マクラーレンDNAの中核となる技術
マクラーレンは、60年以上にわたってフォーミュラ1で開発された革新技術を牽引してきた。そのため、ライトウエイト・スーパーカー・エンジニアリングのスタンダードとなる画期的なテクノロジーを、自動車産業にもたらす有利な立場にある。
【画像】マクラーレンとカーボンファイバー40年以上の進化が生み出した名車たち 全9枚
マクラーレンの革新技術を最もよく象徴しているのは、カーボンファイバーだ。軽量、高強度、高剛性を実現する素材科学の中でも高度にテクニカルなこの分野において、マクラーレンは半世紀近くにわたってリーダーであり続け、可能性の限界を絶えず乗り越えてきた。
公道とサーキットの特性を最高の形で組み合わせたスーパーカーを実現する上で、カーボンファイバーは重要な役割を果たしている。マクラーレンのプロダクションカーは、最初のモデルであるマクラーレンF1以来、すべてコンポジット素材で作られたシャシーをベースにしてきた。この素材の軽さと優れた剛性は、最高水準のパフォーマンスと刺激的なダイナミクスの鍵を握るだけでなく、クラストップの乗り心地を実現し、さらに効率性という付加価値ももたらす。
また、その強度は安全性、品質保証、耐久性につながる。スーパーカーのプラットフォームとして完璧な素材であり、優れたパッケージング・ソリューションが可能になるため、デザイナーは驚くべき美しさと空力効率を兼ね備えたモデルを実現できる。
F1におけるヘリテージに深く根ざしたこの技術こそ、マクラーレンDNAの中核なのだ。
マクラーレンMP4/1(1981年)
MP4/1は、総カーボンファイバー製モノコック・シャシーを初めて採用したレーシングカーとして、フォーミュラ1に革命を起こした。その軽量で剛性に優れた構造によって、安全性とパフォーマンスを大きく向上させたのだ。ジョン・バーナードがデザインしたこの先駆的なシャシーをきっかけに、モータースポーツでカーボンファイバーの採用が広がり、F1マシンの設計が根底から覆された。
カーボンファイバー・シャシーを備えたマシンの登場と共に、現代F1の時代が幕を開けたのだ。1981年のイタリアGPでは、安全性におけるカーボンファイバーの優位性が劇的に示された。マクラーレンのドライバーだったジョン・ワトソンが、約225km/hで大事故を起こしながら、自力で脱出し、無傷で生還したのだ。このことは、カーボンファイバー・シャシー技術こそF1の安全性の未来形だと、パドックで広く認められるきっかけとなった。そのわずか3レース後には、カーボンシャシーのポテンシャルもはっきりした。その年のイギリスGPで、ワトソンが40秒以上の大差を付けて優勝したのだ。
マクラーレンF1(1993年)
マクラーレンF1には画期的な特徴が数多くあったが、その中でもとくに重要な要素となったのが、最小限の車重と最大限の構造的剛性を重視して採用した、カーボンファイバー製モノコック・シャシーと総カーボンファイバー製ボディ。ロードカーにおけるカーボンファイバー採用の先駆者として、F1は並ぶもののないパフォーマンスを誇った。わずか1140kgと軽量で、かつ6.1リッターのV12エンジンが627PSという強大なパワーを発生したからだ。
F1のカーボンファイバー製モノコックは、設計と分析に当時最先端だったコンピューターを使って開発され、ロードカーとしては前例のない驚くべきパワーウェイトレシオを達成して、スーパーカー・エンジニアリングの象徴となった。
このプラットフォームによって、F1はドイツのエーラレシエンにあるテストコースで386.4km/hという最高速度を記録し、世界最速のロードカーとなる。それだけでなく、カーボンファイバー技術はサーキットから公道へ、そして再びサーキットへと円を描くようにして戻り、F1 GTRが1995年ル・マン24時間レースで優勝することとなるのだ。
マクラーレン12C(2011年)
