2008年、4代目アウディA4のデビューから、ちょうど1年が経過したところで、そのスポーツバージョンであるS4も新型へと切り替わった。注目点は搭載エンジンが4.2L V8から3L V6スーパーチャージャーに一新されたこと。そこにはどんな狙いがあったのだろうか。ここではスペインのマヨルカ島で開催された国際試乗会の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2008年12月号より)
Dセグメントスポーツサルーンとして時代をリード
ドイツのプレミアムブランド御三家がもっとも得意とするカテゴリーは、いわゆるDセグメントのセダン。具体的にはA4、3シリーズ、そしてCクラスである。そして、これらのモデルを際立たせる存在にしているのが、そのスポーツバリエーション。S4を筆頭に、M3、そしてC63AMGが、それぞれのイメージリーダーとなっている。
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中でもアウディのSシリーズは歴史も古く、そのルーツは1985年に登場したWRC用のコンペティションマシンであるS1に遡ることができる。その後、1990年に初めてS2クーペとして市販モデルが完成し、続いて1992年にS2アバントが、そして1993年には4ドアセダンが追加された。
続いて1994年にA4誕生後、2.7LのV6ツインターボを搭載するS4、さらにその後のモデルでは4.2L V8エンジンを積んだS4が登場している。アウディはここまで、Dセグメントスポーツサルーンで確固たる実績を残してきたのだ。
ところが今回のニューS4では、エンジンのシリンダー数が2本減り、排気量も3Lへとダウンサイズされている。これは来たるべきドイツにおけるCO2税導入、あるいはEU環境省からの燃費罰金にも対処するためと思われる。エンジンにはスーパーチャージャーを装着し、最高出力333ps、最大トルクは440Nmを発生する。アウディ得意のターボを採用しなかったのは主にレイアウトの問題で、「スーパーチャージャーであればV6エンジンのバンク内に収めることができるから」と、開発担当重役のミヒャエル・ディックは説明する。
この結果、ニューアウディS4のスタートから100km/hまでの加速性能は、6速マニュアルで5.1秒、新採用の7速Sトロニックで5.3秒、最高速度は250km/hで、リミッターが働く。またアバントの加速は6速マニュアルで5.2秒と7速Sトロニックで5.4秒となる。
コーナリング性能を高める新たなシステムを搭載
試乗会が行われたのはスペインのマヨルカ島。外気温20度前後で、出発日の早朝にウインドシールドに凍りついた霜を落としたドイツとは、わずか1時間半のフライトで20度以上の差がある。
空港でレポーターを待っていたのは、コバルトブルーのS4アバントで、7速Sトロニックが装備されている。リアゲートを開けて同僚と二人分の荷物を、460Lあるいはリアシートを倒せば1430Lもある大きなカーゴルームへ易々と積み込む。左右にレールを持つオプションのバゲッジオーガナイザーは、激しいコーナリングでも荷物が転げまわるのを防いでくれるので、スポーツワゴンにはとくに便利な装備だ。
コンソール上のスターターボタンにタッチすると、V6+スーパーチャージャー(ルーツ製)のパワープラントからは低く、押し殺したようなサウンドがドライバーの耳に届き、落ち着いたアイドリングを始める。
SトロニックのセレクトレバーをDレンジにセットしてスタートしようとしたが、コンソールを見てドライブセレクトスイッチに気がついた。最新のアウディではコンフォート/オート/ダイナミック、そしてインディビジュアルとドライバーの好みに合わせたセッティングが可能なのだ。とりあえずオートにセットしてスタートする。
空港の出口でちょっとアクセルペダルを踏み込んだら、さすがはスーパーチャージャー、およそ2000rpm付近から、グッグッと素晴らしいダッシュ力を見せる。そして、アウトピスタ(高速道路)へ入る。最高速度120km/h制限のはずだが、流れはかなりハイスピード。もちろんニューS4はそんな流れにも容易に入り込むことが可能だ。わずかな隙を見て、スロットルをちょっと深く踏みこむだけでいい。スペインの高速進入路の多くは埃っぽくミューが低いので路面が滑りやすいが、クワトロシステムによって高いトラクションを維持し、安全に加速を続けることができる。
