待望の初優勝まではラクな道のりではなかった
過去最多の80台オーバーとなった、今シーズンの東北660選手権・第1戦。なかでも最大の激戦区は改造範囲が狭い「3クラス」で、宮城県スポーツランドSUGOで開催される際は、3分の2近くが予選を通らない場合もあるのだ。今回は念願の初優勝を遂げたドライバーを紹介しよう。
軽カーレースで「S660」&「アルト」が増殖中!? 東北660選手権・第2戦は過去最大のエントリー台数でした
不利な環境でも試行錯誤を重ねて勝ち取った勝利
いつまでも同じドライバーが勝ち続けないようにするため、表彰台を獲得した回数により強制的に卒業させる制度はあるものの、参加台数の多さとマシンの戦闘力に差が少ないことから、3クラスでの優勝は相当にハードルが高いといっていい。そんな難しさを味わい続け、ついに初優勝を果たしたドライバーが、2020年から参戦し続け4シーズン目を迎えた西沢拓真選手だ。
もともとは大学の自動車部に所属しており、同期の友達が東北660を始めたのがきっかけ。サーキットで実際のレースを目の当たりにしたら、とにかく面白そうだしコスト的にも何とかなりそう。そこで手に入れたベース車両が今も乗っているダイハツ「エッセ」で、インターネットのオークションで7万円だったとのこと。
車両規則を読みながらプライベートでレース仕様に作り込み、初めて東北660選手権に飛び込んだのは2022年の第3戦・スポーツランドSUGO。レースこそ初心者だがサーキットを走った経験はあり、いきなり予選で3番手という好ポジションをゲットする。決勝では4位と惜しくも表彰台を逃したが、快進撃を予感させるスタートではあった。
ところがここから西沢選手は伸び悩む。地元が関東なので東北のサーキットで練習する機会が少なく、プロショップに頼らずセットアップでも試行錯誤を繰り返した。つねに上位グループの一角に名を連ねはするものの、優勝に手が届かず歯がゆい日々が続いたという。
普通の草レースならチューニングで戦闘力アップできるが、東北660選手権の3クラスは改造範囲が極端に制限されており、4年間で大きな投資はくたびれたエンジンのオーバーホールだけ。ライバルたちと同等のパワーを取り戻したこと、足まわりやタイヤのセッティングが熟成されたこと、さらに「苦手な意識がない」というウエット路面が重なり、今回の記念すべき初優勝に繋がったといえる。
それでも決して簡単に勝てたわけではない。練習走行は路面の感触を探りつつ走った結果11位、しかし予選ではチームメイトの金野智選手に続く2位。とはいえタイムは約1.8秒差で決勝は金野選手の独走かと思いきや、スタート直後から西沢選手が猛烈な追い上げをみせる。
最終ラップの最終コーナーまでテール・トゥ・ノーズの接近戦を繰り広げ、最後の10%上り勾配から続く直線でスリップストリームを使った西沢選手が、コントロールラインの直前でオーバーテイクし劇的な優勝を飾った。
嬉しさのあまり車内でガッツポーズを決めた西沢選手、優勝まで時間がかかった分だけ喜びもひとしおだと話す。東北660選手権(とくに3クラスと2クラス)はクルマの差が小さいため、予選タイムが0.5秒も違えば順位は勝負権がないレベルまで開いてしまい、コースインするタイミングを含めわずかなミスも許されない。参戦してすぐ勝てるレースではないが、頭を使って走り込んだ努力は必ず報われる。優勝という経験と自信を得た西沢選手、今シーズンの台風の目となるか!?
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みんなのコメント
日本特有のカテゴリーは面白いでしょうね。
レースに参加する事はウデを磨く事になり公道での安全運転に繋がりますよね。
もっともっと安く参加出来れば嬉しいかと。