昨今、すべてのドライバーの財布を直撃しているのがガソリン価格の高騰。ならばいっそ価格が安い軽油を使うディーゼル車に乗り換えればいいのでは? という思いが頭をよぎるが、それってホントにお得なの……!?
文/井澤利昭、写真/トヨタ、マツダ、写真AC、FavCars.com
ランクルプラドにCX-5のディーゼル中古が安い!! 軽油が安い今お手頃中古に手を出していいのか!? すぐ飛びついちゃダメなワケ
■いつも気になるスタンドの店頭に掲げられた価格の差。軽油が安い理由とは?
ガソリンには揮発油税と地方揮発油税を合わせた53円80銭、通称ガソリン税が加算されているのに対し、軽油には軽油取引税の32円10銭のみ。さらにガソリン税には消費税も上乗せされるため、これがガソリンより軽油が安い大きな理由となっている
ガソリンスタンドでの給油のたびに目に入る店頭の価格表示。ハイオク、レギュラーといったガソリンの価格と並んでついつい気になってしまうのが、ディーゼル車のために用意されている軽油の安さだ。
燃料費高騰の波を受け、軽油の価格も以前よりはずいぶん高くなってはいるが、それでもレギュラーガソリンと比較して1リッターあたり20~30円程度安いのが一般的。
この価格差の理由はズバリ、ガソリンと軽油それぞれにかかる税金の差によるものだ。
ガソリンには1リッターあたり48円60銭の揮発油税と5円20銭の地方揮発油税という2つの税金、俗にいうところの「ガソリン税」が加算されている。これに対し、軽油には32円10銭の軽油取引税が加算されるのみ。
ガソリン税にはさらに消費税が上乗せされる、いわゆる二重課税の状態となっているが、軽油は本体のみが課税対象なので、その価格差はさらに広がることになる。
1リッターあたり20~30円というわずかな差とはいえ、走れば走るほど燃料代の差はどんどん大きくなっていくだけに、こと燃料代に限っていえばガソリン車よりもディーゼル車のほうが経済的には有利に感じられる。
とはいえクルマの維持費はもちろん燃料費だけではない。実際の購入前には、燃費や税金、リセール価格など、それぞれのメリット・デメリットを比較して、ガソリン車とディーゼル車、どちらがお得かを考えることが重要だ。
■燃費もガソリン車よりも良好! 軽油を使用するディーゼル車のメリット
かつては黒い煙と騒音をまき散らしながら走る姿にあまりいいイメージを持たれなかったディーゼル車だが、ヨーロッパを中心に普及が進んだクリーンディーゼル車の台頭で、近年は国内でも見かけることが多い。
ディーゼル車のメリットは先ほどからも述べているとおり、その燃料である軽油の安さにほかならないが、ガソリン車と比べて燃費が良い点も大きな魅力のひとつ。
同一車種でガソリンとディーゼルの両モデルが用意されるMAZDA2のカタログ燃費を比較すると、JC08モードでの燃費は、ガソリンモデルが21.8km/Lであるいっぽう、ディーゼルモデルでは24.2km/Lと、思った以上の差がある。
また同クラスのガソリン車と比較してパワフルな点もディーゼル車の特徴。トルクが大きいため、高速道路への進入や急な坂道、重い荷物を積んだ状態でも、アクセルをあまり踏み込むことなく楽々と加速していく頼もしい走りを見せてくれる。
加えて対象となるクリーンディーゼル車であれば、新車購入時に税制面でのメリット受けられるいわゆるエコカー減税にも対応しており、重量税の免税や自動車税の非課税対象となる場合も。
ただしこちらの優遇措置を受けるには、2023年12月31日までに新規登録を済ませる必要があり、2024年1月1日以降は、ガソリン車と同じく燃費性能に応じた免税や軽減率が適用されることとなる。
■車両価格の高さやメンテ費用がかさむことも…ディーゼル車のデメリットとは?
