1991年12月にFC3S型サバンナRX-7の後継モデルとしてデビューしたのがFD3S型RX-7だ。
当初はアンフィニRX-7として売り出され、スポーツカーらしい流麗なスタイルは、先代のFC3S型とはまた異なる魅力を放っていた。その結果、当時はもちろん、2002年8月に生産終了が決定されたあとも根強い人気を誇っている。
このボディカラー想像できますか? 最近のボディカラー名が複雑怪奇な理由
FC3SからFD3Sへ。RX-7という名を冠してはいるが、まったくデザインの異なる2台。それぞれ熱狂的なファンを持つ
いわゆる「ネオクラシックカー」と呼ばれる部類に属するFD3S型RX-7だが、近年の価格高騰は、リアルタイムでこのモデルの相場を見てきた世代にとってかなりショッキングだと思う。
そんなFD3S型RX-7を、長年にわたって大切に所有しているオーナーがいる一方で、価格高騰に困惑しつつも憧れを現実にするユーザーも少なくない。
しかし、最終モデルであっても20年前のモデルだ。どれほどの極上車であっても経年劣化は避けられない。
そこで今回は、超人気のFD3S型RX-7の現時点における修理代&維持費について触れてみることにしよう。
文/松村透
写真/マツダ、トヨタ、日産、ホンダ、松村透
■FD3S型RX-7のエンジンオーバーホール代は?
ロータリーエンジンを扱うショップや部品点数にもよるが、現時点で「FD3S型RX-7のエンジンオーバーホール代は200万円前後」がひとつの目安といえる
ロータリーエンジンを扱うショップや部品点数にもよるが、現時点で「FD3S型RX-7のエンジンオーバーホール代は200万円前後」がひとつに目安となりそうだ。
純正部品そのものの価格があがっており(定期的に価格改定がある)、それに呼応してトータルコストが上昇しているのだ。
後述するFD3S型RX-7のオーナーも、昨年、愛車のエンジンがブローしてしまい、周辺部品を含めたオーバーホール代の見積もりは約170万円と算出されたという。
ここで一歩踏み出すか、勇気ある撤退(売却を含めて)を決断するか? 決して踏み絵ではないし、どちらが正解というわけでもない。多くのユーザーにとって一大決心するだけの大金といえるからだ。
■その他、足回りのリフレッシュも
スポーツカーだけに足回りは命といえる。個体の延命を考えると純正部品に戻してあげることを考える時期かもしれない
FD3S型RX-7というと、サスペンションやダンパーなどを社外品に交換している個体も多いだろう。
中古車を購入した際に、新品の社外品に交換・・・するのもありかもしれないが、長く乗るつもりでリフレッシュするなら、ブッシュ交換という手もある。
ローダウンのように見た目が変わるわけではないので、どちらかというと地味な部類の部品交換にはなる。しかし、走りや乗り味のフィーリングが劇的に変化あるいは改善するという点において着手する価値は充分にあるだろう。
経年劣化が進んでいる箇所のみを交換する場合は15万円前後。どうせならばすべてのブッシュを新品に交換するとなると30~40万円の予算を用意しておきたい。
あくまでも目安だが、ダンパーをすべて新品に交換すると30~40万円くらいの予算が必要になりそうだ
併せてダンパーを純正部品に交換するとなるとプラス20万円くらい。社外品の車高調とタイヤ&ホイールをセットで交換する予算があるとしたら、決して手が届かない領域ではないことに気づくはずだ。
ブッシュおよびダンパー交換をするならばいっそ・・・ブレーキ周りのリフレッシュも一気に行えるなら理想的だ
ブッシュおよびダンパーの交換をショップに依頼するとしたらリフトアップして作業するはずだ。それならばブレーキ周りのリフレッシュもセットで行うのも手だ。
現状のローターをそのまま使用するとした場合、ローター研磨とキャリパーのオーバーホール、パッドの交換で10万円前後の予算と考えておけばいいだろう。
■FD3S型RX-7オーナーの修理代および維持費とは?
