本自動車販売協会連合会が発表する2015年以降の年間販売台数ではヴォクシーがもっとも多く、ノア、エスクァイアがそれに続くという年がほとんどで(2015年のみエスクァイアがノアを上回った)、エスクァイアはヴォクシー/ノアの影に隠れた存在といえました。
しかし、消費税増税があった2019年10月の販売台数で、ヴォクシーは対前年比で56.1%、ノアは対前年比で56.9%を記録し、その後も対前年比80%以上を達成することができず、売れ行きが失速しています。
対してエスクァイアは2019年10月の販売台数が72.2%、11月が104.4%、12月が103.3%、2020年1月が106.1%と、ヴォクシー/ノアに比べて売れ行きが落ち込んでいないのです。
エスクァイアが消費税増税後も売れ行きを落とさない理由としては、各車の顧客層が異なることが要因のひとつとして考えられます。
2020年2月現在、トヨタは4つの販売チャネルを持っていますが、エスクァイアはトヨタ店とトヨペット店のふたつで販売されています。
トヨタ店は「クラウン」や「センチュリー」を扱うなど高級車を多く揃えています。また、トヨペット店もセダンを数多くラインナップしてきた歴史があり、比較的年齢層の高い顧客が多く存在する状況です。
一方、ヴォクシーは若者向けの車種が多い「ネッツ店」、ノアはコンパクトサイズのクルマが多い「カローラ店」での取り扱いです。
すなわち、年齢層が高く収入の多いユーザーが中心となる店舗での取り扱いだったことが、エスクァイアに有利に働いたことが考えられます。
エスクァイアについて、トヨタの販売店スタッフは次のようにコメントします。
「エスクァイアを検討するお客さまを見ると、ミニバンに上質感や高級感を求める方も多く、こだわりのあるものなら値段に関係なく購入していただけるようです。
購入層は30代から60代まで幅広い層におよびます。落ち着いた上品なデザインということもあって、法人の営業車として導入されるケースも増えています」
※ ※ ※
トヨペット店で扱われるトヨタの高級ミニバン「アルファード」も、2019年10月の対前年比販売台数が88.2%とそれほど落ち込まず、その後も販売好調をキープしています。
高級ミニバンという共通点を持つ2台にとって、消費税増税という逆風はそれほど痛手ではなかったようです。
■トヨタの4チャネル体制廃止が与える影響は?
前述のとおりトヨタには4つの販売チャネルがありますが、2020年5月に全店で全車種の取り扱いをはじめることを発表しています。
すでに東京地区では4チャネル体制が廃止され「トヨタモビリティ東京」として全店で全車種が販売されている状況です。
チャネル統合について、東京都内のトヨタ販売店スタッフは「とくに、昔からご愛顧頂いているお客さまには未だに統合が馴染んでおらず、昔ながらのトヨタ販売店の仕組みをきちんと理解している年配のお客さまからの問い合わせは、いまも多いです」と話します。
そして、この4チャネル体制の廃止によって考えられるのが、トヨタ内での車種の統廃合です。
トヨタは、2020年代の半ばには現在販売している車種を半減させる方向で調整しているといいます。そのため、エスクァイア/ヴォクシー/ノアという3姉妹車がいずれかのモデルへ統合され2車種が廃止される可能性があるのです。
トヨタの販売店スタッフに統廃合について聞くと、次のように説明します。
「現時点では、どの車種が廃止・統合されるのかは分かりません。しかし、販売店統合や車種が廃止されるというニュースが報道されてからは、お客さまから問い合わせを頂くことが多くなりました。
とくに、エスクァイア/ヴォクシー/ノアは人気車種ということもあり、今後の行方が気になっている人も多い印象です。
販売をする側としては、車種が統合されることでお客さまにより説明がしやすくなるので、良い面もあるかと思いますが、統合された場合の車種名やデザイン、ターゲット層によって販売しづらくなる可能性もあるので、難しいところです」
ヴォクシー/ノアとは異なり高級感を売りにしてきたエスクァイアが、2020年5月以降どのような扱いとなるのか注目されます。
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