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丸テールも直6も失ったが……新時代を切り拓いた「V35スカイライン」は「ハズレ世代」じゃなかった

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丸テールも直6も失ったが……新時代を切り拓いた「V35スカイライン」は「ハズレ世代」じゃなかった

伝統の直6と丸テールに別れを告げて誕生

 21世紀を迎えると、昭和の時代は老若男女が名車として誰でも知っている知名度の高い日産スカイラインも、新世代へと変貌を遂げることとなる。この11代目のスカイランは、日産の高級ブランドのインフィニティのG35(当時)として発売されることもあり、グローバルなプレミアム・セダンとして生まれ変わった。

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新開発プラットフォームが上質な走りをもたらす

 それが新世代のFMプラットフォームのパッケージングで、新たにVQ型V6エンジンをフロントミッドに搭載した。全長4675mmのボディに2850mmというロングホイールベースを確保しながらも優れた空力性能で、空気によって生まれる揚力を抑えたゼロリフトとCD値0.27を実現。優れた重量バランスと広い室内、そして燃費とタイヤの性能を活かしきれる優れたボディを手に入れている。

 走りに直結するサスペンションはオールアルミ合金製の新設計マルチリンク式を前輪に、剛性強化と軽量化が図られた後輪のマルチリンク式はリップル・コントロール・ショックアブソーバーもあって、滑らかな乗り心地を実現。接地性が高まったことから、優れたハンドリングと乗り心地を両立している。最小回転半径も、ロングホイールベースながらFRの特性を生かして5.3~5.5mに抑えられている。

 インテリアも、プレミアムの名に恥じない質感がもたらされた。ステアリングのチルトに連動するメーターを採用し、240mmスライド、60mmの高さ調整できる運転席とともに幅広い体形の運転者に対応。さらに、助手席は専用に作られた座面や運転席側からでも操作可能なようにパワーシートスイッチを設けたほか、後席には4段階のリクライニングを設定した。

 前後左右独立式オートエアコンもあって、乗員4人が快適に過ごせる空間が備わっている(定員は5名)。当時の日産では定番の収納できるカーナビやオプション設定のBOSE製オーディオも人気で、プレミアム・セダンとして充実した室内空間となっていた。

評価の高いVQエンジンを搭載

 エンジンは、その後何度も世界的な評価を受け続けることになるVQ型の2.5Lと3.0Lを搭載。とくに電子制御式連続可変バルブタイミングの「eVTC」と直噴技術によって、高性能と低燃費を両立する。3.0Lは272ps/6000rpm、36.0kg-m/4800rpm、2.5Lは215ps/6400rpm、27.5kg-m/4400rpmを発揮。トランスミッションも4速および5速ATだが、当時の水準とすれば十分な性能を持っていた。だがMTの設定がなかった。これがV35型の評価につながったのかもしれない。

 また、従来型の型式R34からV35へと変化したわけだが、これは開発陣のアルファベットの変更が新世代を表して、数字は従来の継承を意図したものだと思うのだが、外観の大きな変化と誰でも知っているスカイラインの丸く光るテールランプがなかったことも、不満につながってしまったのであろう。

 11代目のスカイラインは、走りも快適性もプレミアムであったし、決して緩くてふわふわした乗り心地のオヤジ仕様ではないれっきとしたGTだった。これがもし伝統のローレル? いやボディスタイルを変えながら長い歴史を刻んだレパード? であればファンの反応も違ったかもしれない。

 そうなるとスカイラインの名前をどうするのかが問題になるので、スカイラインを残すしかなかったのだろう。伝統のセドリック&グロリア、ローレルの名前は捨てられても、スカイラインだけは捨てられなかったということか。そんななかだが、じつのところは発売直後よりもあとに、予定台数を上まわる販売台数を記録している。

4WDやエクストロイドCVT採用のほか待望のクーペも誕生

 発売から数カ月遅れで日産自慢の4WD「アテーサE-TS」がセダンに追加されて、新たに3.5Lのモデルを追加。さらに、セドリック&グロリア譲りの272psと36.0kg-mのエンジンに、CVTながらダイレクトな感覚で走れるエクストロイドCVTの組み合わせが発売されたが、こちらは2.5Lのもっとも安いモデルよりも100万円以上高価だったことから注目とならず。

 逆に2003年には一段と流麗なスタイリングのクーペを発売する。こちらは伝統の丸形テールランプを持つモデルで、全幅がセダンよりも幅広い1815mmという日本では扱いにくい数字となってしまったが、非常に優雅なスタイルで存在感を発揮。3.5Lエンジンのみの設定ながら待望の6速MTの設定もあって、ファンからの注目を集める。そしてこの際にセダンの2.5L仕様のサスペンションの仕様変更や装備充実もあり、数カ月遅れながら4ドアセダンにもMT仕様を設定した。

 すでにこのDセグメント4ドアセダンの走りがどれだけ優れていようが、MTがあろうが販売台数は見込めない時代となっていたが、ファンは大いに歓迎。目標販売台数を上まわる受注を記録し、2004年にマイナーチェンジを実施した。4ドアにもついに丸型テールランプが戻ってきたほか、内外装の変更を受けて商品力をアップさせている。排ガス性能の向上や18、19インチの鍛造ホイールの設定もあり、4WDもスノーモードが追加されて商品力をアップさせ、充実した内容でファンも安堵したに違いない。