1995年式 マツダ アンフィニ RX-7 typeRS/走行距離約14万5千キロ/ノーマル。ノーマルの状態を維持
では、FD3S型RX-7オーナーが実際に払っている維持費および故障箇所について。
以前「Bestcar Classic オーナーズボイス」で取材させていただいた個体(1995年式 マツダ アンフィニ RX-7 typeRS/走行距離約14万5千キロ/ノーマル)を例に挙げると・・・。
ステアリングもオリジナル品。FD3S現役時代は社外品に交換するのが定番だったように思う
大まかな年間の維持費(自動車税、オイル関係、ガソリン代などを含めた概算)
・自動車税:45,000円
・オイル:年間4回/7,000円x4(3000kmごとに1回)
・プラグ:年間2回/6,000円x2(6000kmごとに1回)
・クーラント交換:年間1回(7,000円程度)
・任意保険:月に3,000円x12(30歳以上、車両保険なし)
・ガソリン:月に15,000円程度x12
・車検:2年に1回(90,000円程度)。1年で45,000円
・トータルで、年間で30万~40万円くらい
実はその後、エンジンブローしてしまったそうで、周辺部品を含めたオーバーホール代の見積もりは約170万円と算出されたという
主な故障箇所一覧
・エキセントリックシャフト(クランクシャフト)からのオイル漏れによるエンジンおよびミッション下ろし
・インマニのガスケット(4型以前は紙製)が破れたことによるエンジンを下ろし
・エンジン内のゴムホース類をすべて交換
・ノックセンサーが熱で溶けた
・吸気温センサーの断線
・ECUのコンデンサーがパンクしてECU自体を交換
・念のためスロットルセンサーを新品に交換
・ドアノブが破損しましたので交換
・ACV・チェックバルブがひどく汚れていたので洗浄
・エンジンブロー:こまめにメンテナンスをしていたのに・・・
こまめなメンテナンスはもちろんのこと、ノーマルの状態をキープしていたとしても、経年劣化によるエンジンブローは避けられないということなのだろう。
■FD3S型RX-7と同じ時代を走った国産スポーツモデルの維持費は?
では、FD3S型RX-7と走った国産スポーツモデルの定番トラブルや維持費はどうなのだろうか。5車種を例に挙げ、下記にまとめてみた。
昭和から平成を経て令和へ。ハチロクの人気は衰えるどころかますます高まる一方だ
カローラレビン/スプリンタートレノ(AE86)
●純正部品入手困難度:★★★☆☆
●金銭面での維持の大変度:★★★☆☆
いわゆるハチロクの定番のトラブルといえば、ステアリングラックブーツ交換(2万~)、トランスミッションオイル漏れ修理(5万~)、ブレーキキャリパーオーバーホール(6万~)などが挙げられる。
昨年11月に「GRヘリテージパーツプロジェクト」として少しずつ純正部品の復刻が行われているのは朗報だろう。
とはいえ、ハチロク自体のさらなる価格高騰に呼応して、純正および一部の絶版アフターパーツの争奪戦がさらに激化している。
チューニングベースというより、もはやコレクターズアイテムになりつつあるR32スカイラインGT-R
スカイラインGT-R(R32)
●純正部品入手困難度:★★☆☆☆
●維持の大変度:★★★★☆
R32型スカイラインGT-Rの定番のトラブルといえば、パワステオイルの漏れ(5万円~)やドライブシャフトブーツの破れ(3万円~)、エアコンのコンプレッサーの故障(10万円~)などが挙げられる。
「NISMO Heritage Parts」の対象車種であり、出費を厭わなければ純正部品を入手できる確率は、旧車およびネオクラシックカーのなかでは高い部類に入る。
安い中古車を手に入れてチューニングカーベースに・・・といった時代ではなくなってしまった感がある。
当時、デートカーとしても人気だったS13シルビア。その一方でチューニングされた個体も多いだけに、現存する個体はかなり減ってきた感がある
シルビア(S13)
●純正部品入手困難度:★★★★☆
●維持の大変度:★★★☆☆
S13型シルビアの定番のトラブルといえば、エアコンのコンプレッサーの故障(10万円~)、燃料ポンプの故障(11万円~)、ウィンドウレギュレーターの故障(2万円~)などが挙げられる。
