日本自動車販売協会連合会(自販連)の発表している乗用車ブランド通称名別の販売台数ランキングでは、トヨタ『ヤリス』がトップとなっているが、その内情は『ヤリスクロス』との合算だ。そこを分けて考えると、トヨタ『ライズ』が単独首位に躍り出ることになる。
ハイブリッド車も設定してないコンパクトSUVが、なぜここまで人気になったのか? ライズの人気の理由をひも解きつつ、ほかのメーカーにとっても参考になるであろうポイントについて考察をいきたい。
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文/渡辺陽一郎
写真/TOYOTA、編集部
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■車種単独ではヤリスを抜く! コンパクトSUVで圧倒的人気の「ライズ」
2020年に国内で新車として売られた小型/普通車の内、51%をトヨタ車が占めた(レクサスを含む)。軽自動車を含めても33%だから、トヨタ車の売れ行きは圧倒的だ。販売ランキングの上位にも数多く並ぶ。
そして2020年における小型/普通車販売ランキングの1位はトヨタ『ライズ』であった(2020年の登録台数は12万6038台)。
トヨタがダイハツからOEM供給を受けて販売する『ライズ』(写真右)。姉妹車のロッキー(写真左)と販売台数を合わせると15万7000台に上る
日本自動車販売協会連合会の集計によると、小型/普通車の1位はトヨタ『ヤリス』だが、この数字は「ヤリス+GRヤリス+ヤリスクロス」を合計したものだ。『ヤリスクロス』はコンパクトSUVで、エンジンやプラットフォームはコンパクトカーのヤリスと共通化したものの、外観は大幅に異なる。一般的な認識では別の車種だ。
ビッツの後継車種として登場した『ヤリス』。軽量コンパクト低燃費だが、後席空間が手狭なのが玉にキズ
そこでヤリスクロスの台数を除くと、ヤリス(GRヤリスを含む)のみの登録台数は約11万9000台になる。小型/普通車の登録台数1位は、12万6038台のライズというわけだ。
ヤリスクロスの発売は2020年8月31日だから、同年2月に登場したヤリスに比べると、販売されている期間が短い。そこで直近の月別登録台数を見ると、2020年11月はヤリスクロスが約1万台でヤリス(GRヤリスを含む)は約9000台、12月はヤリスクロスが約8900台でヤリスは8300台であった。このように最近はヤリスクロスがヤリスよりも多く売られている。
2020年後半以降の小型/普通車登録台数ランキングは、1位がライズ、2位は僅差、あるいはほぼ同数でヤリスクロスになる。さらに直近では3位にトヨタ『ルーミー』が入る。2020年5月に、全国のトヨタの店舗がすべてのトヨタ車を販売する体制に変わり、姉妹車のタンクが廃止されて需要がルーミーに集中したからだ。
5ナンバー コンパクトハイトワゴンのトヨタ『ルーミー』。価格や車格的には競合車種だが、こちらはよりファミリー向きなハイトワゴンになる
ライズでは好調な売れ行きが約1年間にわたり続いており、高人気にも普遍性が伴う。しかもライズが搭載するエンジンは直列3気筒1Lターボのみで、ヤリスクロスのようなハイブリッドは選べない。グレードも4種類なのに販売は好調だ。
■ハイブリッドの設定もないのになぜ人気!? ライズがここまで求められた理由とは!?
選択肢の少ないライズがたくさん売れる理由は、今の人気車に求められる複数の要素を備えているからだ。まずは人気カテゴリーのSUVであること。小型/普通乗用車に占めるSUVの比率は、2000年頃は約7%だったが、今は25%に達する。ミニバンと同等かそれ以上だ。
しかもライズは5ナンバー車になる。販売の好調なトヨタ『ヤリス』、ホンダ『フィット』、日産『ノート』、トヨタ『ルーミー』、トヨタ『シエンタ』なども5ナンバー車だが、SUVでは少数派だ。コンパクトなトヨタ『ヤリスクロス』を含めて、全幅の広い3ナンバー車が圧倒的に多い。5ナンバーサイズのSUVは、ライズの姉妹車になるダイハツ『ロッキー』、スズキ『クロスビー』、スズキ『ジムニーシエラ』、スズキ『イグニス』程度だ。つまりライズは、人気の高いSUVと5ナンバー車の要素を併せ持つ貴重な車種だから売れ行きを伸ばした。
フロントマスクなどの外観に、SUVの原点回帰を感じさせることも人気の秘訣だ。今のSUVは、トヨタ『ランドクルーザー』のような少数の悪路向けを除くと、大多数が乗用車と同じ前輪駆動のプラットフォームを使うシティ派に属する。このタイプは床が低く車内は広く、乗降性、居住性、舗装路における走行安定性、乗り心地などが優れている。しかも他車と共通の機能も多いから価格を抑えやすい。悪路向けSUVの走破性能を求めるユーザーが少ないこともあり、シティ派が増えた。
