16代目クラウンの誕生を機に、各世代のカリスマ性を彩ってきた「はじめて」をあらためて紐解く特別連載企画。第6回は、1979年に誕生した第6世代「MS11#型」をご紹介しよう。トヨタ初のターボや、ツインカムといった新世代技術の「アイコン」が、その特別感をさらに高めていった(Motor Magazine Mook 「TOYOTA CROWN 13th」より)
EFI、ツインカムそしてターボ・・・パワートレーンに新たな潮流が
開発趣旨は、・ゆとりと信頼性をもたらす高品質な車作り、・静粛性にすぐれた、くつろぎの居住空間の確保、・省資源、省エネルギー時代への対応ということだ。
●【くるま問答】ガソリンの給油口は、なぜクルマによって右だったり左だったりするのか
ボディバリエーションは基本的に5代目と同じだ。4ドアセダンを筆頭に、2ドアと4ドアのハードトップ、そしてステーションワゴンを設定している。角型ヘッドランプを採用し、HT系2灯式のハロゲンランプだ。また、2ドアHTはツートーンのボディカラーとランドウトップをセットオプションで用意した。80年春に電動サンルーフを、6月にはムーンルーフを設定している。
エンジンは4タイプを揃えた。2Lエンジンが主役だが、デビュー時に頂点に立ったのは2759ccの5M-EU型直列6気筒SOHCだ。145ps/23.5kgmを発生し、軽快な走りを披露した。EUのアルファベットが示すように、電子制御燃料噴射装置のEFIが常識となり、メンテナンスフリー化にも拍車がかけられている。
ミッションは先代のクラウンで好評を博したオーバードライブ付き4速ATを拡大採用した。これ以降、4速ATが高級車には不可欠な要素となるのだ。
80年代に入るとエンジンに新しい潮流が押し寄せる。その第一弾はターボ戦略だ。80年秋、ターボ搭載車をカタログに加えた。これはトヨタブランドとしては初めての革新だ。M型SOHCエンジンにノックセンサー付きターボをドッキングした2LのM-TEU型は145ps/21.5kgmを発生する。ミッションは4速ATだけと割り切った。
さらに81年8月のマイナーチェンジでは2.8Lエンジンをソアラに搭載されていたDOHCの5M-GEU型に換装し、ポテンシャルを高めている。また、2Lの6気筒エンジンを慣れ親しんだM型から新開発の1G-EU型SOHCに変更した。
快適装備の電子制御化が進行。
快適な居住性を演出する豊富な装備類もポイントだ。クルーズ・コンピューターを新採用している。航続距離、到着予想時間、積算距離計、減算距離計、消費燃量、平均車速などを表示する。その他、デジタル表示電子チューナー・ラジオ、録音機能付きカセットステレオデッキ(ドルビーNR内蔵)、HTモデルのアラーム付き水晶3針時計、サイドデフロスター、メーター照度コントロール、置き針式フュエルゲージ、広角度水温ゲージなどを採用している。
シートも快適装備だ。リア・コンフォート・パワーシート、フロント・パワーシート、ランパーサポートの採用拡大、前後調整式フロントヘッドレスト、上下調整式リアヘッドレストの採用などがある。
振動・乗り心地に関しては、ストラット・バークッション、リア・サスのブッシュの特性が改良されている。よりソフトな乗り心地を得るため、リア・スプリングを柔らかくした分、リア・スタビライザーを装備するといった方式も採用されている。ショックアブソーバーには、低圧ガス入りの物が採用された。
ボールナット式のステアリングは、従来のものとその機構については変わりないが、パワーステアリングはその容量と特性が改良されている。また、パワ・ステ装着車のキャスター角を増大し、応答性を改善している。この他、アジャスト範囲が85Mmというチルト・ステアリングが採用された。
その後、MS110型クラウンは、80年3月には、2/4ドアハードトップに電動式サンルーフ仕様の設定、6月にムーンルーフ(電動式)をハードトップ全車にオプション設定するなどの変更を受けている。
■トヨタ・クラウン4ドアHT2800ロイヤルサルーン(81年式) 主要諸元
●全長×全幅×全高:4860×1715×1410mm●ホイールベース:2690mm●車両重量:1500kg●エンジン:直6DOHC●総排気量:2759cc●最高出力:170ps/5600rpm●最大トルク:24.0gm/4400rpm●トランスミッション:4速AT●駆動方式:FR●当時の車両価格(税込):329.0万円
ご当時インプレダイジェスト──79年式クラウン4ドアセダン2800EFIロイヤルサルーン
6代目クラウンの熟成度の高さの証明!