寒さに弱いのもディーゼル車のウィークポイントのひとつ。これは軽油は低温になると凍結する可能性があるためだ。北日本など寒い提供されている軽油は、凍結防止剤などを配合した寒冷地仕様となっている
燃料代も安く燃費も良好なうえ、パワフルな走りが可能というディーゼル車。一見、ガソリン車と比較していいこと尽くめように思えるが、当然デメリットがないわけではない。
まず新車購入時の重要なポイントとなる車両価格が、ガソリン車と比較してディーゼル車が割高な場合が多い。
MAZDA2の場合、主要装備がほぼ同じグレードのモデルを比較すると、ガソリンエンジン搭載の15 BD(2WD)の価格が174万1300円(税込)であるのに対し、ディーゼルエンジンのXD BD(2WD)は208万4500円(税込)と、実に30万円以上もの価格差がある。
さらにディーゼル車は、日頃のメンテナンス費用もガソリン車に比べて割高である点も知っておきたい。
その理由は、オイルの交換のスパンがガソリン車の半分程度と短いうえ、排ガスを浄化するための尿素SCRシステムを搭載している車種では、装置を動かすためのアドブルー(高品位尿素水)の補充が必要となるなど、ディーゼル車ならではのメンテナンスが必要となるからだ。
またディーゼル車の燃料である軽油は、気温が低くなると凍結する可能性がある点も注意が必要。
寒冷地で供給されている軽油には、凍結を防止するための添加剤が入っているため問題ないが、暖かい地域で給油した軽油のままで寒い地域へ向かうと、軽油の凍結によってエンジンが始動ができないといったトラブルに見舞われるおそれがあるわけだ。
さらにディーゼルエンジンは、その構造上耐久性が高いといわれる反面、燃焼の力が強く大きな負荷がエンジンにかかるため、ストップ&ゴーの多い街中での使用が多いと、ガソリンエンジンよりも寿命が短くなることも。
その他にも、ガソリン車では新車登録から13年を超えると上がってしまう自動車税の上乗せが、ディーゼル車では2年短い新車登録から11年で始まってしまうなど、長く乗りたいと思っている人にとっては、税制面でのデメリットがあるのも痛いところだ。
先ほども少し触れたとおり、エコカー減税での優遇も2023年いっぱいで終わりを迎えるなど、時代の流れはディーゼル車に厳しくなってきているといわざるを得ない。
■脱炭素化社会への流れには抗えない!? ディーゼル車はいつまで乗れる?
一時はエコカー選びの選択肢のひとつとしてもてはやされたクリーンディーゼル車ではあるものの、ここ最近の急速なクルマの電動化の動きのなか、その存在感が薄れつつあるのは事実だ。
脱炭素社会の実現を目指す一環として2022年10月には、欧州地域における二酸化炭素を排出する乗用車と小型商用車の新車販売を2035年までに禁止されることが決定。
日本国内でも2030年代半ばまでには新車販売されるクルマの完全電動化を実現できるよう包括的な措置を講じることが、政府が目指す「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」のなかで謳われている。
とはいえ、ディーゼル車をはじめとする内燃機関で動くクルマが街中や市場から突然姿を消すとは考えづらく、当分の間は生き残り続けることは間違いない。
いまディーゼル車に乗っている人からすると「このままでは自分の愛車のリセール価格が暴落してしまうのでは!?」とやきもきしてしまうかもしれないが、年式や車種によって差はあるものの、クリーンディーゼル車であれば、しばらくはリセール価格にも大きな影響はないだろう。
いっぽうで気をつけなければならないのが、首都圏を中心にいくつかの都道府県が定める条例により、当該の地域では走行禁止など規制の対象となっている古いディーゼル車の場合だ。
これに該当する車両は、中古車取扱店での買い取りや下取りが厳しく、場合によってはそのまま廃車扱いになってしまうケースも少なくない。
いまのところは規制が厳しくない海外の国や地域に販路を持つ業者ではあれば、こうした古いディーゼル車でも買い取ってもらえる可能性はあるが、脱炭素化や電動化の流れは、今後それらの地域にも広がっていくことはまず間違いないだろう。
ランクルやプラドなど、古いディーゼル車のなかには魅力的なモデルも多いが、それらのクルマにこれから乗るというのであれば、相当な覚悟が必要となってくる。
メリットや魅力的な部分も多い反面、つい先日にはボルボが2024年初めまでにディーゼル車の生産を終了することを発表するなど、ディーゼル車を取り巻く環境はどんどん厳しくなってきている。
燃料費など目先の安さにばかりに目を奪われず、良い点と悪い点をしっかりと知ったうえで、自分のカーライフに合ったクルマ選びをしたいものだ。
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みんなのコメント
前回、タイトルと内容が違うという皆さんのコメントが多かったですよね。
訂正しないで再掲載したのですか。