こうしたスピード領域におけるブレーキ性能も確かで、とくに踏み込むとすぐさま制動力の立ち上がるアウディ独自のやや効き過ぎ感のあるブレーキチューンは、むしろこうしたシーンでは頼もしい。
ところでこのアウディS4には非常に注目すべきハイテクが準備されている。「スポーツデファレンシャル」と名付けられたシステムで、これは実は「トルクベクトリング」である。つまり左右の後輪へ別々にトルクを伝え、コーナリング性能を高めるという駆動装置だ。三菱ランサーエボリューションVIIが初めて採用し、BMWはX6でDPC(ダイナミックパフォーマンスコントロール)という名称で、これに続いたものである。アウディはこのシステムをマグナシュタイヤー社と共同開発をして完成させた。
もちろん市場導入に対しては後発ということになるが、それだけにシステムは洗練されており、さらにシャシコントロールシステム開発担当であるDr.ラルフ・シュワルツによれば「構造はシンプルで軽量、ZFとBMWが開発したシステムに比べて20kgも軽量である」という。
このスポーツデファレンシャルの検証は、マヨルカ島にあるレーシングコース「サーキット・マヨルカ」で行うことができた。全長およそ3.2kmの迷路のようなサーキットにはパイロンでコースが設定され、このシステムによる挙動の変化を見ることができた。
もちろんこれも前述のドライブセレクトと連動しているので、たとえばダイナミック、あるいはインディビジュアルの設定によっては、その効果に差が出る。最大でおよそ10%増の横Gまでコーナーを楽しむことができるそうだ。すなわちコーナー上でのアンダーステアは消え失せるわけだ。確かにその効果は抜群で、しかもBMWのセッティングと比べるとアウディの方がプログレッシブで自然に介入してくる。
またこのサーキットではロックtoロックおよそ2回転と4分の1ほどのシャープなステアリングによって、積極的でチャレンジングなスポーツ走行を楽しむことができた。
最後にこのS4全体のイメージを述べるならば、スーパーチャージャー搭載のパワートレーンは旧S4と比べるとややマイルドになったかなと感じるシーンがあった。それは、おそらく近い将来に登場するノーマルアスピレーションのV8エンジンを搭載予定のRS4との見分けをはっきりさせるためだろう。
参考までに、ドイツにおける発売時期は2009年3月。価格は、セダンが5万0950ユーロ、アバントが5万2600ユーロである。日本を含むアジア方面への出荷は、おそらく2009年の夏以降になるだろう。もちろん、価格はまだ発表されていない。(文:木村好宏/写真:Kimura Office)
アウディ S4セダン 主要諸元(欧州仕様)
●全長×全幅×全高:4717×1826×1406mm
●ホイールベース:2811mm
●車両重量:1650kg(EU)
●エンジン:V6DOHCスーパーチャージャー
●排気量:2995cc
●最高出力:245kW(333ps)/5500-7000rpm
●最大トルク:440Nm/2900-5300rpm
●トランスミッション:7速DCT(Sトロニック)
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:プレミアム・64L
●EU総合燃費:10.6km/L
●タイヤサイズ:245/40R18
●最高速:250km/h (リミッター)
●0→100km/h加速s:5.3秒
アウディ S4アバント 主要諸元(欧州仕様)
●全長×全幅×全高:4717×1826×1415mm
●ホイールベース:2811mm
●車両重量:1735kg(EU)
●エンジン:V6DOHCスーパーチャージャー
●排気量:2995cc
●最高出力:245kW(333ps)/5500-7000rpm
●最大トルク:440Nm/2900-5300rpm
●トランスミッション:7速DCT(Sトロニック)
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:プレミアム・64L
●EU総合燃費:10.4km/L
●タイヤサイズ:245/40R18
●最高速:250km/h (リミッター)
●0→100km/h加速s:5.4秒
[ アルバム : アウディS4 /S4アバント はオリジナルサイトでご覧ください ]
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みんなのコメント
とはいえ、過給車の特権でROMチューンで軽く400馬力前後まで逝っちゃうけどね