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EVは発火する? 感電する? 電動化時代の「正しい怖がり方」とは?

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EVは発火する? 感電する? 電動化時代の「正しい怖がり方」とは?

 もし次のクルマをEVにするとしたら、火災や感電など、EVならではのリスクを想像することもあるだろう。エンジン車とはまったく違う構造なので、どうしたら安全に乗れるのか、何に気を付ければいいのか。EVにまつわる心配事、特に火災や感電について調べてみたので紹介しよう。

文/佐藤耕一、写真/ヒョンデ、CATL、JAF、パナソニック、Euro-NCAP、AdobeStock(トップ写真=chesky@AdobeStock)

EVは発火する? 感電する? 電動化時代の「正しい怖がり方」とは?

■そもそもなぜEVの火災は起きるの?

EVには膨大な数の電池が積まれている(Nischaporn@AdobeStock)

 自動車メーカーやバッテリーサプライヤーは、電気自動車の開発に際して極めて入念な安全対策を講じており、その範囲は素材開発からバッテリーマネジメント、衝突時のバッテリー保護まで、多岐にわたる。

 そのおかげでEVは世界的に普及が進んでいるわけだが、その一方ではごくわずかながら、EVが発火する事例が報告されている。

 そもそもEVはなぜ出火するのか。ひとつの原因としては、大きな事故などによる衝撃でバッテリーが変形し、ショートする場合だ。ショートとはつまり、正極と負極(プラスとマイナス)が接触することで、瞬間的に大きな電流が流れて激しい熱が発生し、可燃性のリチウムイオン電解液に火がついて炎上するというもの。

 バッテリーがショートすれば、正極材がLFP(リン酸鉄)であっても、NCMやNCA(ニッケル・コバルト・マンガンまたはアルミニウム)であっても発火する。たとえば自社製のLFPバッテリーを搭載するBYDの車両でも、2022年に出火事故が報道されている。

 ただ、LFPのほうが大きな火災になりにくいと言われている。化学的な特性や作動電位が低いためだ。

 また、充電中や充電直後に自然発火し炎上するという事態も、まれにではあるが起こり得る。この場合は特に「ハイニッケル」と呼ばれる、コバルトを減らした三元系の正極材のリスクが高いとされている。

 従来の三元系であるNCM622(ニッケル・コバルト・マンガンを6:2:2で組成)や523から、コバルトを減らしたNCM811と呼ばれるものだ。

 これは、世界のコバルトの8割を産出するコンゴ共和国における、人権を無視した過酷な児童労働の実態からくるモラルリスクやコスト高、不安定なサプライチェーンを懸念視した結果、コバルトの含有量を減らした組成を追求したものだ。

 しかし、コバルトの含有量を減らしたために充電時の発熱の仕方が急峻になり、熱暴走しやすい状況が生まれる。

 LG化学やCATLが手掛けるNCM811が出火する事例が、2年ほど前から複数件起きており、LG化学のNCM811を搭載するGM「シボレー・ボルト」が、充電中や充電後に自然発火したケースではリコールに至り、2000億円を超えるリコール費用のほとんどをLG側が負担したことが報道されている。

■アイオニック 5の出火事故に対するヒョンデの見解

ヒョンデのアイオニック5はユーロNCAPのテストで満点の5スターを獲得している

 昨年6月に、ヒョンデ アイオニック5が韓国・釜山市の高速道路の料金所付近で衝突を起こし、出火したという事故が日本でも話題になった。衝突直後に炎上して乗員が亡くなった、などの憶測がなされたが、事実はどうだったのか。

 ヒョンデモビリティジャパンに確認したところ、この事故の分析を警察関連組織の科学捜査院が実施しており、秋にプレスリリースが出ているとのこと。内容は以下の通りだ。

・車両は時速96キロで衝突しており、その直前5秒以内にはアクセル・ブレーキ・ハンドルはまったく操作されていなかった

・衝突した(料金所の)衝撃吸収体の構造部分がバッテリーに刺さるような形となり、バッテリーが破損し発火に至った

・遺体の解剖結果、肺や気道に煤は検出されなかった。死因は焼死ではなく、衝突の際の衝撃によって即死状態であった。

・乗員は、いわゆるシートベルトクリップのようなものでシートベルトを緩めた状態で乗車していた。

 ヒョンデモビリティジャパンの佐藤健氏は、「乗員は、衝突直前に何の操作もしていないことから、おそらく居眠りなど意識のない状態でそのまま衝突したのではないでしょうか」とコメントする。