本格的なクロスカントリー4WDの『ランドクルーザー』。2021年9月に、新型の「300系」へとフルモデルチェンジする予定
当然の成り行きだが、シティ派が膨大に増えると物足りない印象も生じてくる。悪路向けSUVのランドクルーザーに見られるような野性味も欲しい。そこでLサイズSUVではトヨタ『RAV4』が大ヒットした。エンジンやプラットフォームは基本的にトヨタ『ハリアー』と共通で、前輪駆動ベースのシティ派SUVに含まれるが、外観は悪路向けの雰囲気だ。前輪駆動ベースの4WDを備えたSUVでは悪路走破力も高く、ユーザーの共感を呼んだ。
カムリと同じGA-Kプラットフォームを持つ『RAV4』。悪路走破性の高い2Lガソリン4WDモデルと、動力性能が高い2.5Lハイブリッドモデルを擁する
ライズは悪路走破力を高める特別な機能を採用していないが、グリルの開口部が大きなフロントマスクなど、RAV4に似た印象も受ける。最低地上高(路面とボディの最も低い部分との間隔)も185mmを確保したから、悪路のデコボコも乗り越えやすい。このSUVの実用性に裏付けられた外観も人気の秘訣だ。
全長が4m以下の5ナンバー車だから、最小回転半径も4.9m(「Z」グレードは5m)に収まり、狭い裏道や駐車場でも運転しやすい。運転席に座るとボンネットが視野に入り、ボディの先端や車幅もよくわかる。外観が水平基調だから、側方や後方の視界も優れている。着座位置は適度で、前後のピラー(柱)を立てたから乗り降りもしやすい。
ボディがコンパクトだから、後席の足元空間と荷室はあまり広くないが、全高はSUVとあって1620mmに達する。従って大人4名の乗車は十分に可能だ。以上のような特徴により、ライズは買い物など日常的な機能も優れ、ヤリスやフィットのようなコンパクトカーとしても便利に使える。
トヨタの販売店にライズが好調に売れる理由を尋ねると、以下のように返答された。
「ライズはSUVでも運転しやすいので、コンパクトカーから乗り替える女性のお客様も多いです。ヤリスなどに比べると視線が少し高く、適度に見晴らしが利くことも魅力でしょう。エンジンは1Lターボなので、動力性能に余裕があり、活発に走ることも特徴です」
このようにライズは、コンパクトカーと同様に運転しやすく、SUVの特徴とされる高めの着座位置も、視界や乗降性を向上させている。ターボエンジンの搭載も、SUVのパワフルなイメージを盛り上げる。実用回転域の駆動力を考えると、ヤリスクロスのように1.5Lノーマルエンジンのほうが運転しやすいが、ターボであればスポーティな雰囲気が強まる。そこがライズの人気に結び付いた。
■価格もユーザーフレンドリー! クルマの出来だけではない人気ポイント
割安な価格も人気の秘訣だ。中級グレードの「G」は、衝突被害軽減ブレーキ、サイド&カーテンエアバッグ、LEDヘッドランプ、アルミホイールなどを標準装着して2WDの価格が189万5000円だ。「ヤリスクロス2WD・G」の202万円に比べてかなり安い。
コンパクトカーの「ヤリス1.5G」は175万6000円だが、LEDヘッドランプとアルミホイールはオプションで、この価格を加えると189万7900円になる。
つまりライズの価格は、実質的にヤリスやフィットといった売れ筋のコンパクトカーと同等だ。販売店のコメントにあったとおり、コンパクトカーのユーザーが個性的なSUVに乗り替えたいと考えた時、ライズはちょうどいい選択肢になる。上級車種からダウンサイジングする時も、SUVならコンパクトカーよりも存在感が強く、カテゴリーを下げた印象になりにくい。
今のクルマは安全装備が充実して好ましいが、価格も上昇している。以前は消費税率も低く、2010年代の中盤なら、「ライズG」と同等の価格でミドルサイズミニバンの「ウィッシュ1.8X」を購入できた。しかし今の170~200万円は、コンパクトカーの価格帯だ。それなのに所得は1990年代の後半以降は下がっており、今でも20年前の水準に戻っていない。クルマを買う時も予算を増やせず、ミドルサイズからコンパクトな車種に乗り替えるユーザーが増えた。
このようにライズは、今のさまざまなニーズに応えることで好調に売れている。ボディサイズや外観のデザインから運転感覚、居住性、価格まで、日本のユーザーに寄り添う開発姿勢が大ヒット商品を生み出した。このセオリーは、商品を問わず、いつの時代でも変わらない。
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みんなのコメント
•SUVに乗れる
•トヨタディーラーで売ってる(ダイハツ・スバルでの台数は散々)
これに貧乏人達が
食いついただけ。
分析や解説なんか要らん。
しかし安っぽい車だ。
トールルーミータンクのようにダイハツ開発車両は
どうしても安っぽい感じがして抵抗がある
百均の駐車場が良く似合う