西川淳氏による「EQE SUV」のインプレッションも最終回を迎えた。前回に続き高速道路を試乗した。走り終えた西川氏は、クルマ選びのポイントやメーカーの在り方についても想いを馳せる。
“最上級ステータス”以外は全てある
常識を覆す「EQE SUV」のパッケージングとデザインは要注目![メルセデス・ベンツEQE SUV試乗記]
要するに「最上級でなければ嫌だ!」という見栄を張らずともいいという方であれば、セダンにしろSUVにしろ、EQEを選んで間違いはないということ。ステータス性以外、全ての面でそれはEQSに等しいと言っても過言ではないから。昔からEクラス級がメルセデスの乗用車ラインナップにおいて中核であることのそれは証でもあった。
そのことは「EQE 350 SUV」を高速道路へと導くといっそうよく理解できることだろう。力強さと心地よさを高いレベルで両立した走りは「EQS SUV」に比べてなんら劣らない。特にドライバーにとっては、流れる景色と身体に感じるテイストにほとんど違いはない。首都高速の継ぎ目を心地よくいなしつつ、カーヴにおいては些かの不満も感じさせず、リア操舵によって直進安定性は極めて高く、もちろんここイッパツのスムースな加速に不満もない(EVらしい爆発的な加速を望む向きには「AMG53」がオススメ、というのもこれまでと同様だ)。
道中に充電不安の尽きないBEV(バッテリー電気自動車)でありながら、従来のエンジン付きメルセデスと同じくきっと長距離ドライブに最適という予感が生じるのは、これまで試乗した上級のEQシリーズ全てに共通する魅力である。
結局のところ、ICE(内燃機関)だからBEVだから、ではなくて、クルマそのものの魅力がユーザーの期待にどれだけ応えることができるか、どれだけ不安を超える魅力を提案できるか、がクルマ選びの本当のポイントである。筆者のガレージには未だ200V口すらなくてBEVを持つ環境ではないし、またインフラへの不安もまだまだあると思っている方だけれど、それでも欲しいと思えるBEVが昨今ちらほら現れ始めた。クラシックカーやスーパーカーと同様に、買うためのハードルは一般的な乗用車に比べると(個人的には)高いと言わざるを得ないけれど、それを超える魅力が新しいBEVモデルの中に出始めたというわけだ。EQEシリーズなどはその一つである。
メルセデスはBEVとの一番相性が良い
それどころかメルセデスベンツという乗用車ブランドにおいては、もはやBEVだけでもいいのでは?と思えるようになってきた。日本で最も売れている輸入車ブランド、とは言っても、その販売台数はせいぜい年間五万台レベルで、たとえそれが全て半ば強制的にBEVになったからと言って社会的な問題になるとは思えない。もとよりエンジンのフィールに魅力のあるブランドではなかった。エンジンを目的にベンツを買う人などいなかったはず。であれば、トータルの性能や機能がその時代において最も秀逸で“ベンツらしい”モデルを選ぶことが理にかなっていると思う。それが今、(エンジン付きのモデルよりも)BEVのEQシリーズだということだ。(エンジンが魅力の一つであった)BMWやフェラーリが全面的にBEVになる、という話とはそもそも筋が違うだろう。
そんなメルセデス・ベンツでさえも予定通り2030年に全てBEVは難しいとトップが漏らし始めた。要するにそんな期限を供給元はもちろん、国や地域を代表する組織が決めたり推奨したりする方がおかしいというだけのこと。メーカーはその時代における最高の“ブランド・オリエンテッド”なクルマを作ればいい。その先は本来、ユーザーの選択にかかっているだけだ。特にプレミアム以上のブランドにとっては。
<了>
メルセデス・ベンツ EQE 350 4MATIC SUV ローンチエディション
全長:4,880mm 全幅:2,030mm 全高:1,670mm ホイールベース:3,030mm 車両重量:2,630kg 前後重量配分:前1,310kg、後1,320kg 乗車定員:5名 交流電力量消費率:208Wh/km(WLTCモード) 一充電走行距離:528km(WLTCモード) 最高出力:215kW(292ps) 最大トルク:765Nm フロントモーター最高出力:71kW(96ps)/2,682-16,031rpm フロントモーター最大トルク:251Nm/0-2,682rpm リヤモーター最高出力:144kW(196ps)/2,662-15,913rpm リヤモーター最大トルク:514Nm/0-2,662rpm バッテリー総電力量:89kWh モーター数:前1基、後1基 トランスミッション:電動パワートレイン eATS 駆動方式:AWD フロントサスペンション:4リンク式エアサスペンション リアサスペンション:マルチリンク式エアサスペンション フロントブレーキ:ベンチレーテッドディスク リアブレーキ:ベンチレーテッドディスク タイヤサイズ:前後265/40R21 最小回転半径:4.8m 荷室容量:520~1,675L 車両本体価格:13,697,000円
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