 またIONIQ5の衝突安全性能については、「ユーロNCAPやIIHSの安全評価で、フルラップ・オフセット・側面衝突などの衝突試験もしていますが、ユーロNCAPでは★5(最高評価)、IIHSではトップセーフティピックプラス(最高評価)を得ています」(佐藤氏)とのことだ。

 バッテリーを保護するための技術も進化しており、佐藤氏は「IONIQ5はEV専用プラットフォームE-GMPを採用しており、ゼロからバッテリーの安全に配慮した設計がなされています。」と説明する。

■EVで事故を起こしてしまったらどうする?

JAFは電気自動車のトラブルに対応も進めている

 いっぽう、もしEVを運転する立場になった場合には、何に注意すればいいのだろうか。事故対応の多様な経験値を持つJAFに聞いたところ、以下のような回答が得られた。

・走行中に少しでも異常を感じた場合、まずは続発事故防止のため安全な場所に停車させ、セレクトレバーをパーキング位置にし、パーキングブレーキをかけ、パワースイッチをOFFにします。そして、JAFなどのロードサービスに救援要請をします。

・感電の恐れがあるため、高電圧部位・高電圧配線などには、絶対にさわらないでください。

・バッテリーなどから液体が漏れていたとしても絶対にさわらないでください。

・電解液(無色透明で芳香臭あり)が漏れているのを発見した場合は、引火性があるため火気を遠ざけ、十分に換気を行います。

・万が一、車両火災が発生した場合は、初期消火活動が可能な状況であれば、消火器はABC消火器を使用してください。少量の水での消火作業は、危険であるため絶対に行わないようにしましょう。

・消火活動をできない場合は、安全な場所に避難し、119番に通報して消防隊の到着を待ちます。爆発の恐れもあるため、車両からは距離をとって避難しましょう。

■知識や情報を身に着けて「正しく」怖がろう

ユーロNCAPなど公的なテスト機関の評価はクルマ選びの参考になる

 EVやハイブリッド車には、日常では接することのないほどの高電圧が流れており、万が一感電すると非常にリスクが高いのだが、感電対策に関しては法律で保安基準が定められている。

 その内容は、衝突時にエアバッグが展開した際、それと同時に高電圧回路が完全に遮断され、乗員や救護要員の感電を防ぐことを義務付けるものだ。この機能についても、JNCAPを始め各国の衝突安全評価で検証も行われている。

 いかがだったろうか。ここまで紹介したように、EVの出火事故のリスクはゼロではない。ただそうした事態の重大さについてはEVメーカーもバッテリーサプライヤーも認識しており、設計、製造、運用といったあらゆるレベルで、リスクをなくす研究が進んでいる。

 衝突安全については各国の安全評価も出ており、最高評価を得ているEVもあるのでそれを参考にするといい。自然発火についてだが、これは車両ごとにリスクが違うので、興味のあるEVがあれば、自然発火の事例がないかどうか調べてみるべきだろう。

 いずれにしろ、やみくもにEVを危険視する必要はない。知識や情報を身に着けて「正しく」怖がることが必要だ。

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みんなのコメント

25件
  • >車両は時速96キロで衝突しており、その直前5秒以内にはアクセル・ブレーキ・ハンドルはまったく操作されていなかった
    自動ブレーキはついていないの?
  • 古くなったガソリン車が燃えるのは各部の経年劣化があるからある程度仕方ないと言える。
    BEVが燃える事が問題なのは新車の保証期間が有効な数年も経たない内に燃える事。
    よく燃えるネタが出るのは特定の国の車、特定の国のバッテリーが原因として大きい。
    フェールセーフをしっかり備える事や品質管理が重要だと思う。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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