現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 乗ってわかったフォルクスワーゲンの8代目「ゴルフ」の○と×

ここから本文です

乗ってわかったフォルクスワーゲンの8代目「ゴルフ」の○と×

掲載 更新 23
乗ってわかったフォルクスワーゲンの8代目「ゴルフ」の○と×

 8代目にフルモデルチェンジをはたしたフォルクスワーゲン「ゴルフ」。いよいよ日本でも発売が開始された。シルエットこそ、ゴルフならではの見慣れた2BOX型フォルムをキープしているが、中身は全方位に渡って刷新されている。

機械として優れているか? ★★★★★ 5.0(★5つが満点)

アプリでタクシーを呼べる配車サービス「Uber Taxi」が東京でサービスを開始

 まず、注目したいのが、パワートレインが電動化されたこと。48Vテクノロジーの電力でエンジンをアシストするマイルドハイブリッド方式で、すべてのグレードに搭載されている。エンジンは排気量によって、2種類ある。1.0ℓ3気筒(最高出力110馬力、最大トルク20.4kgm)と、1.5ℓ4気筒(最高出力150馬力、最大トルク25.5kgm)。トランスミッションも全モデル7速DSG(ツインクラッチ式AT)に進化した。

 グレードは4種類あり、「ゴルフeTSI Active Basic」291万6000円(全国希望小売価格、税込み。以下同)、「ゴルフActive」312万5000円、「ゴルフStyle」370万5000円、「ゴルフR-Line」375万5000円。

 さっそく、1.0ℓ3気筒エンジンを搭載した「ゴルフActive」に乗って、東名高速道路と山道を走った。印象的なのは、スタータージェネレーターによるアシストの明確さだ。赤信号で停まったりしてアイドリングが停止する。信号が変わってエンジンが再始動して走り出す時や、一定速度で走行中に省燃費のためにエンジンを停止させている(コースティング機能)。

 そうした状況下で、新型「ゴルフ」では、状況に応じてキメ細かくエンジンを切ったり、掛けたりしているのだ。その再始動の時にブレーキ回生で作り出した電力を用いて再始動したり、エンジンの駆動をアシストするのに小型モーターとしても機能する48Vスタータージェネレーターが役目を果たすことになる。

 第一の目的は省エネだと前述したが、再始動のショックを低減させ、加速を補佐して滑らかにする働きもある。たった1.0ℓ3気筒とは思えないほど、高速道路では滑らかな加速を示して驚かされた。それにはもうひとつ理由があって、あまり変わり映えがしないように見えるボディーも、実は空力的に大幅な洗練が加えられていて、ボディー表面を流れる気流の滑らかさを示すCd(空気抵抗係数)値が、旧型の0.30から0.275へと向上している。その効能を大きく感じたのは東名高速道路に乗ってすぐの、風切り音の小ささだった。

 新採用の7速DSGも賢く、キメ細かく変速をマネージしていて、チカラ不足などまったく感じさせず、余裕すら示していた。少し前だったら、完全に高級車の走りっぷりである。1.5ℓ4気筒を搭載した「ゴルフStyle」になると、それらに加えて山道の上りでの鋭い加速が加わってくる。

 2世代前の「ゴルフGTI」で初めて装備された電子制御式ディファレンシャルロックXDSも「ゴルフActive」にも「ゴルフStyle」にも標準装備されていて、山道の上りでも前輪駆動の癖を消し去りながら、ハイペースで駆け上がっていくことに貢献している。48Vマイルドハイブリッド化、7速DSG、XDSなど走行性能について気になるところがどこにも認められなかった。

 新型「ゴルフ」のもうひとつの柱であるデジタルコクピット化も成功している。10.25インチのメーターパネル、10.0インチのインフォテインメントパネルに情報と操作系統が集約され、もちろん音声操作も可能。メーターパネルの画面設定に整理を要する点もあったが、設定で改められるはずだろう。見やすく、使いやすい。



 新しい運転支援機能「Travel Assist」のメーターパネルへの表示も革新的だ。高速道路で「Travel Assist」を走っていると、自らの車線の隣車線の様子まで映し出してくれる。それも、トラックや乗用車などを区別して模したイラストがメーターパネル中央に大きく表示される。運転支援機能の働いている様子をここまで大きく、リアルに表示できているクルマは、世界でもまだ限られている。新型「ゴルフ」を買うべき価値のひとつとなっている。

 そして、最も高く評価したいのは、このような革新的な運転支援機能のACC(アダプティブクルーズコントロール)やLKAS(レーンキープアシストシステム)などが、どのグレードでも標準で装着されている点だ。車両価格が新型「ゴルフ」の2倍や3倍もするような高級車の中でも、これらの運転支援機能がオプションでしか提供されていないクルマも未だに少なくないのだ。



