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ホンダ初の世界GPレーサー「RC142」 手探りで作り上げたマシンが1959年の世界最高峰バイクレースに挑戦!!

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ホンダ初の世界GPレーサー「RC142」 手探りで作り上げたマシンが1959年の世界最高峰バイクレースに挑戦!!

 日本のバイクメーカーで初めてロードレース世界選手権(WGP)に挑戦したバイクが、ホンダ「RC142」です。現在も続くMotoGPでのホンダの活躍は、1959年の「マン島ツーリストトロフィーレース」(以下、マン島TTレース)への初参戦から始まります。

 マン島はイギリスとアイルランドの間のアイリッシュ海にある島で、淡路島と同じくらいの大きさです。マン島TTレースは1907年の初開催以来、100年以上も続いている世界で最も歴史のあるバイクレースです。特徴的なのはレース専用のサーキットを走るのではなく、レース期間中だけ島内の公道を閉鎖してロードレースの周回コースとしていることです。

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 1949年のWGP開始とともに、マン島TTレースはシリーズ戦のイギリスラウンドとして組み込まれました。1976年を最後にWGPからは外れましたが、現在でも公道を使用した独自のレースとして続いています。

 ホンダの創業者である本田宗一郎は、1955年3月に「ホンダと日本の工業製品が世界水準にあることを世界に向けて宣伝する」と、バイクレースの世界最高峰であるマン島TTレースへの参戦を宣言しました。

 1952年に当時の金額で4億5000万円もの工作機械を海外から輸入し、精密な部品製造も可能となっていました。WGPであるマン島TTレースへの参戦宣言文には、「絶対の自信を持てる生産体制も完備した今、まさに好機至る!」と書かれています。

 その時期は日本国内でも2輪モータースポーツの機運が高まり、浅間などで全国規模のレースが行なわれ、ホンダも参戦。通称「浅間レース」には市販車を改造して出場し、経験とノウハウを蓄積します。そしてマン島TTレースに向け、いよいよレース専用マシンを製作します。

 市販車生産では日本一の企業となっていても、WGP用のレースマシン作りは初めて。世界的に排気量125ccクラスは4ストローク単気筒エンジンがポピュラーでしたが、すでに当時から、ホンダの市販車「ベンリイC90」は並列2気筒SOHCエンジンを搭載していました。

 試作を繰り返し、苦労の末に世界でもあまり類を見ない精巧さで構成された、排気量125ccクラスの4ストローク並列2気筒DOHCエンジンを完成させます。

 船便でマン島に送られたマシンは、「RC141」と呼ばれる125ccクラスのレース専用バイク、いわゆるファクトリーマシンです。2気筒DOHC2バルブエンジンでしたが、その後に開発された4バルブのシリンダヘッドが完成し、航空便でマン島に届きました。

 そうしてDOHC4バルブのシリンダヘッドを搭載したマシンが、「RC142」と呼ばれています。

 ホンダチームが初めて見る世界レベルの欧州製バイクやGPライダーの走りは想像を超えるもので、パワー不足の「RC142」ではライバル達のラップタイムに及びません。

 車体も時代遅れとなっていたボトムリンク型のフロントサスペンションやブレーキ、フレームの剛性不足などの課題が浮き彫りとなり、参戦初年度はまず完走し、データや情報を持ち帰る事を目標としました。

 いよいよ世界最高峰のロードレースが始まり、ホンダ社内で育成されたライダー達が「RC142」のDOHC4バルブエンジンを13000rpmまで回しました。それでも目標の20馬力には届かず、優勝したイタリアの「MV」や東ドイツの「MZ」との差が開きます。

 しかしレースの結果はホンダ勢最上位が谷口尚己選手の6位入賞と、参戦初年度としては見事なものでした。また4台が完走し、メーカーチーム賞も獲得。日本の通産省も「国産二輪車が世界水準に」という異例のコメントを発表しました。

 ホンダコレクションホールに展示されている「RC142」は、2009年に復元され、当時のライダーである谷口尚己さんによってデモライディングが行なわれた車両です。

 60年以上前のバイクは時代を感じさせる部品構成です。またマン島TTレースで優勝したわけではありません。しかしディテールを見れば見るほど、マン島TTレースに挑戦したホンダのレース魂を感じることができます。

 数年後には世界グランプリで活躍するホンダ車の最初の一歩を刻んだバイクとして、胸を張った佇まいの「RC142」です。

■ホンダ「RC142」主要諸元(1959年公表値)エンジン種類:空冷4ストローク2気筒DOHC4バルブ総排気量:124.6cc最高出力:18PS/13000rpm全長×全幅×全高:1874×650×930mm車両重量:87kg(乾燥)変速機形式:常時噛合式6段タイヤサイズ(前):2.50-18タイヤサイズ(後):2.75-18ブレーキ型式(前):ツーリーディング式ドラムブレーキ型式(後):リーディングトレーリング式ドラム懸架方式(前):ボトムリンク式懸架方式(後):スイングアーム式フレーム型式:バックボーン

【取材協力】ホンダコレクションホール(栃木県/モビリティリゾートもてぎ内)

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みんなのコメント

6件
  • 伊藤史郎、高橋国光のライダーを思い出します。大藪春彦さんの「汚れた英雄」の小説が懐かしです。
  • この時代に始まり、その後の世界GPを席巻した頃のホンダレーサーのエンジンは精緻さにあふれ、見ているだけで惚れ惚れしてしまう。
    近年はバイクもクルマもエンジンは補機類に囲まれてメカ部分が見えづらくなってしまったのは残念。
    まあ、エンジンは鑑賞物ではないので仕方ないですね。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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