12Cは、マクラーレン・オートモーティブが最新式のマクラーレン・プロダクション・センターで製造した最初のロードカー。シングルピースのカーボンファイバー製タブ『モノセル』を導入し、当時のロードカーとしては前例のない軽量・高剛性を実現した。このシャシーの開発と共に、マクラーレンのカーボンファイバーの歴史は21世紀に突入。モノセルを中心に、世界で初めて総カーボンファイバー製タブを装備した、真に量産型のスーパーカー・ラインアップが誕生した。それまでの自動車産業では前例のない規模で、このタイプのシャシー構造の恩恵を享受できるようになったのだ。
12Cがスーパーカー・セグメントにもたらした革命的な新技術はほかにもあるが、モノセルは、マクラーレンが現代スーパーカーのDNAを確立する上で中核的要素となり、その後の礎となった。
当時まだ一般的だったアルミニウム製の設計と比べると、その利点は大きく、タブそのものがわずか75kgと信じられないほど軽量なだけでなく、ねじり剛性も非常に優れていた。そのため12Cのスパイダーバージョンは、シャシーに補強材を追加する必要がなかった。12Cスパイダーが生み出したこの妥協のないソリューションは、現在のすべてのマクラーレン製スパイダーに受け継がれている。
マクラーレンP1(2013年)
12Cの発表からわずか2年後、マクラーレンはまたしてもカーボンファイバーを活用するスーパーカー技術に革命を起こした。それが2013年に発表されたマクラーレンP1だ。マクラーレンの『1』モデルの2番目にあたるP1は、画期的な先代モデルのマクラーレンF1からさらなる進化を遂げた。ボディ構造は総カーボンファイバー製で、ルーフや下部構造、ルーフのシュノーケル、エンジン吸気用ダクトに加え、P1のハイパフォーマンス・ハイブリッド・パワートレインに不可欠なバッテリーとパワーエレクトロニクスのハウジングまで、すべて『モノケージ』と呼ばれる構造に一体化したのだ。
この構造全体の車重はわずか90kgで、スーパーカー・エンジニアリングとパッケージングの傑作だった。電動化において重量の妥協が不可避ではないこと、真に軽量なアルティメット・スーパーカーのパフォーマンスに電動化が重要な役割を果たせることを、世界に証明してみせた。
マクラーレン720S(2017年)
720Sでは、カーボンファイバー製ストラクチャーの『モノケージII』が導入された。これは現在のマクラーレン750sでも使われており、先代のモノセルから剛性がさらに高まり、重量も削減された。この軽量なストラクチャーにはパッセンジャー・セル全体が含まれ、カーボンファイバー製タブと、これもカーボンファイバー製のアッパー・ストラクチャーが一体化されて、軽量という特徴が一段と強化されている。シリーズ生産スーパーカーのカーボンモノコック技術がこのように大きく前進したことによって、数々の賞を獲得したパフォーマンスとダイナミクスが実現しただけでなく、人間工学、視界、デザイン面も大幅に向上した。
モノケージIIはルーフピラーが驚くほどスリムなため、フロントウィンドウからの視界が抜群だ。キャブフォワードのコクピットの後方寄りにBピラーが配置されていることも相まって、広々とした開放感も獲得。また、モノケージIIのサイドシルは、乗降性を高めるため、乗員の足の位置に向けて下がっている。ドラマチックなダブルスキンのディへドラル・ドアは、ルーフの一部と共に前方かつ上方に開く。このカーボンセルによって、最大のパフォーマンスを発揮でき、乗降もしやすいスーパーカーが実現したのだ。
720Sと、続く750Sのスパイダーバージョンでは、専用のカーボンファイバー製アッパーリア・ストラクチャーが導入された。これによって、モノセルで実現したアドバンテージと同様に、強度の引き上げや補強材は不要になり、最小限の重量増加だけで刺激的なダイナミクスが確保された。
マクラーレン・コンポジット・テクノロジーセンター開設(2018年)