 しかし、運転支援機能が事故の可能性を確実に低減させ、ドライバーの負担を減じるものであることが明らかになった時代なのだから、それを装着しないという選択肢はあり得ないと僕は考えている。

 その点でも、新型「ゴルフ」は一石を投じたし、そのメッセージは国内外の自動車メーカーやディーラーだけではなく、ユーザーにも確実に届くことだろう。他にも、LEDライトの採用やコネクティビティーなどについても一気に最新レベルのものを新型「ゴルフ」は装備してきた。その仕上がりも満点以上で、星を6つでも7つでも付けたいくらいだった。

商品として魅力的か? ★★★★ 4.0(★5つが満点)



 素晴らしい完成度を持っている新型「ゴルフ」だが、悩ましいのはグレード選びだ。最も安価な「ゴルフActive Basic」も“目玉商品”的なものではなく、前述の通り、運転支援機能はすべて装備されているし、1.0ℓ3気筒エンジンでも十分だ。20.9万円高くなる「ゴルフActive」との違いは、エアコンやライト類、パークディスタンスコントロールなど。節約しても、ガマンを強いられることにはならないと思う。

 違いが大きいのは「ゴルフActive」と「ゴルフStyle」だ。58万円の違いは、エンジン排気量、タイヤサイズ、サスペンションなどだけでなく、LEDヘッドライトがターンシグナルやコーナリングライト付きになり、エアコンが独立調整式になる。シートヒーターやステアリングヒートも標準装備。スライディングループやHarman&Kardon製オーディオシステムもオプションで選択可能。



 最も大きな違いはシートで、スポーツコンフォートタイプとなり、ブラックの他に人工スエード地のグレーも選べる。「ゴルフActive」のシートはブラックのファブリック地のみで、ブラックは車内が暗くなるだけでなく、タッチもホールドも良くない。僕だったら、文句なく「ゴルフStyle」を選ぶ。



 悩ましいけれども、非常に誠実な価格設定だと思う。電動化や自動化、コネクティビティーなどの分野は日進月歩の勢いで進化しているが、新型「ゴルフ」はそれらに於いて最新レベルものものを組み込んできた。だから、いま購入しても、5年や10年では機能において古さを感じることはないはずだ。間違いのない買い物になるだろう。

 ただ、その完成度が非常に高かったが故に感じたのは、45年前に初代「ゴルフ」がデビューした時のような“新しさ”の欠如だった。あらゆる部分が最新で仕上がりも申し分ないのだが、電動化にしても自動化にしても、それらを課題として設定したのは「ゴルフ」ではないのだ。他の誰かが設定した課題に対して、「ゴルフ」は優れた更新を続けてきているが、45年前にコンパクトカーの基準を一夜にして塗り替えてしまった新しさの提案はない。

「機械として優秀か?」という項目には、星を6つでも7つでもつけたいのだが、「商品として魅力的か?」という項目については、星4つである理由はそれなのだ。もしかすると、ヨーロッパではすでに販売されているEV(電気自動車)の「ID.3」や「ID.4」などが、フォルクスワーゲン流の次世代のコンパクトカーに対する提案なのかもしれない。45年前の初代「ゴルフ」がそうであったような提案がなされているのかもしれない。

◼︎関連情報
https://sp.volkswagen.co.jp/the-new-golf/

文/金子浩久(モータージャーナリスト)

