この記事をまとめると
■ホンダアクセスより「実効空力」を取り入れたシビック用の新リヤウイングが登場
ホンダアクセスの未公開裏話が豪華ゲストから飛び出しまくり! ファン必聴の「モデューロ 30th Anniversaryスペシャルトークショー」が開催された
■群馬サイクルスポーツセンターで新タイプのウイング装着車両に試乗
■ボディ剛性の変化を体験できるフィットの実験車両にも試乗した
シビック用にも「シェブロン」加工を施した新リヤウイング
「実効空力」という概念で、新たな空力パーツを展開するホンダアクセスの「モデューロ」ブランドに新しいデバイスが登場した。シビックに装着可能で翼裏面に独自なシェブロン(鋸歯)加工を施した新タイプのリヤウイングスポイラーだ。
今回、群馬サイクルスポーツセンターのクローズドコースと周辺道路で、その「実効性」を試してきたのでリポートしよう。
実効空力デバイスについては、これまでもたびたび紹介してきた。印象的だったのはN-BOXに装着したシェブロン型の空力パーツで、風の影響を受けやすい車体形状のN-BOXに装着すると、通常走行速度域でも車両周辺に発生する乱気流が細かくなり、車体振動が減少してボディ剛性が向上したかのような効果があったことを確認している。
ホンダアクセス・モデューロがこうした「実効空力」を意識し始めたのは2008年に登場したシビックタイプR(FD2型)用の空力パーツを開発しているときだったという。当時はまだ通常走行域で実効性を確認できるほどのノウハウはなかったというが、それから土屋圭市氏を中心に細かな加工調整と走行試験を繰り返し、「実効空力」を謳えるほどにまで効果を引き出すことに成功したのだ。
その開発の手法は現代の常識からはかけ離れている。空力パーツの開発は、通常であればモックアップの模型を製作し、風洞実験を繰り返して現物化したうえで実車に装着。それから効果を確認して商品化していく。
だがアクセスの取った手法は、とにかく実車両に加工可能な素材で試験的に装着し、実走しては加工して効果の有無を確認して仕上げていくという。それはじつに大変な作業であり、土屋氏の感性から発せられる言葉をエンジニアが理解し、パーツのどの部分をどう加工するかを決めて走行確認をするという途方もなく手間のかかる作業となったはずだ。
モデューロが実効性にこだわるのは、ユーザーとなるカスタマーが見た目だけでなく、空力パーツ装着による効果を「実感」できることを強く意識したためで、見た目重視、数値重視のメーカー純正装着パーツとは一線を画すものとするためだ。その結果、装着ユーザーから好評を得て、いまでは高い装着率を誇るまでに成長している。
ボディ剛性が高まったかのように感じる実効空力
まずはシビックe:HEVで、旧タイプと実効空力を取り入れた新タイプのリヤウイングによる効果を比較してみる。
シビックe:HEVは、オリジナルでも完成度が高く、質感の高い乗り味をもっている。旧タイプのリヤウイングを装着して群サイを走るとロードホールディングに優れ、ライントレース性も高く申し分のないハンドリングを示していた。正直、「これほど完成された車両に装着して差がわかるのか?」と疑問が生じる。
次に新作の実効空力リアテールゲートウイングスポイラーにその場でメカニックが付け替えてみる。今回の仕様はノーマルのスポイラー装着車のステーをそのまま使用して装着することができるレトロフィットが可能だ。
新型の外観的な特徴は、ウイング全体が厚みを増し、重量も約2.7kgと若干重くなっている。そして、翼裏面にもシェブロン加工が施されている。手作業で作り出しているのでウイング傾斜角や翼断面形状などの数値的なデータはなく、完成した型から作り出しているというから驚く。
装着した結果、CD値がどう変化するかとか、ダウンフォース値やリフト値の計測も行っていない。あくまで、ドライバーが乗って感じる特性に特化している。ここで走らせて違いを感じ取れなければ、自分の感覚センサーが鈍っているということになってしまう。
全身のセンサーを研ぎ澄ませてコースインしてみる。40km/hほどで巡航してみても大きな違いは感じ取れない。コーナーに進入し、路面のバンプが増えて車体に振動が発生するような場面では若干車室内が静かに感じ取れる。速度を60~80km/hへと高めてみると、風切り音が高まらず静かな室内環境が維持されている。シビックe-HEVは場面に応じてEV走行モードになるので、標準でも室内は静かだ。だが、実効空力装着状態だと、それが40~80km/h域と車速が高まっても変わらないのだ。
走行当日の路面はセミウエットで落ち葉が多く、絶好のコンディションとはいえなかった。それでも、まるでボディ剛性が向上したかのような佇まいの向上を感じ取ることができた。
じつは実効空力の効果はボディ剛性を高めたような乗り味を目指していたという。現地にはボディ剛性の変化を体験できるフィットの試験車が用意されていて、さまざまな補強パーツを取り付けたり外したりして走行フィールの違いを体験することができた。アクセスではこの試験車でテストドライバーの感性を鍛え、目指すべき効果を実感させることを目的としているという。
空力装置だけで車体剛性を高めたのと同等の効果が得られるのならコスト的にも重量的にも極めて有効だ。シェブロン形状の発見が、そんな夢のような空力パーツの実現へと大きなステップを可能としたのである。
最後に新型シビックRSの6速MT仕様に実効空力パーツを装着して一般公道路を走ってみた。RSを走らせるのは初めてだったが、その上質な乗り味はタイプRの走り味とは明らかに異なり、快適で質感が高い。
e:HEVと同等の快適さにタイプR譲りのボディ剛性を実感した。いや待てよ、この走行フィールは実効空力装着効果によるものなのか? そんな事を感じながら、まるで狐に摘まれたような気分で、ただ間違いなく効果があると確信することができる試乗テストとなったのだ。
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