■幻のランチア「デルタ」のエヴォルツィオーネ3とは
Writer:野口祐子(NOGUCHI Yuko)
Photographer:野口祐子(NOGUCHI Yuko)/Miki Biasion
ラリー界の伝説「ランチア デルタ」が、今でも真のクルマ好きにオススメの理由
Miki Biasion(ミキ・ビアジオン)と聞くと、やはり脳裏に浮かぶのはランチア「デルタ」とともに土埃にまみれながらもグラベルの道を走り続ける姿、雪のなかを走り続ける姿、あたり一面砂漠のなかを走り続ける姿……だろう。
彼はデルタのステアリングを握り1988年、1989年とWRCのドライバーズチャンピオンを2回獲得。彼のドライバー人生のなかでもランチア・デルタは特別なクルマであることは間違いないだろう。そしてミキは、世界でもっともデルタを知り尽くしている男といっても過言ではないだろう。
●デルタといえば、マルティーニカラー
2021年7月19日、そのミキ・ビアジオンが現在進めているプロジェクト「Delta Evo Martini Racing」の記者会見が、ミラノの「テラッツァ・マルティーニ」でおこなわれた。
テラッツァ・マルティーニ(マルティーニのテラス)は、1958年にマルティーニ社が自社の宣伝プロモーションのために、ビルの最上階に人々の出会いの場としてオープンさせたスペース。「マルティーニを片手にミラノの美しい街を眺めながら人々との交流を」という当時にしては画期的なアイデアだった。
テラッツァ・マルティーニから見えるミラノの街の屋根の風景は他の場所では体験できない。特に真下に見えるドゥオーモは圧巻の眺めだ。まるでマルティーニがミラノを統治しているかのように思えて来る。世界中から招待された著名人はこの眺めに魅了され、話もマルティーニのカクテルも尽きることはなかっただろう。テラスからの美しい眺めも素晴らしいが、ドゥオーモ広場から見えるビルの最上階にあるマルティーニの赤い丸のロゴもなんとも言えない風格がある。
ランチア・デルタの話に戻ろう。1979年に誕生したランチア・デルタは、「HFターボ」、「HF 4WD」、「HFインテグラーレ」、「HFインテグラーレ16V」、「S4」、「HFインテグラーレ エヴォルツィオーネ(Evo 1」、「HFインテグラーレ エヴォルツィオーネII(Evo 2)」と、初期モデルをベースにいくつものモデルが誕生した。
そしてなんといってもデルタを不動の地位に押し上げたのは、マルティーニカラーで走り抜けたWRCでの活躍だろう。WRCという過酷なレースでの優勝は世界中のランチアファンを熱狂させ、この快挙によってデルタの人気が上昇、マルティーニの存在も世界に知られることになる。
その時のドライバーが、今回Delta Evo Martini Racingのプロジェクトの発起人、ミキ・ビアジオンである。記者発表会の場所はそんなランチア・デルタを支えて来たマルティーニのテラッツァ・マルティーニが相応しい。
●デルタ40周年で立ち上がった「Evo」プロジェクト
デルタ誕生から40年経った2019年、各地で40周年記念イベントがおこなわれていた。もちろんこのクルマで世界チャンピオンとなったミキ・ビアジオンは欠かせない主役だ。そしてこのクルマ誕生にあたり関わった人たちも大勢集まった。
その集まりで、ミキは当時デルタのプログラム、そしてホモロゲーションの責任者だったブルーノ・チェーナと再会。立ち話で昔の思い出を語りながらデルタの話になった時、「『デルタ Evo 3』はあれからどうなった?」と、話がエヴォルツィオーネに移った。
エヴォルツィオーネのプロジェクトはEvo 1、Evo 2と市販化され、それに続く予定だった「HFインテグラーレ エヴォルツィオーネIII(Evo 3)」は、開発途中で打ち切りになったプロジェクトだ。聞くと、なんとチェーナは自分が手がけたホモロゲーションに関しては明確に記憶しており、しかも当時彼が残した覚書、その他の資料はすべて保管してあるという。ホモロゲーション獲得のため、周到な準備をしていたのだろう。
■現代の技術で、ミキ・ビアジオンが考えるデルタEvoの進化型が実現となる
チェーナと再会し、エヴォルツィオーネの話をしている内に、Evo3の現代版を作ってみたいという思いが湧き上がったミキ。
ミキにとって、ランチア・デルタとの生活は忘れることができない思い出だ。当時自分が乗っていたデルタが、「現在のマテリアルと技術を使って生まれ変わったらどうなるだろう」と、かねてから心の内にあった。チェーナの正確なデルタの記憶に触れたことで、Evoプロジェクトを立ちあげることを決断する。
●ベースは、1994年式の「デルタ」
こうして1994年のデルタをベースに、ミキのEvoプロジェクトはスタートした。
スタイルはオリジナルのデルタを継承し、メカニカルな部分はオリジナルのキャラクターを元に現代の法規を念頭に最新のマテリアルを使用し、性能・安全性を重視した。
デルタには欠かせない、マルティーニカラーはどうするかという問題が残った。ブルー、水色、赤のラインがデルタに入ることによってあの時の感動が蘇る。早速Martini & Rossi社との話し合いが始まり、公式にマルティーニカラーが採用となった。
そして、Delta Evo Martini Racingは限定8台で、白、ブルー、赤、ゴールド、黒の5色で生産されることが決まった。
現在、クルマはクーネオの工場で製作中である。2021年10月にパドヴァでおこなわれる「Auto Moto d’Depoca」において、実車が発表される予定だ。
●現代の技術でアップデートされる「Evo」
ミキのレース経験をベースに、シャシの捻れ剛性をアップ、車内は防音が施され、エスクルシーブのアルカンターラを使用したスパルコのシート、ペダル、ギアシフト、ステアリングはレース仕様が採用された。
エンジンはグループAを基本に、モータースポーツ用ECUマップにスイッチで変更可能となっている。
ベースの最高出力は220psで、スポーツバージョンは340psとなる。マフラーはバイパスバルブ付きの直径70mmの排気管を装備。
トラスミッションは構造補強と新しいギアを採用し、ツインプレートクラッチを使用。ステアリングはグループA形式のダイレクトタイプステアリングギアボックスが使われることになった。
ブレーキは強化型のブレンボブレーキシステム、ローター径はフロント332mm、リア300mmだ。
サスペンションはリバウンドとコンプレッションで10ポジションに調整可能なビルシュタインダンパー、そして強化されたサイレントブロックを採用し、グループAから派生したリアサスペンション補強バーが装備されている
ホイールは17、または18インチでタイヤはミシェランのパイロットスポーツ4タイヤがセットされる。
エクステリアはエスクルーシブのマルティーニのカラーリングをまとい、フロントのヘッドライト周りはすべてブラックに、そしてグループA使用のバックミラーはカーボン製となっている。
* * *
現在製作中のDelta Evo Martini Racing の10月の実車デビューが楽しみだ。このプロジェクトはレストモッドではなく、スペシャルモデルというべきか? またはデルタと共に走ったミキ・ビアジョンの夢のクルマか……。ミキによると、すでに4台の予約が入っているという。
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