ロイヤルサルーンのステータスシンボルは5M-EU型エンジンである。145ps/5000rpm、23.5kgm/4000rpmと、強力である。車重が1450kgであるから馬力荷重は10.3kg/ps、セダンとしては十分のパフォーマンス・レベルである。
ODを組み込んだ2.8L用ATは、従来のA42D型を5M-EU型へマッチさせるための小変更を加えたA43D型で、3速ATプラスODで実質4速ATとして使用できる。
0-400mは、セレクトレバーを操作し、Lレンジ55km/h、2レンジ105km/hでシフトアップを行ない、400m地点は3速ギア122km/hで通過し、ベストタイムが18.24秒、かなりの駿足である。最高速は3速ギアのまま引っ張り161.79km/hがベストである。
高速時の直進安定性の良さは印象強く、これはロイヤルサルーンのパワーステアリングが、速度感応型であること、そしてフロント・サスのキャスターが従来の25分から3度40分へと大幅に強められたことが寄与しているようだ。
また、低圧式ガスショックの採用もサスペンション機能向上に役立っている。ソフト・セッティングであるからコーナリングでのロールはかなり深まる。それでも従来よりロール速度が抑えられ、ロール終端でぐっとふみとどまる感じがでており、これは限界コーナリング性能を高めるのに役立っている。また、急激な車線変更での立ち直りもかなり高められている感じである。
防音振動対策が完全であり遮音が徹底しているということであろうか。100km/h走行で最も耳に大きく聞こえる音は、フロアから僅かに上がってくるロードノイズ、風切り音も比較的角張ったボディスタイルに拘わらず極小さく抑えられている。
走りを通じて、あらゆる速度域で静粛さを保ち、この点では少なくともベンツ450あるいはBMW3クラスを凄ぐと表現してもオーバーではあるまい。
コンプライアンスも十分であるし、低圧式ガスショックのマッチングが非常に良く、バネ上が重いこともあって、ロイヤルサルーンの乗員は、乗り心地に不満を覚えることはまずあり得ない。(望月 修)
■トヨタ・クラウン4ドアセダン2800EFIロイヤルサルーン(79年式) 主要諸元
●全長×全幅×全高:4860×1715×1435mm●ホイールベース:2690mm●車両重量:1490kg●エンジン:直6SOHC●総排気量:2759cc●最高出力:145ps/5000rpm●最大トルク:23.5gm/4000rpm●トランスミッション:4速AT●駆動方式:FR●当時の車両価格(税込):269.2万円
ご当時インプレダイジェスト──81年式クラウン4ドアHT スーパーサルーンターボ
ウルトラサイレントなターボの世界
クラウン・ターボは現在、トヨタ唯一のターボカーである。日産ターボのワイドラインアップに対抗して、ターボ戦線に割り込んできただけに、並々ならぬ力量の持ち主だ。
その特徴は、ストリートターボに徹し、幅広いユーザー層に何の違和感もなく溶け込もうという狙いで企画されている。
エンジンは基本的には、従来のM-EU型にターボチャージャーを加えたものであるが、吸気ポートをスワール型とし、低回転時の燃焼効率を高め、またツインノックセンサーを採用して、圧縮比を7.6対1の高めで低回転トルクの落ち込みを防ぐなど、ターボエンジンに見受けられるスロットル・レスポンスの鈍化、ブーストが上がりきらない間の低トルク化を解消すべく工夫されている。
その結果、クラウン・ターボ用のM-TEU型エンジンは、最高出力145ps/5600rpm、最大トルク21.5kgm/3000rpmと、マキシマムもさることながら、低回転トルク型の出力特性を確保している。
