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【アクセラやヴィッツが消滅の危機!?】 「日本向け車名」が消えゆく思惑と事情

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【アクセラやヴィッツが消滅の危機!?】 「日本向け車名」が消えゆく思惑と事情

 マツダのアクセラが、2019年中にフルモデルチェンジを受ける。日本では3代に渡ってこの車名で親しまれてきたが、新型では車名を海外と同じ「マツダ 3」に変える可能性があるといわれている。トヨタのヴィッツも、次期型は海外で使われる「ヤリス」になる噂が流れている。

 同様の例にスバル レガシィアウトバックがあった。1995年の発売時点ではレガシィ“グランドワゴン”と呼ばれ、次はレガシィ“ランカスター”に変わり、2003年のフルモデルチェンジで今と同じレガシィ“アウトバック”になっている。

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 「アウトバック」には未開拓の地域といった意味があり、走破力の高い車に相応しいが、日本的には「アウト」と「バック」は語感が悪い。そこで、当初は別の車名を使い、時期を見計らって海外と共通化した。

 日本のユーザーとしては、グランドワゴンとかランカスターでも構わないが、メーカーには車名を世界で共通化したい思いがあるようだ。その背景には様々な思惑と事情がある。

文:渡辺陽一郎


写真:MAZDA、編集部、TOYOTA

日本名廃止に共通する3つの思惑と事情

 マツダがアクセラを「マツダ 3」に、トヨタがヴィッツを「ヤリス」に変えるとすれば、その背景には、車作りの刷新を訴える目的もあるだろう。アクセラ、ヴィッツとも次期型ではプラットフォームを含めて刷新するからだ。

 特に現行ヴィッツは2010年の発売だから、現時点で8年以上を経過しており、デザインから走行性能、乗り心地まで古さが目立つ。今のイメージから離れ、新たな車種を構築するねらいもあるだろう。

 レガシィランカスターも、アウトバックを名乗るようになったBP型から、ツーリングワゴンとB4(セダン)を3ナンバー車にしている。レガシィシリーズの転換期でもあった。

 このほかにも、車作りの刷新を表現する目的で車名を変えることは多い。かつてのセドリック&グロリアは「フーガ」になり、コロナは「コロナプレミオ」を経て「プレミオ」、パレットは「スペーシア」に変わった。先に挙げた「アクセラ」もファミリアの後継で、「ヴィッツ」はスターレットに代わって発売されている。

 車名を変えたクルマの大半に共通するのは、売れ行きが伸び悩んでいたことだ。好調に売れるN-BOX、ノート、アクアなどは、フルモデルチェンジを受けても車名は変えないだろう。

 アクアは2011年の発売だから、ヴィッツと1年しか違わないが、販売は好調だ。トヨタの全店が扱うこともあり、2018年(暦年)にはヴィッツの1.5倍売れた。アクアは北米では「プリウスC」の名称で売られるが、日本でこれに変える必要はない。

 以上のように、フルモデルチェンジに際して日本名を海外名称に変える場合は、以下の事情や思惑がある。

1.日本国内の売れ行きが伸び悩んでいる


2.新型ではプラットフォームやメカニズムを大幅に変更する


3.海外の人気に乗じて、日本国内の売れ行きも伸ばしたい

 上記のほか、もっと単純に「海外の名前が格好良く思える」こともあるだろう。アクセラやヴィッツは日本車だが、マツダ3になると、フォルクスワーゲン(VW)ゴルフやプジョー308と競争しているイメージがある。

 ヤリスもVWゴルフやプジョー208がライバルだ。車名を海外と共通化すれば、国際感覚を身に付けたような錯覚がメーカー内に生じていることもあるだろう。

日本ではアルファベットや数字の車名は馴染みにくい!?

 車を大幅に作り変えるのだから、車名も海外と同じにして心機一転させたい気持ちは分かるが、「今までの車名は一体何だったのか」という疑問も生じる。また商品なのだから、地域の事情に合わせて名前を変えることも、大切な配慮といえるだろう。

 特に日本の場合、「マツダ 3」のような数字やアルファベットの車名は、馴染みにくく記憶にも残らない。もともと日本の自動車産業は、第二次世界大戦後の1950年代から1970年代にかけて、アメリカを見習って発展した経緯があるからだ。

 アメリカ車と同様、各車種に固有の名称を与えてきたから、欧州車のメルセデスベンツ A180とか、BMW 320iといった車名は分かりにくい。

 過去を振り返ると、アメリカ車は、ひとつのメーカーが数多くのブランドや車種をそろえた。いろいろなデザインやサイズの商品があると、「GM」「フォード」というだけでは車の姿が思い浮かばない。「マスタング」とか「カマロ」という固有の名称が必要だった。

 日本車も同じで品ぞろえが多く、「トヨタを買う、マツダを買う」ではなく「ヴィッツを買う、アクセラを買う」になる。

 ところが欧州メーカーは、今でこそ車種が増えたが、1970年代までは数が限られていた。

 例えばメルセデスベンツの場合、190シリーズの登場以前は、今のEクラスが「コンパクトメルセデス」と呼ばれた。車名は「200」、「250」といった排気量を示す数字だけだ(当時でも一部例外はあった)。

 Sクラスに相当するのは、280Sとか350SE(Eは燃料噴射装置装着車)という具合で末尾にSが付く。このほかコンパクトメルセデスのクーペは280CE、専用設計のスポーツカーは280SLなどと表記された。車種のバリエーションはこれだけだ。従って車種よりもメーカーのイメージが強く「メルセデスベンツを買う」と言われる。

 BMWやアウディも以前は車種数が限られ、ドイツのプレミアムブランドは数字とアルファベットの羅列で済んだ。レクサスはトヨタが展開するプレミアムブランドだが、ドイツ車をめざしているからLS500といった車名になる。

 この経緯を踏まえると、日本国内でアルファベットと数字で表記するのは、あまり筋が通らない。


 ただしマツダは「魂動デザイン+スカイアクティブ技術」の段階に入って車種を大幅に減らし、CX-5とかCX-8のような表記を行う。この流れだと、確かにアクセラをマツダ 3、アテンザをマツダ 6と呼ぶ方がスッキリするかも知れない。

「車名」はユーザーの思い出の中を走り続ける

 それでも一番重要なのは、当たり前の話だが「どのような車を作るか」になる。アクセラを「マツダ 3」、ヴィッツを「ヤリス」に変えたから、販売面で有利になることは一切ない。

 そして今までの車名を廃止すれば、そのユーザーは、自分の愛車がメーカーから見捨てられた気分になるかもしれない。

 たかが車名だが、名前は重要だ。メーカーは「車名の変更は、今までのお客様を裏切ることだ」という覚悟を持って行わねばならない。相当な車作りの刷新が求められる。

 すでに車の運転をやめたお年寄りが、朝刊を開いたとしよう。そこに広告が掲載される新型車の車名は、そのお年寄りにとって、とても懐かしいものだった。

 「そういえばあの車を買った時は、2人目の子供が生まれて…」、思い出の扉が開かれ、懐かしい記憶が次々と蘇る。

 車の名前は、かつてその車種を愛した人の思い出を引き出す鍵になるのだ。

 トヨタの豊田章男社長は「数ある工業製品の中で『愛』がつくのはクルマだけ」とコメントした。それが本当なら、クルマの名前は簡単には変えられない。

 愛車は手放した後でも、ユーザーの思い出のなかを走り続ける。車名を変えれば、愛車の思い出まで、閉ざされてしまうかも知れない……。

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