S13型シルビアは、ここ10年ほどで急激に数を減らした感がある。淘汰された分、2ケタナンバーのワンオーナーカーと思しき個体が目に留まるようになった。
その分、部品取り車やヤフオクをはじめとするネットオークションを主戦場にして部品を手に入れるわけだが、こちらもモノによっては争奪戦になりがちだ。
車両重量970kgに対して、SiRは最高出力160馬力をたたき出す。まさにライトウェイトスポーツだ
CR-X(EF7/8)
●純正部品入手困難度:★★★★★
●維持の大変度:★★★★☆
サイバースポーツCR-Xの定番のトラブルといえば、オイル漏れ(10万円~)、オルタネーターの故障(7万円~)、エアコンのコンプレッサー(20万円~)などが挙げられる。
ホンダ車は専用部品が多く、すでに新品部品の入手はかなり困難。ヤフオクなどのネットオークションで出品された部品を仲間内で「共食い」しているケースも少なくない。
eBayでも売られてはいるが、送料を含める割高になりがちだ。現時点でサイバースポーツCR-Xを手に入れるとしたら相応の覚悟が必要だろう。
純正部品の復刻、レストアサービスをはじめ、ネオクラシックカーとしては部品の入手のしやすい部類といえるユーノスロードスター
ユーノスロードスター(NA)
●純正部品入手困難度:★★☆☆☆
●維持の大変度:★★☆☆☆
ユーノスロードスターの定番のトラブルといえば、エンジンヘットカバーのオイル漏れ(4万円~)、ラジエーターの劣化(7万円~)、幌の劣化(15万円~)などが挙げられる。
ネオクラシックカーとしては街中で見かける頻度の高く、メーカーがレストアサービスおよび現時点で約170点におよぶ純正部品の復刻など、まだまだ現役のクルマといえるかもしれない。
スペシャルショップも日本各地に点在するだけに、上記の他のモデルよりはイバラの道ではないといえる(それでも古いクルマなりのトラブルに対する覚悟は必要だが)。
上記5モデルについてまとめると、そのモデル固有のトラブルに加えて、FD3S型RX-7と同様に経年劣化による故障が目立つ。
いずれも生産されてから30年前後というモデルばかりだ。チューニングする予算があったら、その分をリフレッシュにまわすのが懸命といえるかもしれない。
■まとめ:「好き! 」だけでは乗れないのか?
FD3S型RX-7のサイドフォルム。曲線を多用したデザインは、デビューから30年以上経過しても色褪せない
長年憧れたり、かつて所有していてカムバックしたいと考えていたり・・・。魅力あるモデルだけに、憧れや想いを現実にしたいと考えているFD3S型RX-7オーナー予備軍は多いことだろう。
壊れた時は「こんなもんだよね」「直せばいいや」と割り切れる潔さと良い意味での諦めが、FD3S型RX-7をはじめとする旧車およびネオクラシックカーと付き合う秘訣かもしれない
たしかに「買えばなんとかなる」かもしれない。しかし、そのハードルが10年前よりも確実にあがっていることは確かだ。
経年劣化による故障の頻度、部品の価格高騰、入手困難の度合い・・・。
FD3S型RX-7が後世に残すべき名車であることは疑いようがない。現オーナーは延命することも視野にいれる時期に差し掛かったように思う
「せっかく欲しいと思っている気持ちを削ぐつもりか! 」と怒られてしまいそうだが、現実を見ないで勢いだけで購入すると失望するだけでなく、FD3S型RX-7自体を嫌いになってしまうことだってある。
まさに「かわいさ余って憎さ百倍」というやつだ。そんな悲劇の結末はオーナーとRX-7双方のシアワセのために避けておきたいところだ。
好きだけではどうにもならないこともある。壊れた時は「こんなもんだよね」「直せばいいや」と割り切れる潔さと、良い意味での諦めこそが長く付き合えるかもしれない。
その覚悟をもってFD3S型RX-7を所有できれば、名実ともに一生モノの存在となるはずだ。
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みんなのコメント
これから購入して乗ろうとすると、車両代は高いしノウハウは無いしで大変だと思うよ