クラウン・ターボは、OD付き4速AT仕様のみが用意されており、当初からターボエンジンとATとの相性の良さをフルに活用すべく設計された車である。
2LクラスAT車としては、走りは活発で、0-400mで18秒40、最高速度165.83km/hをマークした。このような限界性能よりも、過渡的な特性のシャープさが印象に残り、常用速度域におけるレスボンスは水準を抜いている。いわば、ドライバビリティに関しては言うことのないターボカーである。
100km/h時63ホンという静けさは、仕上げの良さを象徴している。(望月 修)
■トヨタ・クラウン4ドアHT スーパーサルーンターボS(81年式) 主要諸元
●全長×全幅×全高:4860×1690×1435mm●ホイールベース:2690mm●車両重量:1410kg●エンジン:直6SOHCターボ●総排気量:1988cc●最高出力:145ps/5600rpm●最大トルク:21.5gm/3000rpm●トランスミッション:4速AT●駆動方式:FR●当時の車両価格(税込):245.1万円
オマケ情報──第6世代クラウンが「走った」時代
■1979年(昭和54年)の出来事
第5回先進国首脳会議・東京サミット開催。国公立大学、初めての共通一次学力試験実施。第2次石油ショック。省エネルック登場。大阪・三菱北畠支店に猟銃強盗、籠城。ウォークマン発売。インベーダーゲーム流行。第1国東京国際女子マラソン開催。ソ連アフガニスタン侵攻。韓国、朴大統領暗殺。東名・日本坂トンネル火災事故。束京23区で自動車電話サービス開始。TBS「3年B組金八先生」放映。元号法政化。
■1980年(昭和55年)の出来事
ポ一ル・マッカートニー、大麻所持で成田で逮捕。山口百恵婚約発表。10月にラストコンサート開催。1億円入り風呂敷包み。大平正芳首相急死。初の衆参両院同時選挙で自民党圧勝。モスクワ五輪ボイコット。イラン・イラク戦争勃発。静岡駅地下街でガス漏れによる大爆発事故。新宿駅西口で京王帝都バス放火事件発生。巨人・長島が監督辞任。王、野村も現役引退。12月8日、ジョン・レンノが凶弾に倒れる。牛丼の吉野屋倒産。
■1981年(昭和56年)の出来事
神戸でポートアイランド博覧会「ポートピア81」開催。ローマ法王ヨハネ・パウロ2世来日。オランダ人女子留学生殺害容疑でパリ大学日本人留学生逮捕。台湾で旅客機墜落事故。向田邦子さんら死亡。福井謙一ノーベル化学賞受賞。『FOCUS』創刊。東京地裁ロッキード公判で「蜂の一刺し」。アメリカ、スペースシャトルの打ち上げ成功。黒柳徹子『窓ぎわのトットちゃん』ベストセラー。つかこうへい『蒲田行進曲』直木賞受賞。クラブチャンピオン決定戦・トヨタカップ始まる。
■1982年(昭和57年)の出来事
ホテル・ニュージャパン火災。死傷者62名。日航機「逆噴射」で羽田沖に墜落。24人死亡。東北(大宮~盛岡間)/上越(大宮~新潟間)新幹線開業。「侵略」が「進出」に。中国、教科書検定を批判。アルゼンチンが英国領フォークランド諸島を占拠。フジテレビ『笑っていいとも!』スタート。岡本綾子、アメリカ公式ツアーに優勝。500円硬貨初登場。惑星直列。エアロビクスが流行。ソアラが'81~82日本カー・オブ・ザ・イヤーを獲得。トヨタ自工とトヨタ自版が合併し、トヨタ自動車発足。
※編集部註:掲載本文は1979年~のモーターマガジン誌から抜粋しています。技術的表現などは、当時の表記を優先しています。画像の一部(トヨタ博物館所蔵の黒いスーパーデラックス)は、写真:早川俊昭。
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