LAND ROVER DISCOVERY HSE[DIESEL] × DISCOVERY HSE Luxury
ランドローバー ディスカバリー HSE ディーゼル × ディスカバリー HSE ラグジュアリー
ランドローバー ディスカバリーのベストエンジンはディーゼルかガソリンか? 試乗の末に行き着いた結論【Playback GENROQ 2017】
悩ましき2台の万能選手を塩見 智が検証する
ランドローバー・ディスカバリーの5代目がついに日本導入となった。7人が快適に過ごせるスタジアムシートなど従来のコンセプトを継承しつつ、エアサスやテレインレスポンス2オートの採用で走破性をさらに高めている。今回は3.0リッターV6のガソリンとディーゼルを比較試乗し、それぞれの魅力を探った。
「ランドローバーはデザインも性能も賞味期限が長く、そうそう変わる必要がない」
5世代目となる新型ランドローバー・ディスカバリーが登場した。初代~2代目、3代目~4代目はそれぞれキープコンセプトで、マイナーチェンジと呼べるレベルだったため、実質3世代目と数えることもできる。初代登場から29年も経つのに見た目が大きく変わったのはこれで2度目。ランドローバーはデザインも性能も賞味期限が長く、そうそう変わる必要がないのだ。
新型は歴代モデルに通じる見た目上の特徴、すなわちクラムシェル型のボンネットフード、ボディ同色の太いCピラー、途中でキックアップするステップドルーフといったデザインを継承しながら、全体としてはガラリと姿を変えた。先に登場したディスカバリー スポーツに似たシルエットで、顔つきはレンジローバー スポーツにも通じる。全長4970mm、全幅2000mm、全高1890~1895mmとサイズは大きい。トレッドが広く、立体駐車場では要注意。前から見るとワイドなSUVだが、後ろから見ると背高のミニバンのようにも見えるのが面白い。
日本仕様はHSE ラグジュアリーとHSEの2グレード構成。それぞれに3.0リッターV6スーパーチャージド・ガソリンエンジンと3.0リッターV6ディーゼルターボエンジンが用意される。いずれも8速ATとの組み合わせだ。今回、HSEラグジュアリーのガソリンとHSEのディーゼルを連れ出し、オンロードを走らせた。
「高速道路での振る舞いは洗練されていて乗り心地は極上」
最初にサントリーニブラックのガソリンモデルのドアを開けて乗り込む。大きく変わったエクステリアに比べると、インテリアはおなじみの世界で落ち着く。ステアリングヒーターは実際にありがたいが、そのスイッチが大きく一等地にあるのは、極寒の地を想起させる演出でもあると思う。相変わらずのダイヤル式のATセレクターは使いにくいが、もう慣れた。その上の横長ディスプレイは、彼らが「インコントロールタッチプロ」と呼ぶ新しいインフォテインメントシステムを表示、操作するためのもの。使いやすい。一旦メニューを出してしまったら、しばらくは表示が消えてくれなかったかつてのDVDナビよ、さようなら。
高速道路での振る舞いは洗練されていて乗り心地は極上。高剛性の車体とエアサスの組み合わせによってのみつくりだすことができる乗り味だ。基本的にはフラットだが、乗り心地の一番上積みの部分だけ、船上にいるがごとくややゆらゆら動くレンジローバーと同じ挙動を感じた。レンジローバースポーツでは感じないので、あえてそうしているのだろう。あるいは悪路走破性を重視するとこうなるのだろうか。この点はガソリンもディーゼルも同じ。ともあれ、フラットネス一辺倒、もといフラットネスを最重要視するという人はジャーマンSUVをどうぞ。
「意外だったのは、ほとんど全域でディーゼルの方が静かだったこと」
途中でユーロンホワイトのディーゼルモデルに乗り換える。ガソリンとディーゼルの違いは想像通りの部分とそうでない部分があった。ガソリンよりもディーゼルの方が低い回転域からもりもりトルクを感じさせたのは想像通り。ガソリンのトルクが細いわけではない。ディーゼルが1750rpmで600Nmという極太トルクを発するのだ。このため高速道路への合流や街中での中間加速の力強さはディーゼルの圧勝。意外だったのは、ほとんど全域でディーゼルの方が静かだったこと。車内はもとよりアイドリング時に外で聞いてもそう。同行した複数のスタッフも同意見だった。
ディスカバリーに限ってはガソリンは忘れてよいと判断しかけたが、山道を走らせてみて思いとどまった。コーナーの連続で加減速を繰り返す際に、ガソリンの方がレスポンスがよいのと、ギヤを固定した際にガソリンの方が有効な回転域が広いので、加速の息が長く気持ちよい。ディーゼルはその特性上アクセルを踏んでから一拍あって加速するが、これが山道ではどうにもフラストレーションとなる。
