初代から5代目までのスバル「レガシィ」5台のうちの2台と、現行「レヴォーグ」を乗り換えつつ、1泊2日でおよそ600km走るという、スバリスト感涙のプレス向けイベントが2019年9月上旬に開かれた。
なぜこのタイミングだったかといえば、1989年に発売されたレガシィが30周年を迎えたのと、来たる10月24日(木)に開幕する東京モーターショーで新型「レヴォーグ」が発表されるからだ。
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第46回東京モーターショー(東京ビッグサイト周辺/会期:2019年10月24日(木)~11月4日(月・祝))に展示される新型「レヴォーグ」。事前に入手出来た写真は、メインの1カットのみだ。「より遠くまで、より快適に、より安全に」というスバル独自のGT(グランド・ツーリング)思想を、この機会にいま一度アピールしよう、というのが彼らの狙いで、このためにスバル広報のスタッフが5世代にわたるレガシィをネットで探し、購入して往時を再現したという。
現行モデルで第6世代になるレガシィの初代は、1989年1月23日に発表、2月1日から新発売となった。平成が始まったばかりで、新しい時代への期待感が満ち満ちていた。三菱地所がニューヨークのロックフェラー・センターを買収したのがこの年の10月のことで、アメリカを丸ごと買っちゃいそうな勢いがニッポンにはあった。自動車界に限っても、ユーノス「ロードスター」や日産「スカイラインGT-R(R32)」、トヨタ「セルシオ」、日産「インフィニティQ45」、さらにホンダ「NSX」(この年は発表のみ)などが続々と登場した。
1989年1月23日に発表、2月1日から販売開始された初代「レガシィ」。シートはファブリックのほか、レザーも選べた。初代レガシィはどんなクルマ?レガシィ、「英語で大いなる伝承物の意」と説明されるこの名称には、「水平対向エンジン、乗用4WDシステムなど、スバルの伝統的な技術を受け継ぎながら、それを新時代に向けて熟成・集大成したクルマという意味」が込められていた。
水平対向エンジンは1965年に発表されたスバル「1000」以来の、4WDは東北電力からの現地巡回用車両の共同開発の申し出をきっかけに、1972年にわずか8台が販売されて以来の、大いなる伝承物だった。
「スバル1000」は、富士重工業初の小型車。FWD(前輪駆動)+水平対向エンジンを組み合わせた意欲的なモデルだった。車種展開は、先代に当たる「レオーネ」を継承した4ドア・セダンとツーリングワゴンの2車型で、新設計の1.8リッターと2.0リッターの水平対向4気筒が用意された。
それまでのOHVから、1.8はSOHCの、2.0はDOHCの、それぞれ16バルブ・ヘッドを持っていた。なかでもインタークーラー付きターボを備えた2.0は、クラス最高の220ps /6400rpmと27.5kgm/4000rpmを誇った。
レガシィの先代モデルにあたる3代目「レオーネ」。レオーネにはツーリングワゴンや3ドア・クーペも設定された。当初はセダン推しで、「10万km連続走行の世界速度記録達成」が喧伝された。230km/h以上を24時間、19日間にわたって走り続けなければ達成できないという過酷な挑戦だった。
レガシィは「走り」を徹底的に追求した、ドライバーズ・セダンとして登場したのだ。トヨタにはカムリ、コロナ、日産にはブルーバード、三菱にはギャランが健在で、クルマといえばセダンの時代だった。
初代レガシィはツーリングワゴンとセダンから選べた。先代レオーネにあった3ドア・クーペの設定はなかった。トランスミッションは4ATないしは5MTが選べた。最上級モデルとして「GT」がくわわったのは1989年9月、それこそバブル真っ只中だった。そのなかで、最高出力を200psに抑え、「総合的なクルマづくり」を目指して開発されたのは、おとなの見識だったと言えるだろう。
このGTのプロモーション・ビデオでは、「より遠くに、より速く、より快適に、そして、より安全に」というナレーションが確認できて興味深い。ツーリングワゴンにこのGTが加わると、おりからのスキー・ブームもあって人気を集め、やがてレガシィといえば、パワフルな4WDワゴンの代名詞となる。
水平対向4気筒エンジンは、1.8リッターNA、2.0リッターNA、2.0リッター・ターボのほか、1992年からは輸出用の2.2リッターNA(写真)も選べるようになった。1991年5月の初代のマイナーチェンジのプレスリリースでは、2年前、上下に置かれていたセダンとワゴンの写真が、左右並列に変わっている。広告にブルース・ウィリスが起用されたのはこの年からで、「10 万km世界速度記録達成!」「グラン・ツーリズモ」を訴える技術オリエンテッドのセダンから、ダイ・ハードなハリウッド俳優がドライブする、イメージ先行のワゴンへと広告戦略も変化していく。
