耐久性の向上へ注力されたアップデート
アップデートされたトヨタGRヤリスが、グレートブリテン島へ初上陸した。同社は当初、ちょっとマニアックなモデル過ぎるという理由で、マイナーチェンジを予定していなかったらしい。
【画像】ホットハッチの「キング」 トヨタGRヤリス 競合の有能モデル GRを冠したカローラと86も 全134枚
ところが蓋を開けてみれば、GRヤリスは世界的な人気を獲得。これまでに3万2000台がラインオフし、トヨタのラインナップの1つとして定着したといっていい。能力を引き上げるため、改良を施す余裕が生まれたようだ。
むしろ発売当初から、GRヤリスには望ましい運命が待っていたといえる。トヨタが約20年ぶりにゼロから開発した高性能モデルであり、モータースポーツで培った技術を活かし設計されている。
2020年以降、ここまでの熱狂を巻き起こしたクルマは、他に例がないといっていい。日本車に限らず。AUTOCARでの評価は高く、お手頃ドライバーズカー選手権で優勝。年末恒例の英国ドライバーズカー選手権でも、好成績を残している。
改良の概要を見ていくと、耐久性の向上へ注力されたことがわかる。ラジエーターを覆うグリルメッシュは強化され、冷却効率も良くなった。リアのバックライトは、高音の排気ガスがかかるマフラーの間から、テールライト・クラスター側へ移動した。
ボディシェルは、スポット溶接のポイントが15%増え、塗布される接着剤も15%長くなっている。フロントストラットのマウント部分も、剛性が高められた。ブレーキとホイールは従来どおりで、タイヤサイズも変わらない。
人間工学と前方視界を改善 最高出力280psへ
インテリアは、人間工学と前方視界を改善。ダッシュボード上のスイッチ類は、レースハーネスを着用したり、社外品のバケットシートを組むと見えなくなる可能性があり、ドライバーへ近い位置に移動された。
メーターパネルは従来より50mm位置が低くなり、バックミラーは25mm持ち上げられた。シートの取り付け位置も、25mm落とされている。
これらの違いは、前期型に乗り慣れていれば瞭然。バックミラーを避けるように顔を傾け、斜め左方向を確認する必要はなくなった。ちなみに、大きなメーター用モニターも、副産物として得ている。
快適性も増した。望ましい運転姿勢に落ち着け、ステアリングホイールとメーターパネルの位置関係も好ましい。内装素材に触れるべき特徴はないが、車重1300kgの軽いホットハッチだから、豪華さを期待する方がお門違いだ。
1.6L 直列3気筒ターボエンジンとマニュアル・トランスミッションは、内部構造を変更。英国仕様の最高出力は259psから280psへ、最大トルクは36.7kg-mから39.7kg-mへ増強された。オプションで、8速オートマティックも選択できるようになっている。
試乗車も、その8速ATだった。ただし車重は、6速MTより20kg増える。
シフトレバーがDの位置へあるかぎり、ATは回転数を低めに保ちながら、素早くシフトアップ。3気筒エンジンからは、ややザラついたノイズが小さめに聞こえてくる。
Mモードで表出する愛すべき特性
前期型のオーナーなら、8速ATのGRヤリスは不思議なほど大人しく感じられるだろう。しかし、去勢されたわけではない。
本来のエネルギッシュさは、シフトレバーを横へ倒し、M(マニュアル)へ入れると表出する。自らギアを選べるようになり、愛すべき特性を堪能できる。パワーアップしつつ、前期型に並ぶ喜びへ浸れる。
英国仕様では、サーキットパッケージの設定は消滅。後期型では、トルセンLSDとハードなサスペンションが標準装備になった。
スプリングレートは、前が46N/mmで、後ろが40N/mm。改良前のサーキットパッケージは、前後とも36N/mmだった。アンチロールバーも、前側が引き締められている。
ドライブモードの各名称も改められ、四輪駆動システムのトルク分配も変更された。ノーマル・モードは、60:40で前寄り。グラベル・モードは53:47、トラック(サーキット)・モードはリアへ伝わる割合いが40~70で可変する。
スプリングレートの上昇率を考えると、乗り心地は想像以上に優しい。確かに硬い側にあるが、吸収性はお見事。荒れた路面を通過しても、ダイレクトな衝撃へ襲われたり、落ち着きを失うことはない。
素早く入力を処理し、即座に次の入力へ備える。スピードが高まるほど、気持ち良く運転できるクルマの典型だ。
ホットハッチのキングに変わりなし
前期型より機敏で楽しくなった、とまではいえないだろう。タイトな足まわりのおかげで、コーナリングはフラットになり、旋回能力は高まったといえる。しかし旋回初期やブレーキング時の回頭性は、やや穏やかになったように感じた。
リアタイヤへ分配されるトルク割合いが増え、サーキットのような環境では、コーナー出口での鋭い脱出を叶えている。反面、速度域が低い公道では、フロントノーズが引っ張っていく印象も増した様子。前期と直接乗り比べれば、という違いだが。
バックライトを溶かすほど攻めなければ、前期型でも公道では同等の喜びを味わえるように思う。既存オーナーが、そこまで意識する必要はなさそうだ。
だとしても、後期型のGRヤリスがシリアスさを増し、一層能力を高めたことは間違いない。いうまでもなく、抜群に面白い。満点の評価を与えるべき、エンターテインメント性を宿している。ホットハッチのキングという立ち位置に、変わりはない。
さて、英国価格はMT仕様で4万4250ポンド(約903万円)から。ATでは4万5750ポンド(約933万円)へ上昇する。期間限定の特別仕様は、6万ポンド(約1224万円)に達するという。
供給数が限られ、開発・製造コストがかさむことは理解できる。前期型はお買い得だったと実感するが、この数字を聞いても、GRヤリスが好きな気持は変わらない。トヨタは、地球上で最もエキサイティングな自動車メーカーの1社になったようだ。
◯:この存在自体 優れた動的能力による驚異的な走り 適度なコンパクトさと魅力的な操縦性
△:薄まったお買い得感 AT任せの時のエンジン・フィーリング 勢いよく閉める必要があるテールゲート
トヨタGRヤリス・オートマティック(英国仕様)のスペック
英国価格:4万5750ポンド(約933万円)
全長:3995mm
全幅:1805mm
全高:1455mm
最高速度:230km/h
0-100km/h加速:5.2秒
燃費:10.5km/L
CO2排出量:215g/km
車両重量:1300kg
パワートレイン:直列3気筒1618cc ターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:280ps/6500rpm
最大トルク:39.7kg-m/3250rpm
ギアボックス:8速オートマティック(四輪駆動)
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みんなのコメント
扱いやすいサイズ
好きですヤリス。
ただの馬力高いコンパクトカー
美しくない