2018年、イギリスのシェフィールドにマクラーレン・コンポジット・テクノロジーセンター(MCTC)を開設。5000万ポンドを投じて建設された、ウォーキング以外で初の独立したマクラーレン生産施設だ。このワールドクラスの施設は、マクラーレン・オートモーティブとシェフィールド大学のAMRC、シェフィールド市議会とのパートナーシップで実現した。コンポジット・エンジニアリングとその研究に関する卓越した拠点となることを目指すと同時に、未来のパワートレイン技術を直接組み込める新世代カーボンファイバー製タブの生産拠点でもある。
MCTCで製造された最初の市販車用カーボンファイバー製パーツは、驚異的に軽量なマクラーレン765LTのものだった。アクティブ・リア・ウィング、リア・バンパー、フロント・フロアは、すべてMCTCで設計、開発、製造された。
マクラーレン・アルトゥーラ(2021年)
アルトゥーラでは、新世代のハイパフォーマンス・ハイブリッド・パワートレインを組み込むために特別に設計された、マクラーレン・カーボン・ライトウェイト・アーキテクチャー(MCLA)が導入された。それまでのシャシーより軽量で強度も高まったMCLAは、アルトゥーラのハイブリッドV6パワートレインを支えると同時に、カーボンファイバー製モノコックの構造的利点がさらに最適化され、進歩している。マクラーレン・コンポジット・テクノロジーセンターで製造されるMCLAは、カーボンファイバー製モノコック技術に革命を起こした。それまでモノセルとモノケージIIで進化してきた軽さと剛性という長所が強化されただけでなく、アルトゥーラのハイブリッドシステムで使われるバッテリー用のセーフティーセルが組み込まれ、さらに耐衝突・耐荷重の機能もタブに統合されたのだ。
また、マクラーレンの革命的な技術によって、アルトゥーラのMCLAカーボンファイバー製モノコックは、それまで不可能だった規模での量産が可能となった。続いて登場したアルトゥーラ・スパイダーでも、マクラーレンの軽量スパイダーのDNAが受け継がれ、クーペ・バージョンからのシャシー強化や補強を追加する必要はなかった。マクラーレン初となるコンバーチブルのハイパフォーマンス・ハイブリッド・スーパーカーは、妥協なしで誕生したのだ。
マクラーレンW1(2024年)
W1では、マクラーレンの軽量カーボンファイバーDNAをさらに進化させた『エアロセル』が登場した。エアロセルは、マクラーレンがロードカーのために設計した中で技術的に最も先進的でラディカルなカーボンファイバー製タブで、極めてエクスクルーシブなサーキット専用モデルのソーラスGTと同じ、プリプレグ・カーボンファイバーで作られている。この技術では、あらかじめ様脂が含浸されたコンポジットを使用するため、硬化プロセスがシンプルになる。また、そのあと型の中で加圧処理を行うことで、同等のサイズのタブより構造的強度が高まる。
同一条件の比較でいっそう軽量になるだけでなく、エクステリアの一部でボディワークの追加が不要になるメリットもある。エアロセルは、W1が誇る究極の空力パッケージの鍵を握る要として設計されており、真のグラウンド・エフェクトを活用するため、モノコックのフロアを65mm高くし、その結果フットウェルの位置が上がり、エアロセルの前方に向かって最大80mm高くすることを可能にした。同時に、エアロセルと車両の全長を抑えるためシート・ポジションを固定して、モノコックとシートを一体化している。この設計により、ホイールベースが約70mm短縮されたほか、重量が削減されるというメリットも加わった。
W1には、マクラーレンの次世代カーボンファイバー技術であるARTカーボンも導入されている。マクラーレンが開発した画期的な『高速』積層製造技術、オートメイテッド・ラピッド・テープ(ART)によって実現したARTカーボンは、エンジニアに新たな可能性の扉を開く素材だ。
いっそう軽量、高剛性で、製造時の廃棄物が少なく、特殊な特性を持たせて最適化したカーボンファイバー製パーツを素早く作り出せるこの新技術は、W1のアクティブ・フロント・ウィングに採用されている。
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