こんな記事も読まれています

名古屋~浜松「無料で信号ゼロ」秒読み段階!? 国道23号バイパス「名豊道路」全通は”1年以内” 東名の南側「完全スムーズ化」まであとわずか
名古屋~浜松「無料で信号ゼロ」秒読み段階!? 国道23号バイパス「名豊道路」全通は”1年以内” 東名の南側「完全スムーズ化」まであとわずか
くるまのニュース
ランボルギーニの電動スーパーカー『レヴエルト』、ソナス・ファベールの専用ハイエンドオーディオ設定へ
ランボルギーニの電動スーパーカー『レヴエルト』、ソナス・ファベールの専用ハイエンドオーディオ設定へ
レスポンス
旭化成、自動車業界に「SustainaStyle」提案へ…人とくるまのテクノロジー展 2024
旭化成、自動車業界に「SustainaStyle」提案へ…人とくるまのテクノロジー展 2024
レスポンス
いまタイで高級ミニバン戦争が激化! 鉄壁のアルファード&レクサスLMに挑む中国勢たち
いまタイで高級ミニバン戦争が激化! 鉄壁のアルファード&レクサスLMに挑む中国勢たち
WEB CARTOP
ホンダ「レブル250」がユーザーフレンドリーなアドベンチャーモデルに変身! コンプリートカスタム「VESGRIDE-hygge」受注開始
ホンダ「レブル250」がユーザーフレンドリーなアドベンチャーモデルに変身! コンプリートカスタム「VESGRIDE-hygge」受注開始
バイクのニュース
[カーオーディオ 逸品探究]18年の歴史に幕、「アークオーディオ」の定番上級アンプ『SE』の魅力を振り返る!
[カーオーディオ 逸品探究]18年の歴史に幕、「アークオーディオ」の定番上級アンプ『SE』の魅力を振り返る!
レスポンス
アルファードとの628万円の価格差はどこにある? レクサスLM開発者に6座仕様「バージョン L」の「推しポイント」を聞いてみた!
アルファードとの628万円の価格差はどこにある? レクサスLM開発者に6座仕様「バージョン L」の「推しポイント」を聞いてみた!
ベストカーWeb
便利すぎるだろマジで!! [ランドクルーザー]にも採用切望!! フォードに超絶羨ましい機能があった
便利すぎるだろマジで!! [ランドクルーザー]にも採用切望!! フォードに超絶羨ましい機能があった
ベストカーWeb
2代目メルセデス・ベンツCLSは、強く逞しく、大胆に変身していた【10年ひと昔の新車】
2代目メルセデス・ベンツCLSは、強く逞しく、大胆に変身していた【10年ひと昔の新車】
Webモーターマガジン
竹岡圭 K&コンパクトカー【ヒットの真相】日産キックス「e-POWER+4WD+プロパイロットで安全快適ドライブ」(2024年6月号掲載)
竹岡圭 K&コンパクトカー【ヒットの真相】日産キックス「e-POWER+4WD+プロパイロットで安全快適ドライブ」(2024年6月号掲載)
カー・アンド・ドライバー
全長4mの“小さな高級車” アウディ「A1スポーツバック」に限定車登場! オンライン販売限定で150台
全長4mの“小さな高級車” アウディ「A1スポーツバック」に限定車登場! オンライン販売限定で150台
VAGUE
ランドローバーが「DISCOVERY」2025年モデルの受注を開始、ディーゼルのみの4グレード展開に
ランドローバーが「DISCOVERY」2025年モデルの受注を開始、ディーゼルのみの4グレード展開に
@DIME
トヨタのサルーンらしい乗り味はかなり上質……イケメンな新型[カムリ]に試乗してわかった「日本導入すべきワケ」 
トヨタのサルーンらしい乗り味はかなり上質……イケメンな新型[カムリ]に試乗してわかった「日本導入すべきワケ」 
ベストカーWeb
カワサキ「Ninja 400」【1分で読める 国内メーカーのバイク紹介 2024年現行モデル】
カワサキ「Ninja 400」【1分で読める 国内メーカーのバイク紹介 2024年現行モデル】
webオートバイ
可憐な[カレン]を知っているか! ST200系セリカの兄弟車は端正なフロントマスクのノッチバッククーペだった!!
可憐な[カレン]を知っているか! ST200系セリカの兄弟車は端正なフロントマスクのノッチバッククーペだった!!
ベストカーWeb
しっかり機能でもシンプルで使いやすい! トヨタ ハイエースがベースのキャンパー
しっかり機能でもシンプルで使いやすい! トヨタ ハイエースがベースのキャンパー
月刊自家用車WEB
さすがにやりすぎ? バイデン政権が「中国製EV」に100%関税を課す理由
さすがにやりすぎ? バイデン政権が「中国製EV」に100%関税を課す理由
Merkmal
WR-V買う人&買った人必見! ホンダ新型WR-Vの人気アクセサリーランキングが判明したぜ!
WR-V買う人&買った人必見! ホンダ新型WR-Vの人気アクセサリーランキングが判明したぜ!
ベストカーWeb

みんなのコメント

23件
  • ゴルフ7乗りです。もうすぐ2回目の車検なんで迷ってます。試乗した感じではアクティブで充分だけど内装が地味すぎるかなぁ。ボディカラーも全体的にコレッ❗️ってのが無い…うーむ…車検通すかな❓(笑)
  • まあ、国産のこのクラスのライバルと思しきモデルも相対的に価格が上がってきているから、同じような装備内容で比較すると今回のゴルフも「お買い得」に感じるかも。乗り出し300~400万がボリュームゾーンだから、国産SUVに高い金利払いながら乗るならゴルフという選択もありかな、と思うね。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

691.2792.8万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

20.0838.0万円

中古車を検索
ゴルフ Rの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

691.2792.8万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

20.0838.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離(km)

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村