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単に価格勝負で日本市場を狙っていない! BYDの侮れないブランド戦略とは

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単に価格勝負で日本市場を狙っていない! BYDの侮れないブランド戦略とは

 この記事をまとめると

■2024年3月1日(金)に「BYDオートジャパン2024戦略発表会」が行われた

ホンダと日産がパートナーシップを検討の衝撃ニュース! アジア市場に見える両社の厳しい立ち位置

■安価なクルマを投入するとブランドイメージが下がる傾向にある

■BEVを普及させる鍵は「シェアリング」にある

 BYDが2024年の戦略発表会を実施

 中国BYDオート(比亜迪汽車)は、2024年3月1日に都内にて「BYDオートジャパン2024戦略発表会」を行った。クロスオーバーSUVスタイルBEV(バッテリー電気自動車)となる、ATTO3(アット3)のアップデート版発表のほか、今後の国内を中心としたマーケティング戦略についての発表が行われた。

 筆者が実際に日本及び、タイやインドネシアといった東南アジア地域で見聞きした限りでは、BYDはかなり慎重に市場進出している印象を受けている。東南アジアにおいてはすでにBYD以外の中国系メーカーもBEVを中心としたラインアップで市場進出しているのだが……。

 たとえば、インドネシアでは2023年あたりから、ウーリン(上海通用五菱汽車)のマイクロBEVとなる「エアEV」が大ブレイクしていたのだが、すでに現状では失速傾向が目立っている。タイではNETA(ネタ/哪叱汽車)のローコストBEV(スペックを制限することで割安感を強めたBEV)となる「ネタV」がヒットしているが、インドネシアでのウーリン・エアEV同様に、ある意味イロモノ的立ち位置も目立ってしまい、人気は長続きしないのではないかと筆者は考えている。

 このように、とくに割安感が強く、そしてインパクトもあるため一時的に突出して売れてしまうモデルがあると、ブランド全体にもその“色”がついてしまい、なかなか身動きがとれなくなってしまうことが多いのである。

 つまり、インパクトがありすぎるモデルがあると、その印象がブランド全体にも浸透してしまうリスクが高い。エアEVもネタVも直接は訴求していないものの、結果的には買い求めやすい「割安価格」とか「手ごろ」というのも注目されているのは否定できない。

 タイでは実際に中国メーカー同士でのBEVの値引き合戦も目立っているが、BYDはそんなタイだけではなくインドネシアでも手厚い保証サービスなどを強調し、直接対決は避けているようだが、その傾向は日本市場でも当然変わらないと見ていいだろう。

 BEVの普及に有効なのはシェアリング

 今回の発表会では、メディアからBYDのローコストBEVともいえる「シーガル」の国内導入についての質問が出ていたが、日本だけではなく中国以外のマーケットへのシーガルの投入は慎重な姿勢を見せているように見える。これは、東南アジア市場ではより強い傾向があり、新車購入時に再販価値を購入対象車選びのポイントとして重視する傾向にあることに注目しているようである。

 ICE(内燃機関)車より技術進歩の早いBEVの再販価値は残念ながらそれほど期待できないのが現状。再販価値を維持するにはブランドステイタスの確立というものが大切であり、単に割安イメージの強いモデルを量販させてブランド認知をはかるという手段もあるが、これは認知が広がるだけでステイタスは上がらない。

「再販価値を意識していますよ」というアピールには、手厚い保証の設定は有効なのである。今回の発表会にて、BYDは日本国内で認定中古車の展開も進めていくとしていたが、それも再販価値維持にとっては大切な施策といっていいだろう。

 さらに、今回の発表会では、ディーラーネットワークの拡充予定などにも触れていたが、その次に期待したいのはBYDならではの「ファイナンスサービス」の充実であろう。すでに日本の「4年縛り」となる政府補助金に対応した(補助金交付を受けると4年間名義変更できない)支払プランの残価設定ローンは用意されている。

 筆者は諸外国のようにローンやリースでの新車購入が日本でも当たり前にならないとBEVの普及はなかなか進まないものと考えており、これは現金一括払いがまだまだ多い日本特有の事情といってもいいだろう。欧州のようにかなりエキセントリックに「BEVしか乗ってはダメ」というつもりはないが、日本の消費者でもBEVに興味を持っている人は多く、選択肢が少ないことに不満があるといった声も聞く。しかも、すでにBEVを購入して自宅に充電設備を設置すれば、よほどの理由がない限りはICE車に戻ることは考えにくいともいえる。

 メーカー系個人向けカーリースが、「サブスクリプション」というアプローチでプロモーションしているようだが、ある人から「BEVはシェアリングでこそ普及していく」と聞いたことがある。所有して乗るにしても、リースや残価設定ローンの活用で「サブスク感覚」で乗り、月々の支払額に変化なく(もしくは限りなく変化なく)短期間で入れ替えながら乗り続けるというのが、ICE車よりはどうしても同クラスでは割高となってしまうBEVの理想的な乗り方といえるかもしれない。

 日本はまだまだ「金利負担がいやだ」などの理由で現金一括払いというものが根強く残っている。BYDがこの消費者感覚を変えることができるファイナンスプログラムを用意できれば、BYD車の販売にも弾みがつくのではないかと考えている。

 ちなみに残価設定ローンという概念を日本に持ち込んだのは外資ブランドである。リースや残価設定ローンでメリットを高めるのには、再販価値を高めるのは必至(そうすれば月々の支払いを抑えることができる)。日本車が世界で引っ張りだこな理由も再販価値の高さがあるのは間違いない。

 BYDの海外展開はブランドステイタス構築を優先しているように見えてならないし、それが正しい判断だと筆者は考えている。

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みんなのコメント

98件
  • twi********
    本国で160万円のPHVを発売したよね。
    ハイブリッドは高度な技術が必要だから簡単には真似できないという論拠が崩れた。BEVは200万円で航続距離500キロ。更に安いモデルも開発している。
    BYDは古くから電池メーカーとして技術を蓄積してきた歴史がある。
    20世紀はガソリンエンジンの時代だったが、21世紀は電池を制する者が自動車産業を制する時代になる。EVは使い物にならないとか中国EVなど品質で取るに足らないとか言っていると、半導体や液晶ディスプレイ、携帯電話の二の舞になるよ。
  • bla********
    日本国内ではトヨタの圧力がかかっているんでしょう。でも世界のBEVへの置き換えは待ってくれません。日本人がまだまだエンジンだーと舟漕いでいる間にBYDと Teslaが日本以外の外堀を埋めていきます。数年で日本車はハイブリッドやプラグインハイブリッドすら売れなくなります。日本にしか作れない〜と言ってましたが、インドネシア、タイでもBYDがハイブリッドやプラグインハイブリッドも販売してますよ。もちろんが主ですが。日産も中国で3割減産を発表しました。世界1の自動車王国、中国で売れなくなったらあとは坂道を転げ落ちるだけですね。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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