ただし、誰がディスカバリーで山道を攻めるのか? これを考えると、このクルマに似合っているのはディーゼルだ。ちなみにどちらも2.4t近い車重だが、上屋が遅れて揺さぶられるようなことはなく、それなりのペースで駆け抜けることができた。
「ディスカバリーで山道を攻めると考えれば、似合っているのはディーゼルだ」
ディスカバリーには28万8000円のオプションで3列目シートを備え7人乗りとすることができる。3列目シートはオケージョナルシートではなく大人が長時間座っていられるサイズがあり、頭上、足元にも必要最小限のスペースが確保される。下手なハッチバックの後席より快適だ。2列目、3列目のシートをそれぞれ展開したり格納したりできるのだが、その操作を荷室に設置されるスイッチでも、車両とリンクさせたスマートフォンでも、インコントロールタッチプロでもできるのが新しい(HSEラグジュアリーのみ)。ちゃんとシート上の人や荷物を感知するので安全性も高い。
全席分のUSB差込口があってどの席でもスマートフォンを充電できるほか、車内をWi-Fiスポット化することもできるなど、今風であり、家族向けの仕立てになっている。
「電子制御による高性能を組み合わせ、ドライバーの腕を問わず悪路を走行できる」
ディスカバリーはラグジュアリーSUVとして一流だが、それはこのクルマの一面に過ぎない。ランドローバーの一員である以上、オフローダーとしても一級でなければならない。それは今春、米ユタ、ネバダ州境の砂漠と岩場で、前方にそそり立つ壁のような岩場を駆け上がり、歩くのが困難なほどのサラサラの砂場でもしっかりとトラクションを確保して走行したことで確認済み。車高を最大115mm上げられるなどの機械的な高性能と、悪路専用の低速クルーズコントロールたるATPC(オールテレインプログレスコントロール)に代表される電子制御による高性能を組み合わせ、ドライバーの腕を問わず悪路を走行できる。ただし自制心は問われる。最大渡河水深900mmだからといってむやみに挑戦してはいけないのだ。
一点、便利機能であるACC(アダプティブクルーズコントロール)はともかく、安全装備であるAEB(自動ブレーキ)が標準装着ではなくオプション設定なのは、779万~901万円のモデルとしては物足りない部分。そのことを除けば、大きな声では言えないが、レンジローバーじゃなきゃダメな部分を探すのが難しい。
REPORT/塩見 智(Satoshi SHIOMI)
PHOTO/小林邦寿(Kunihisa KOBAYASHI)
【SPECIFICATIONS】
ランドローバー ディスカバリー HSEラグジュアリー
ボディスペック:全長4970 全幅2000 全高1890/1895mm(パノラミックルーフ有)
ホイールベース:2925mm
車両重量:2360kg ※1
エンジンタイプ:V型6気筒DOHCスーパーチャージャー
総排気量:2994cc
圧縮比:10.5
最高出力:250kW(340ps)/6500rpm
最大トルク:450Nm(45.9kgm)/3500rpm
トランスミッション:8速AT
駆動方式:AWD
ステアリング形式:パワーアシスト付きラック&ピニオン
サスペンション:前後ダブルウイッシュボーン
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤ&ホイール:前255/55R20 後255/55R20
最高速度:215km/h
0-100km/h加速:7.1秒
燃料消費率(JC08モード):8.5km/L
車両本体価格:881万円
ランドローバー ディスカバリーHSE(ディーゼル)
ボディスペック:全長4970 全幅2000 全高1890/1895mm(パノラミックルーフ有)
ホイールベース:2925mm
車両重量:2380kg ※2
エンジンタイプ:V型6気筒DOHCディーゼルターボ
総排気量:2992cc
圧縮比:16.1
最高出力:190kW(258ps)/3750rpm
最大トルク:600Nm(61.2kgm)/1750rpm
トランスミッション:8速AT
駆動方式:AWD
ステアリング形式:パワーアシスト付きラック&ピニオン
サスペンション:前後ダブルウイッシュボーン
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤ&ホイール:前255/55R20 後255/55R20
最高速度:209km/h
0-100km/h加速:8.1秒
燃料消費率(JC08モード):11.6km/L
車両本体価格:799万円
※1 7名仕様は2410kg
※2 7名仕様は2430kg
※GENROQ 2017年 8月号の記事を再構成。記事内容及びデータはすべて発行当時のものです。
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