1974年にデビュー以来、コンパクトFF車のベンチマークであり続けるフォルクスワーゲン ゴルフ。日本でも間もなく8代目となる新型が発表されるが、その前に初代から現行型までのゴルフを振り返ってみたい。今回は、4代目ゴルフのデザインについて語ろう。
ゴルフ4のデザインに影響を与えたのはアウディだった
ゴルフ4のデザインには、ルネッサンスといってもよい新風が吹き込まれた。それをもたらしたのは、やはり「アウディ」であった。長年アウディのデザインを率いたハルトムート・ヴァルクスが、1993年にフォルクスワーゲンのデザインのトップに就任し、ゴルフ4のスタイリングを統括した。ヴァルクスは、技術部門を率いたフェルディナント・ピエヒとともに、アウディ ブランドの革新をデザイン部門で実践してきた人物だった。
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ゴルフ4の注目点は、大きく2つ挙げられる。ひとつは、「バウハウス的」とか「ドイツモダニズム」と言われるような、非常にシンプルで虚飾を排したデザインを追求したこと。そしてもうひとつは、ゴルフのルーツである初代ゴルフのデザインを再現しようとしたことである。
ドイツモダニズムは、ドイツ工業デザインと言い換えることもできるが、ヴァルクスはゴルフ4をデザインするにあたって、ドイツ工業デザインの伝統を再現することをテーマにしたといわれる。ゴルフ4に限らず、この頃、フォルクスワーゲンとアウディでは、ドイツモダニズム的デザインを追求していたのだった。時代背景としては、1990年の歴史的な東西ドイツの「再統一」があり、ドイツが盛り上がっていた。ドイツデザインのモダニズム運動は工業化(産業革命)の進展にともなって盛んになったもので、1919年から1933年まで存在した教育機関のバウハウスは、その象徴的存在だった。
ゴルフ4は、極端に虚飾を排した、シンプルな四角が目立つデザインがなされた。こういったデザインが一般的に「バウハウス的」と呼ばれるわけである。
また、ゴルフ4をベースとしてニュービートルがつくられており、やはりシンプルでこだわったデザインだった。だが、これは1930年代のビートルを再現しており、もちろんビートルも往年のドイツ工業デザインの傑作なのだが、丸いボディだった。それに対してゴルフ4は、1970年代のゴルフ1を再現しており、そのため四角かった。ゴルフ1は、イタリア人であるジウジアーロの作だが、やはりバウハウス的というべき、シンプルに徹した四角いデザインが特徴だった。
ゴルフ1を模範として生まれたゴルフ4
ゴルフ4が開発された当時、すでにゴルフ1はカリスマ的存在になっていた。フォルクスワーゲンのブランド強化のためには、偉大な元祖ビートルをフィーチャーするのは有効だけれども、ゴルフ4は、自身にとってより近い存在のもうひとつのルーツであるゴルフ1を再現した。今やゴルフも、ビートルの後を継いでビッグネームのクルマになっていたのだった。もっとも、次のゴルフ5ではビートルのモチーフを取り入れて、物議をかもすことになるのだが・・・。
ゴルフ4は、ゴルフ1を模範としたうえに、さらに確信犯的にバウハウス的なデザインを徹底した。歴代ゴルフは、基本的に毎回正常進化型のモデルチェンジをして、先代モデルを継承しつつ進化させており、ゴルフ4でもゴルフ3との連続性を残してはいるのだが、ゴルフ1を模範にしたことが目立っている。ゴルフ3は空力を追求して前後を絞った樽型形状が目立っており、ゴルフ4はさらに丸くなっても良さそうなところだが、逆に四角さが目立っていた。
またゴルフ3では、ボディサイドのプレスラインが多かったが、ゴルフ4は大胆にもそれを廃止して、まったくのフラットで平面的なボディにした。フラットさがとくに目立つのはボディサイドで、ゴルフ1のデザインのオマージュである前後のホイールアーチだけが出っ張っている。さらにそのフラットなボディサイドの、リアクウォーターパネル部分のパネルの継ぎ目のラインが見どころであり、ラインを整理して、見事な平行な「く」の字型にデザインされていた。
これもゴルフ1の意匠の継承なのだが、それを現代的に昇華させてデザインしたのだ。こういったデザインがさまになるのは、ボディパネル同士の隙間が狭く、ボディの工作精度が高いからこそでもあった。
原理主義的ともいえるほどこだわってデザインされたゴルフ4だが、ただ、実際には一見オーソドックスにも見える。ひとつには、結果として2BOXカーの最大公約数的な形になったからだろう。またゴルフ4が生産されていた頃(1997~2003年)、日本などでは車高の高いミニバン的なクルマが増えて、ホンダのフィットなど新しいモノフォルム的ボディ形状がトレンドになっており、2BOXスタイルを維持するゴルフ4は、保守的に感じられることがあった。
けれども、今あらためてゴルフ4を前にしてじっくり見てみれば、その精緻でクリーンなボディが、やはり非凡なこだわりの作だったことがよくわかるだろう。(文:武田 隆)
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ただこのコストで高級感を出すためにソフトタッチのプラスチックをハードプラスチックの上に薄く貼り付ける作りだったから友人の車も2、3年するとこれが剥がれてきてボロボロになってた。