思い出すなぁ、ヤマダ(注)がガンメタの初代レガシィのセダンに乗っていたのを……。と、30年前の思い出にふける筆者だったけれど、イベントの運営の都合上、抽選が行われ、初日は現行レヴォーグ→午後に2代目レガシィという組み合わせで、ロング・ドライブに出発することになった。
注:今尾氏の『NAVI』時代の同僚。
GTツアラーだったレヴォーグ東京・恵比寿にあるスバル本社を、真っ赤な「レヴォーグ1.6 STI Sport EyeSight」でスタートしたのは午前10時ちょっと前。13時までに山梨・勝沼のレストランに到着することを目指す。レガシィ史上もっとも売れた2代目に乗り換えるのはランチのあとだ。思い出すなぁ、2代目レガシィ。と、その前に勝沼まで中央道経由でおよそ100kmの道のりをレヴォーグで行かなければいけない。
【主要諸元(1.6 STI スポーツ アイサイト)】全長×全幅×全高:4690mm×1780mm×1490mm、ホイールベース:2650mm、車両重量:1560kg、乗車定員:5名、エンジン:1599cc水平対向4気筒DOHCターボ(170ps/4800~5600rpm、250Nm/1800~4800rpm)、トランスミッション:CVT、駆動方式:4WD、タイヤサイズ:フロント225/45R18、価格:363万円(OP含まず)。ステアリングホイールやシフトレバーは、レッドステッチ付き。ナビゲーション・システムはディーラーオプション。米マーケットからの要望で、レガシィは2009年登場の5代目でボディが一挙に大型化される。これでは国内市場が空洞になる!?
という危機感から2014年に国内専用として投入されたのがレヴォーグである。全長×全幅×全高(ルーフ・アンテナを含む)は4690×1780×1490mm。全幅こそ5ナンバーの1700mmを超えたけれど、2650mmのホイールベースは5代目レガシィ・ワゴンのそれより100mm短い。
ボルドーのレザーシートは、STI専用装備。フロントシートは電動調整機構&ヒーター付き。センターアームレスト付きのリアシートは、リクライニング機構付き。ラゲッジルーム容量は、通常時522リッター。ちなみに初代レガシィとくらべると、ホイールベース、全長ともにレヴォーグはそれぞれ70mm延び、幅が90mm広がっている。とはいえ、実用車の鑑にして輸入車の代表のフォルクスワーゲン「ゴルフ」だって、全幅は1800mmある。全長4575mmの「ゴルフ ヴァリアント」同様、たいへん使いやすいサイズと言える。
水平対向4気筒ターボ・エンジンには300psの2リッターもあるけれど、われわれのレヴォーグは1.6リッターで、最高出力は170ps /4800~5600rpm、最大トルクは25.5kgm/1800~4800rpmである。
駆動方式は4WDのみ。JC08モード燃費は16.0km/L。搭載するエンジンは1599cc水平対向4気筒DOHCターボ(170ps/4800~5600rpm、250Nm/1800~4800rpm)。STI Sportは2016年に追加されたレヴォーグの最上級グレードで、専用の内外装を持つ。とりわけインテリアは、ボルドーと黒の2トーンの本革シートに赤いスティッチが情熱的でスポーティなムードを高めている。
パワートレインは手つかずだけれど、スバルのスペシャリスト集団STIがチューニングしたビルシュタイン製のダンパーと、コイル・スプリングを装備する。225/45R18という薄いタイヤ・サイズもあって街中ではやや堅めながら、速度が上がるにつれ、不満がなくなる。これこそグランド・ツーリングに適したセッティングというべきだろう。走るほどに不満がなくなる。
ステレオカメラを使った先進安全装備群「アイサイト」は標準。衝突軽減ブレーキやACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)などを備える。アイサイトの「ツーリングアシスト」機能を使えば、アクセル、ブレーキ、ステアリング操作を全車速域で自動的に制御。ドライバーはハンドルを軽く握っているだけでよい。とりわけ、高速巡航時には「リニアトロニック」と呼ばれるCVTとの組み合わせによって、静かさとスムーズさが印象的だ。無段変速による切れ目のない加速は、電気モーターのごとしである。
ガバチョとアクセルを踏み込むと、1.6リッターという排気量ゆえ、低速トルクがやや細い。CVT特有のエンジンの高まりと加速のズレも感じる。中央道の上野原あたりの高速ワインディングを走っている分にはなんの問題もないけれど、勝沼ICで中央道を降り、加減速を繰り返す低中速コーナーの連続だと、ちょっともどかしい。と感じるようなドライバーは、マニュアルの「WRX STI EJ ファイナル・エディション」、限定555台をお買い求めください、ということである。
レヴォーグ1.6STIは、「より遠くまで、より快適に、より安全に」というスバルGT思想を具現するGTツアラーなのである(後編に続く)。
文・今尾直樹 写真・安井宏充(Weekend.)
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