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変速と操舵に心が躍る! ブリストル406 S(2) 運命が決まっていたプロトタイプ・クーペ

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変速と操舵に心が躍る! ブリストル406 S(2) 運命が決まっていたプロトタイプ・クーペ

自社工場でボディが試作された406 S

ブリストル406の英国価格は4244ポンドで、同時期のベントレー コンチネンタルの約半額。秀でた製造品質と、時速100マイル(約161km/h)以上の最高速度がうたわれた。

【画像】ブランド最後で究極の6気筒クーペ 406 S 個性的なブリストル 同時期の英国車たち 全146枚

全長は4286mmで、全幅は1727mm。2.2Lエンジンのサルーンとしては大柄といえたが、トルクが太く、動力性能に不足はなかった。

1961年までの約3年間に171台が製造され、イタリアン・カロッツェリアのザガート社製ボディを載せた仕様も6台提供されている。今回ご紹介する1台は、自社工場でボディが試作された406 S。ブランドの究極の1台といえる、スポーティな2シーターだ。

このスタイリングを手掛けたのも、通常の406と同じく社内デザイナーのダドリー・ホッブス氏。1953年に発表された、ブリストル404の造形をベースに、考案されたといわれる。こちらの方が全長は長く、プロポーションは整っていると思う。

自社工場にはボディの製造施設がなく、当時のブリストルは、1モデルのみの提供に制限せざるをえなかった。406 Sの未来は、プロトタイプの完成前から決まっていたようなものだった。

ふくよかな面構成を切り裂くように、テールフィンが突き出ているが、これは空力特性を意識したものだった。フロントグリルの処理は、通常の406と共通。本来はバンパーが備わったが、現在までに失われたようだ。

ブリストル・カーズを買収する人物が購入

フロントフェンダー後方は開閉でき、バッテリーとスペアタイヤが収まっている。ルーフサイドには、ウインカーが載る。ホイールベースは2743mmと長く、ワットリンケージをアクスルに追加することで、初期の406の課題だった安定性にも対応済みだ。

エンジンは、ザガート・ボディの406にも採用された、2.2Lエンジンのスポーツ仕様。BBシリーズと呼ばれるユニットで、スポーツカムが組まれ、131psの最高出力を生む。キャブレターとディストリビューター、圧縮比なども改良を受けている。

シャシー番号はSP1。406 CHUのナンバーで登録されると、1958年6月に、後にブリストル・カーズを買収するアンソニー・クルック氏が購入。1961年まで、普段使いのクルマとして活躍した。

ボディはケンブリッジ・グレーに塗られ、インテリアはトカゲのグリーン・レザー。約11万kmを走ったところで、退役軍人へ転売された。彼は更に、1960年代半ばまでに8万km走行距離を伸ばしている。

その後、オリジナルの2.2Lエンジンはリビルドを受け、プロトタイプの405 サルーンへ。406 Sは、1990年代に入りブリストル・カーズによって買い戻されるが、部品が3か所に点在するというバラバラの状態だった。

歴史的に貴重な1台としてレストアされると、コレクターのサイモン・ドレイパー氏が1994年に購入。2000年半ばに手放されている。現在はブリストルを得意とするカーディーラー、SLJハケット社が管理している。

ボディ別体の構造としては高い洗練度

燃料系とブレーキは、最近リビルドを受けたばかり。タイヤとエグゾーストは新品に交換され、クロームメッキのトリム類も新調された。しかし、オリジナルのバンパーまでは再現されなかった。

ドアを開くと、明るい車内が迎えてくれる。自然な運転姿勢がブリストルらしい。ダッシュボードに並ぶ、メーターの配置も同様だ。

フロントシートはリクライニングでき、背もたれにはショルダーサポートも備わる。ドライバーが快適に運転できることを、初めから充分考慮された設計にある。

キーを回しボタンを押すと、シャシーレール間の高い位置へ収まった、2.2L 6気筒エンジンが目覚める。アクセルレスポンスは軽快で、サウンドはドライ。スロットルリンケージはボールジョイントで、繊細な操作に応える。

キャブレターは、3連ソレックス。シフトダウン時に吹かすと、キビキビと正確に回転数が上昇する。2速で5000rpmまで引っ張れば、100km/hに届く。3速では、140km/h近くに達する。

エンジンのサウンドは、メカニカルで心地良い。バルブギアと吸気のノイズが重なり、特有のハーモニーを生む。オーバードライブに入れて、少し静かな走りも可能だ。

乗り心地は硬め。ボディとシャシーが別体の構造としては、珍しいほど締まりがある。路面から強めの衝撃が加わっても、ガタガタと振動せず洗練度は高い。

変速と操舵に心が躍る 究極の6気筒ブリストル

変速と操舵に心が躍る。ステアリングホイールは軽く回せ、ロックトゥロックは3回転で、レシオもちょうどいい。低速域でも重すぎず、直進時はピシッとしている。シフトレバーの位置も良く、素早く次のギアを選択できる。

コーナリングはニュートラル。正確な操縦性で、ドライバーの意志へ報いてくれる。現代のカーブやアスファルトでは、安定性や落ち着きを失うことはない。至って活発だ。

ショートホイールベースのザガート406を超えないとしても、この406 Sは、究極で最後の6気筒ブリストルだといっていい。404より美しいし、通常の406より活き活きとしている。SLJハケット社は、こんな素敵なクーペの次期オーナーを募集中らしい。

協力:SLJハケット社

ブリストル406(1958~1961年/英国仕様)のスペック

英国価格:4244ポンド(新車時)/29万5000ポンド(約5664万円/現在)以下
生産数:171 台(406合計)
全長:4286mm
全幅:1727mm
全高:1397mm
最高速度:201km/h(予想)
0-96km/h加速:−秒
燃費:9.2-10.6km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:1041kg
パワートレイン:直列6気筒2216cc 自然吸気OHV
使用燃料:ガソリン
最高出力:131ps/5750rpm
最大トルク:18.2kg-m/3000rpm
トランスミッション:4速マニュアル(後輪駆動)

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