V36ではさらに走りを際立たせていた

 絶対数こそ多くはないが、安定した売り上げがあることで、2006年にはフルモデルチェンジしV36型へ生まれ変わった。大幅な変更で、全高20mmダウン、全幅20mmアップというロー&ワイドとなり、テールランプがLEDとなるなどの大幅に進化を遂げている。

 とくにサスペンションはより強度を増したアルミ鍛造の進化もあって、変更前に比べて7kgも軽量化が果たされ、ばね下重量の軽減から乗り心地の向上に貢献した。新開発の前輪ダブルウィッシュボーン式、後輪マルチリンク式サスペンションと、デュアル・フローパス・ショックアブソーバーもあって、ステアリングの応答性と路面からの入力を低減し、より四輪が設置するスポーツとGT性能を向上させた。

 さらに一部モデルでは前後異形サイズのタイヤを標準にし、インテリアも着座位置をはじめ装備を充実、4WSの採用や衝突安全性など全方位に性能を向上させている。

 エンジンはほとんど新開発と言っていい新型VQ35HR、25HR(HRはハイ・レボリューションとハイ・レスポンスを意味する)となって、左右完全吸排気システムとなり性能向上。AT車にはマグネシウム製のパドルシフトを備えたうえ、先代に引き続きシンクロレブコントロールを採用した。シフト操作時にエンジンが回転数を合わせてくれることで、小気味良い走りが楽しめる。

 2007年にはスカライン発売から50周年を迎えて、記念車も登場。通常モデルに一部仕様変更なども施されたが、盛大な記念日とはならなかった。

 2007年にはクーペに日産自慢のVVEL(バルブ作動角・リフト連続可変システム)付きのVQ37HVRエンジンを採用。自然吸気のV6エンジンは歴史遺産といって良く、2400~7000rpmまで最大トルクの90%を発揮する性能は、ターボにはないもので、今後も語り継ぎたいV6エンジンだ。トランスミッションも進化しており、ATは5速ながらよりスポーティなDSモードの設定とクルーズ・コントロールとの連携を強化。MTも、1~3速にトリプルコーン・シンクロを用いて、スカイラインらしい走りをもたらした。

 2008年の4ドアの改良では前年にVQ35HRとなったエンジンが、すでに北米で高評価を得ている新型VQ37VHRへと進化。組み合わされるATも先にフェアレディZで評判のマニュアルモード付7速ATとなり、走行性能の向上と環境性能を両立した。

 さらに小さな擦り傷ならば自然に修復してくれるスクラッチ・シールド塗装を全色に採用。狭い道ですれ違うときに木の枝などで傷がついた場合に、修理代金を払ってまで直すほどではないけれど、そのままにしておくのも……、と思うユーザーに対して、画期的でありがたい塗装だった。

 開発拠点で開発陣の携帯電話にその技術が使われているのをみて、これが普及すれば世界中のユーザーが大喜びするに違いないと確信したほど優れた塗装が採用された(価格は非常に高価らしい)。そしてその後、仕様変更を受けて、現行のV37型に受け継がれることとなる。

スカイラインを愛しているからこそファンの目は厳しくなる

 スカイライン初のV型エンジン搭載車、伝統の丸形のテールランプを持たずに誕生したスカイライン。V35型の登場は華々しいものではなかった。

 それは30型が登場した際に6気筒ではないスカイライン、31型が登場した際に大きくて重い都市型セダン、32型が表れたときに走りは良いけど使い勝手が……、33型では32型よりも広いけれどスカイラインらしくない、34型がデビューしたときには形がスカイラインらしくない……。

 スカイラインという名は、その歴史の重さ故に付きまとう怨念のようなものがあり、それが上層部も開発陣も販売側もユーザーも巻き込んでまさにカオスとなるのが宿命なのか。

 V35型は発売当初から優れたGTカーであり、その走りも快適性も装備類も高水準だった。度重なる改良で進化を果たしており、近年ちらほらみられるシーラカンスの様な、なんの改良もされないで販売が続けられているモデルではなかった。それだけに後継の現行モデルであるV37型にはぜひとも頑張ってもらいたい。

 ところで日産さん。スーパーGTの参戦車両はフェアレディZではなくてスカイラインにしませんか? フェアレディZの名は世界的に知れ渡っているので、国内のスーパーGTに参戦しなくても大丈夫だと思います。逆にスカイラインの名がモータースポーツに復活すれば、日本の一般誌だって注目するはず。参戦のために2ドアを国内にも用意し、サーキットにスカイラインが帰ってきた。これだけで日本を元気にしてくれると思うのですが。スカイラインの名がサーキットにある。これこそスカイラインのあるべき姿だと思うのですが……。

■日産スカイライン350GT(HV35)全長×全幅×全高:4675×1750×1470mmホイールベース:2850mmトレッド:前/後 1500mm/1505mm車両重量:1490kg乗車定員:5名最小回転半径:5.5m室内寸法:長×幅×高:1930×1750×1190mmエンジン:VQ30DD V型6気筒DOHC総排気量:2987cc最高出力:260ps(191kW)/6400rpm最大トルク:33.0kg-m(324kW)/4800rpmタイヤサイズ:215/55R17(前後とも)ブレーキ:ベンチレーテッド・ディスク(前後とも)サスペンション:マルチリンク式(前後とも)

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