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小川フミオが考察! アルファードでは得られないVクラスの優位性とは?

掲載 更新 15
小川フミオが考察! アルファードでは得られないVクラスの優位性とは?

メルセデス・ベンツのミニバン「Vクラス」のマイナーチェンジモデルに小川フミオが試乗した。日本市場における最大のライバルであるトヨタ「アルファード」「ヴェルファイア」と比べた印象はいかに?

トヨタもびっくり! ゴージャスな2列目

トヨタ「アルファード/ヴェルファイア」に“ゴールド”をあしらった特別仕様車登場!

“ピープルムーバー”と呼ぶジャンルが、乗用車には存在する。多くのひとを運ぶために作られたクルマだ。1950年代から多くのメーカーが手がけてきた。なかでも世界的に人気が高いのはメルセデス・ベンツ「Vクラス」だ。

現行モデルは、2014年に発表された3代目。1996年に初代が出て、2代目までは、荷物の運搬を主たる目的とした商業バンをもとに、“なるべく快適な内装で仕立て直し、多人数が乗れるようにした”という印象が強かった。

ところが最新の「V220d アヴァンギャルド ロング」を運転し、3代目はうんと快適であると知れる。筆者はVクラスに乗る機会こそ多いものの、たいていは後席。それであらためて見直したのだ。

海外でおこなわれるイベントに参加したとき、送迎用にVクラスが使われているケースが多かった。たいてい2列目シートが反転されていて、2~3列目に座る後席乗員が向かい合って移動するかたちになっている。

日本でVクラスに近いクルマといえばトヨタ「アルファード」および「ヴェルファイア」だ。7人乗り、あるいは8人乗りのパッケージである。7人乗りの上級仕様は、豪華な2列目シートが特徴だ。インフォテインメント用モニターやテーブル、カップホルダーやAC100Vコンセントなどを備える。そのため、新しいかたちのリムジンとして高い人気を有する。

逆にVクラスは、シンプルさが特徴だった。脱着可能なシートは、すべての列がしっかりとしたつくりになっていて、「さすがヨーロッパ車!」と、思うものの、快適装備などはアルファードやヴェルファイアにはとても及ばなかった。

が、Vクラスにもトヨタの大型ミニバンに匹敵するラグジュアリー仕様の「エクスクルーシブシートパッケージ」がオプションで選べるようになった。

同パッケージ仕様車がアルファードやヴェルファイアを競合に据えているのは、大きな固定式アームレストを備えた2列目のシートのデザインと、その機能性でわかる。

2席ある大きな2列目シートのバックレストや座面は、電動で調整可能。倒れる角度は深く、飛行機のシートにたとえれば、ひと昔前のビジネスクラスぐらいだ。しかも、ヘッドレストは大型化され、オットマンやヒーター機構も備わる。アルファードやヴェルファイアのようなテーブルはないけども、十分快適である。後席に座っての試乗時、つい、うとうとしてしまったほどだ。

力強いディーゼル

運転すると、力強い走りも印象的だった。搭載するエンジンは2142cc直列4気筒ディーゼルターボで、最高出力は163ps、最大トルクは380Nm。7段オートマチック変速機を介して後輪を駆動する。

最大トルクが1400rpmから発生する設定だけあって、エンジン回転は1500rpmもまわっていれば、中間加速にもすぐれ、高速では流れをリードできるほど。

メルセデス最新の直列6気筒ディーゼルエンジンと比べると、室内への透過音はそれなりに大きいし、回転マナーはスムーズさに欠ける気もするけれど、約2480kgに達するボディの重さを感じさせない力強さがある。

乗り心地は、とても快適である。足はよく動き、路面の凹凸をしっかり吸収し、姿勢はつねに安定している。かつてのVクラスといえば、商業車ベースゆえ硬かったものの、そんな過去とは無縁だ。

アルファードおよびヴェルファイアの走りは? というと、意外なほど悪くない。ラインナップは、2.5リッター直列4気筒エンジンと3.5リッターV型6気筒エンジン搭載のガソリン車と、2.5リッター直列4気筒ガソリンエンジン+モーターを組み合わせたハイブリッドを用意。どのパワーユニットを選んでも力強いと感じさせる。

しかもシャシーの剛性感は意外なほど高く、高速での直進安定性やカーブでの高い操縦性に感心した。つまり、日本で乗るかぎり、メルセデスとトヨタに大きな差はないように思う。

Vクラスの優位性

大きな差があるとすればまずはボディだ。アルファードおよびヴェルファイアのボディは全長4935mm、全幅1850mm、全高1950mm。試乗したV220d アヴァンギャルド ロングは全長5150mm、全幅1930mm、全高1930mmに達する。Vクラスはひとまわり大きい。

ホイールベースを比較しても、アルファードおよびヴェルファイアの3000mmに対し、V220d アヴァンギャルド ロングは3200mm。室内が広い理由はここにある。Sクラスのロングボディのホイールベースが3165mmだから、はるかに長い。

もっと広い空間が欲しいひとむけのモデル「V220d アヴァンギャルド エクストラロング」もある。全長は5370mm、ホイールベースは3430mmに達する。これほど大きいと市街地での取りまわしに苦労するかもしれない。自分で運転するクルマではないだろう。逆に、よりコンパクトなサイズが欲しい人向けには、「V220d アヴァンギャルド」を用意、全長は4895mm、ホイールベースは3200mmになる。

装飾の抑制が効いたインテリアの造型には、“ドイツ車ならでは”ともいうべき機能美がある。スイッチのクリック感から、シートの動き、ドアの開閉音まで、一貫して感じられるソリッドさは、Vクラスがドイツ車好きにアピールするゆえんだろう。それらの節度感は、日本を含むほかの国の製品とは一線を画している。

V220d アヴァンギャルド ロングの印象をひとことでいうと、信頼のおけるピープルムーバー。エクスクルーシブシートパッケージを装着し、立派なシートを2列目にすえるのもよし、7人乗りのパッケージを最大限活かし、家族あるいは友人との長距離ドライブを楽しむのもいいだろう。

真四角というかんじの機能主義的なボディは、スタイリッシュではない。けれど、モノ好きの心をくすぐる。“マジメに商業車を作ってきたメルセデス・ベンツのプロダクト”というのがイメージ的によい。「このクルマを使い倒してみたい!」と、思わせる。

V220d アバンギャルドロングの価格は764万円。オプションのエクスクルーシブシートパッケージは86万円になるが、こちらを選ぶ・選ばないで、異なるキャラクターになる。

アルファードおよびヴェルファイアは352万円から。ただし、ゴージャスな2列目シートを望むならば「エグゼクティブラウンジ」仕様を選ぶ必要がある。価格は726万9000円。V220dアバンギャルドロングにエクスクルーシブシートパッケージを装着すると850万円になるから、価格差はけっこうある。とはいえ、この価格帯になると130万円の価格差は障壁にならないかもしれない。悩ましい選択になりそうだ。

文・小川フミオ 写真・安井宏充(Weekend.)

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みんなのコメント

15件
  • エクストラロングでも、回転半径は普通車とあまり変わらないです。ただし、ホイールベースが長いので巻き込みだけは気をつけて。
  • アメリカに行くともっと大きなマイクロバスのようなベンツをよく見るけど内装もリムジンみたいにゴージャスだよ。
    日本じゃ大きすぎるけど、アメリカには合ってるんだよね。
    それに比べたらアルファードやVクラスは確かにミニバンだね。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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