■「薪エンジン」が動く! 代燃車「三太号」って?
日本のバスの歴史には、戦中・戦後に活躍した「代燃車」と呼ばれるクルマが存在しました。バス事業者の神奈川中央交通(神奈中)は、この代燃車「三太号」のエンジンを実際に動かして走らせた様子を公式YouTubeで公開しています。三太号はどういったクルマなのでしょうか。
【写真】「えっ…薪で走るの!?」超レトロな「氣筒數6」の代燃車を写真で見る(13枚)
代燃車は、正式名称を「石油代用燃料使用装置設置自動車」といいます。木炭などを加熱してガスを発生させ、そのガスでエンジンを回す自動車です。1900年前後、日本だと明治後期にヨーロッパで開発されました。日本では主に戦中・戦後の石油燃料が不足していた時期に活躍しました。
神奈中では、戦後の1952年に代燃車を全廃しましたが、1981年、薪(まき)で走るボンネット型の代燃車「三太号」が復元されています。
代燃車復元の背景や三太号の特徴について、神奈中の担当者は次のように説明します。
「三太号は1981年、当社の創立60周年を記念し、薄れゆく歴史のひとこまの再現として、当時の技法や工程をそのまま用い解体材を活用しながら、約8か月をかけて復元しました。
復元した代燃車は、1950年製のトヨタ6気筒ガソリンエンジン車に同年製のバス車体の骨格を取り入れ、薪ガス発生装置を製作・架装しました。
乗車定員は40人、排気量3870ccのエンジンで最高速度は57km/hです。ガス発生装置には最大45kgの薪を貯蔵でき、その量で約55kmから60km走行可能です」
なお、三太号の名前については、1950年頃にNHKで放送されていた子供向けラジオ番組「三太物語」の主人公“三太”から取ったといいます。
そんな三太号のエンジン始動の光景が、神奈中の公式YouTubeチャンネルで公開されました。
■「動く文化遺産だ!」走る三太号に興奮の声
三太号の始動は10年ぶりといいます。動画の冒頭では、副整備長が「成功率は……40%ぐらいかな」と不安をもらす場面も。
エンジンを動かそうと、神奈中の整備士がバス後方部にある薪を燃やすカマで、着々と準備を進めます。
カマの薪に火がつき煙が上がると、手動の送風機でカマに空気を送り込み、燃焼ガスがエンジンに来ているかなど細かく確認。代燃車が動き出す過程や内部すみずみまで、貴重な光景が見られます。
動画の前編では、試行錯誤を経てエンジン始動に無事成功。
後編では、三太号を営業所の広い駐車場に運び、エンジンの準備やアイドリングを経て、見事走行することに成功。素朴なエンジン音をとどろかせながら敷地内をゆっくりと一周し、バックの車庫入れも披露しました。
前出の担当者は、動画の反響について次のように話します。
「反響の大きさにびっくりしています。コメント欄には、代燃車が実際に走行していた当時の思い出などをたくさん投稿していただき、非常に楽しく拝見しております」
動画を見た人からは「今も残されているのすごい」「戦時中の木炭バスだ! レトロで貴重すぎる」と驚きの声が投稿されているほか、「復元の取り組みも動画として残したのも素晴らしい」「これ動く文化遺産」などの感動する声、「整備士さんの腕前にも感嘆」といった内容など様々な反響が集まっていました。
神奈中の公式YouTubeでは、今後も様々な動画を公開していくといいます。
「先般発表した新カラーバスのほか、EVバスや自動運転バス、連節バスなどまだまだ魅力的なバスがたくさんありますので、今後も動画を通じて神奈中の魅力を発信していきたいと思います」(前出の神奈中の担当者)
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みんなのコメント
薪を不完全燃焼させて発生したガスを燃料に走るという昔の人達の知恵を、実際の教材として後世に残すというのは素晴らしい事だと思います。