この記事をまとめると
■ポルシェが人気SUVであるマカンの欧州販売を2024年春に終了すると発表した
スマホがクルマの鍵になるデジタルキー! 実用化されているのに「普及しない」ワケ
■マカンの欧州販売終了の理由はサイバーセキュリティ関連法規に対応できないため
■クルマに対するサイバーセキュリティについてはグローバルで共通の法規が必要とされている
どうしてマカンの欧州販売を終了しないといけないのか?
ポルシェがSUV「マカン」の欧州内販売を2024年春に終了すると発表した。マカンといえば、ポルシェのなかではエントリーモデルという位置付けであり、日本を含めてグローバルで販売を伸ばしてきた人気車種である。
いったい何があったのか?
ポルシェによれば、現時点ではサイバーセキュリティ関連法規への対応が難しいからだという。サイバーセキュリティと聞くと、スマートフォンやパーソナルコンピュータがウイルス感染して個人情報が抜き取られたり、または企業や政府などのネット環境に侵入して秘匿データを盗み出すハッカーの存在が知られているところだ。
クルマにおけるサイバーセキュリティについては、クルマと外部が通信によって情報伝達するコネクテッドカーという考え方がすでに定着しており、クルマに対するハッキング対策の必要性も高まっている。
サイバーセキュリティが自動車産業界で重視されるきっかけになった事件がある。アメリカで2015年、ハッカーがJeep「チェロキー」2014年モデルをハッキングして遠隔操作で操縦する動画をネットで公開したのだ。
Jeepハッキング事件が転機になった
当時、筆者はアメリカネバダ州ラスベガスで開催された、ハッカー関連のイベント「ブラックハット USA2015」を現地取材し、このハッキング行為についてハッカーやハッキングに対応するソフトウエアを開発するシリコンバレーのベンチャー企業関係者らに話を聞いた。
このJeepハッキング事件はその後、日本を含めてグローバルでコネクテッドカーに対するサイバーセキュリティ対策において大きな転換となったといえる。ハッキング対策は、いわゆる「イタチごっこ」であり、対応策は日夜進化することが必要というのがサイバーセキュリティ業界の常識であるようだ。
そうしたなか、各国政府や自動車産業界で、クルマに対するサイバーセキュリティについてグローバルで共通の法規が必要だという話になった。議論の舞台は、自動車基準調和世界フォーラム(通称WP29)だ。国土交通省によれば、WP29は国連欧州経済委員会(UN/ECE)の下にあり、傘下に運営委員会と専門分科会がある。分科会では技術的、および専門的な検討を行う。
また、WP29の目的は、自動車の安全・環境基準について国際的に強調し、政府による自動車の認証の国際的な相互承認を推進することとしている。
このWP29で2021年1月、UN-R155が発効された。これにより、2022年7月から順次、新車におけるサイバーセキュリティ対策が義務化された。
前述のポルシェ「マカン」は同法規への対応が難しいことと、今後はポルシェブランドを含めたフォルクスワーゲングループ全体でBEV(電気自動車)へのシフトを進めるなかでサイバーセキュリティ対応を一斉に導入する事業戦略を進めることが考えられる。
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