バッテリー容量は74kWh、航続距離は460km
執筆:Illya Verpraet(イリヤ・バプラート)
【画像】BMW iX3とX3 アウディ、ジャガー、メルセデスの競合純EV SUVと比較 全108枚
翻訳:Kenji Nakajima(中嶋健治)
電動SUVのBMW iX3には、コンパクトなシティカー、i3との共通点は殆どない。i3はカーボンファイバー構造を備え、未来的なデザインをまとう。一方のiX3は、名前は似ているとはいえ、もう少し従来的だ。
テスラに加えて、フォルクスワーゲン・グループやヒュンダイ・グループから、次々と純EVがリリースされている。怒涛の勢いに直面したBMWも黙ってはいられず、既存のX3をベースにiX3を開発した。
フロントのドライブシャフトを外し、フロアにバッテリーが並べてあるが、構造的にはX3と共通部分が多い。BMWが後輪駆動モデルの主力として用いるCLARプラットフォームは本来、様々なドライブトレインへ対応するよう設計してある。
それでも、iX3のボンネットを開きプラスティック製カバーの下を覗くと、不自然に使われていない空間が残されている。荷物を置ける便利な空間も、確保されているけれど。
X3との近さは気にならなくもないが、iX3のスペックを見れば、そんなことは忘れられるかもしれない。駆動用バッテリーの容量はグロスで80kWh、実容量で74kWhある。航続距離は460kmと充分な長さだ。
ジャガーIペイスやアウディeトロン 50、メルセデス・ベンツEQC 400といった競合モデルと比較しても、同等以上の航続距離を確保できている。
最大150kWまでの急速充電器に対応し、10%から80%までバッテリーを蓄えるのに必要な時間は最短32分。内燃エンジン・モデルを改造して純EVにした割には、かなり優秀な数字といえるだろう。
286psのAC同期モーターで後輪駆動
AUTOCARでは2020年11月にドイツでiX3へ試乗しているが、今回は英国の一般道。その間に、フェイスリフトが施されている。
見た目の変化は限定的で、ヘッドライトが新しくなり、キドニーグリルが若干大きくなった。シフトレバーだけでなく、iドライブ・コントローラーも新しいものに置き換わっている。
インフォテインメント・システムのiドライブは最新バージョンにアップデート。タッチモニターも大型化された。今回試乗したiX3は、限定グレードのプレミア・エディションだった。
iX3の英国価格は、Mスポーツで5万9730ポンド(907万円)から。さらに3000ポンド(46万円)余計に払えば、Mスポーツ・プロへアップグレードできる。英国のiX3は、Mスポーツが基本となる。
ただし、サスペンションはアダプティブダンパーが標準。Mスポーツの、硬い乗り心地ではない。
X3を起源とするから、iX3は純EVに最適化されたモデルではない。シフトレバーが備わり、モニター式のメーターパネルには、BMWでおなじみの4眼メーターのグラフィックが用いられている。起動時に、宇宙船のような効果音が聞こえてくるが。
1基のAC同期モーターが発生する286psのパワーは、後輪へ伝達される。発進加速は鋭いものの、爆発的というほどではない。内燃エンジンのクルマと比べれば、65km/h前後までの加速は特に速いから、純EVに乗り慣れていなければ驚くとは思う。
iX3の0-100km/h加速は6.8秒。2185kgの車重を考えれば、充分に立派だ。
SUVでも後輪駆動で運転が楽しい
加速時は、映画音楽などを手掛ける作曲家のハンス・ジマー氏がデザインした合成音が響いてくる。コンフォート・モードでは背景音としてうっすら聞こえる程度だが、スポーツ・モードを選択すると、より明確に耳へ届く。
筆者は、スピード感を効果的に高めてくれるように感じた。音色はバットモービルというより、高速列車のユーロスターへ乗った時のよう。気に入らなければ、オフにもできる。
近年の純EVの例とは異なり、iX3のステアリングホイールには回生ブレーキの強さを調整できるパドルが付いていない。ナビゲーションと車載センサーのデータをもとに、必要な回生量を自動的に判断してくれる。
もう少し長く運転すれば慣れるのかもしれないが、試乗中は効きの強さを予想できなかった。タッチモニターから強弱を3段階で選べるが、運転中に切り替えることは難しい。
シフトレバーを左に倒せばBモードになり、ワンペダル・ドライブが可能になる。これが便利かもしれない。
ボンネット内にもう1基の駆動用モーターを搭載できそうに思えるものの、286psで後輪駆動の純EVは運転が楽しい。SUVでも、目からウロコが落ちるほどに。
リアタイヤの幅は275とワイドで、トラクションに不足はない。タイトコーナーでは、リア駆動であるスタンスを隠さず勢いよく脱出できる。しかも変速の必要がないから、欲しいパフォーマンスを即座に引き出せる。
特に動的特性に優れた電動SUV
フロントタイヤへつながるドライブシャフトがなく、操舵感は自然。レシオをクイックにし、フィードバックを濃くすれば、一層感触が磨かれるだろう。
サスペンションの設定も良く詰めてあり、スプリングは快適性寄りの設定ながら、コンフォート・モードでも姿勢は程よく引き締まっている。スポーツ・モードを選べば、ボディの動きは一層小さくなる。
郊外のカーブが連続する区間との相性も良好。軽くない車重を、隠すこともないけれど。
ジャガーやアウディ、メルセデス・ベンツといった競合モデルと比較して、英国での価格競争力は高い。Mスポーツ・プロを選択しても、iX3の方が数千ポンド(数十万円)もお手頃。四輪駆動は選べないが。
X3をベースとしたiX3は、パフォーマンスに優れた電動SUVの1台だ。ただし、SUV以外をお探しなら、4シリーズ・グランクーペから展開するi4というチョイスも悪くはないだろう。
SUVにこだわらないのなら、ヒュンダイ・アイオニック5という選択肢も英国にはある。パッケージングは優秀で、同等の実用性とパフォーマンスを備えている。ラグジュアリーさでは劣るものの、その分価格は安い。
とはいえ、ドライバーに対する訴求力で勝るのはiX3。BMWというブランドも、惹かれるポイントになり得る。
BMW iX3 プレミアエディション・プロ(英国仕様)のスペック
英国価格:6万1770ポンド(939万円/試乗車)
全長:4734mm
全幅:1891mm
全高:1668mm
最高速度:180km/h
0-100km/h加速:6.8秒
航続距離:460km
電費:5.1km/Wh
CO2排出量:−
車両重量:2185kg
パワートレイン:AC同期モーター
バッテリー:74kWhリチウムイオン(実容量)
最高出力:286ps
最大トルク:40.7kg-m
ギアボックス:−
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今週の金曜日に待ちに待って納車されたローマに乗り天気も良かったから、それくらいの距離を自分の感覚に添って走らせたけど、自分が設定したボディーカラーと内装色のローマは良い買い物をした!と、あらためて思った。