ジェイソン・ステイサムといえば、数々のカーアクション好きにはたまらない大人気俳優だ。『トランスポーター』ではBMWで運び屋を演じ、『ワイルド・スピード』シリーズでも活躍している。
そんな彼が元レーサーの囚人として刑務所主催のレースに参戦すアクション映画が『デス・レース』だ!
カーアクションでおなじみのジェイソン・ステイサム主演でリメイク!! 名車が爆走する「デス・レース」を楽しもう
文/渡辺麻紀
写真/NBCユニバーサル・エンターテイメント
(C) 2008 Universal Studios and H2S2 Filmproduktionsgesellschaft mbH & Co. KG. All Rights Reserved.
■当企画常連俳優!? 安心安定のステイサム・クオリティ
1975年のカルトムービー「デス・レース2000年」のリメイク、「デス・レース」。主人公を演じるのはご存知ジェイソン・ステイサム! (C) 2008 Universal Studios and H2S2 Filmproduktionsgesellschaft mbH & Co. KG. All Rights Reserved.
このコラムでもっとも取り上げられているスターのひとり、ジェイソン・ステイサム。アクションスターの多くがでっかい身体にモノ言わせている傾向が強いなか、ステイサムはどちらかというと小柄。引き締まったボディとバツグンの運動神経を武器に、あらゆるアクションをこなしている。
そんな彼が出演したカーアクション映画が、ポール・W・S・アンダーソン監督の『デス・レース』(08)。無名時代のシルベスター・スタローンが出演してたことでも知られる75年の低予算B級アクション『デス・レース2000』のリメイクだ。
オリジナルの“デス・レース”はニューヨークからロサンゼルスまでの大陸横断レースで、走行中に普通の市民を轢き殺してポイントを加算するというヤバすぎる設定が特徴だった。
リメイク版の本作は、オリジナルを愛するアンダーソンが13年の歳月を費やして実現したプロジェクトで、当初のタイトルは『デス・レース3000』。遠い未来を舞台にしたカーアクションの予定だったが、資金面を考慮して近未来に変更され、タイトルも『デス・レース』になった。
完成した作品の舞台は、経済が破綻した2012年のアメリカ。
犯罪があふれ、刑務所の運営が営利目的の民間企業に移行したことで、“デス・レース”が開催されることになる。経営者がその様子を世界中にネット配信して莫大な利益を得るという構図だ。ノールールの熾烈なバトルを繰り広げるのは囚人だけでコースも限られた場所になる。
そんななか、主人公の元スゴ腕レーサー、エイムズを演じるのがステイサム。ワケあって投獄され、人気者だったが事故死してしまった仮面のレーサー、フランケンシュタインの身代わりとなってレースに参加するハメに陥る。
レースが行われるのは巨大な刑務所の敷地内(だと思う)。そのレースコースを3周し、生き残ったヤツが優勝になる。経営者はとことん邪悪で、視聴者が喜ぶようにさまざまなワナを仕掛けてきて、こちらのほうがより手ごわい敵というのもミソだ。
■マシンガンにスモーク! 元の形が分からなくなるほどの極悪改造!
ステイサムが駆る2006年式フォード マスタングGT。悪~い装備が盛りだくさん! (C) 2008 Universal Studios and H2S2 Filmproduktionsgesellschaft mbH & Co. KG. All Rights Reserved.
さて、そこでチェックしたいのが、彼らが駆る車。『デス・レース2000』ではコルベットやオペルマンタ等に装飾を施しマシンガン等を搭載したデザインで、これが今観るとかなり漫画っぽいというか遊園地っぽい。
この車で人を轢き殺すところが、本作のカルトな理由のひとつだと思うのだが、さすがにそのままというわけにはいかず、2008年版は『マッドマックス』風のリアルかつハードバージョン。風景も荒廃した近未来そのままだし、ステイサムが駆る2006年のフォードマスタングGTにも、より過激な改造が施されている。
もちろん防弾ガラス仕様で、ボンネットにはミニガン2挺、リア部分には“墓石”と呼ばれている厚さ2センチの鉄板が内蔵、スモークとナパームとオイル、さらに250馬力のニトロも搭載という、メカニック曰く「最高の車をより最高にした」という最強の改造車だ。
ただし、このミニガンやスモーク、“墓石”はいつでも使えるわけではなく、路面に設置されたプレートを踏むことでロックが解除される設定。“盾”のマークの上を通れば“墓石”が立ち上がり、“剣”だと銃器が使えるようになるわけだ。
こういうゲーム感覚は、やはり自身がゲームおたくな監督アンダーソンならではのアイデア。『バイオハザード』シリーズ(2002~)や『モータル・コンバット』(1995)、『モンスターハンター』(2020)等、人気ゲームの映画化を数多く手掛けただけはあるこだわりだろう。
このマスタングに対抗するのは、ピックアップトラックのダッジ・ラム。ライバルの“マシンガン・ジョー”の車で、こちらもボンネットには機関銃を4挺、さらにルーフにも機関銃を搭載し、マスタングと命を懸けたレースをみせる。
ちなみにこのマシンガン・ジョーを演じているのはタイリース・ギブソンで、本作ののち、ステイサムと『ワイルド・スピード』シリーズでも共演を果たしている。
そのほかにも、高級車の面影もなくなってしまったビュイック・リヴィエラ、同じくポルシェ911、ジャガーXJS、ポンティアック・トランザム、クライスラー300C等が、文字通り命をかけて疾走する。
もちろん、マスタングと同じくそれぞれにはマシンガン、鉄ビシまでもが搭載されているし、ルックスもオリジナルの姿を思い出すのが難しいほどボロボロ。
そのため、車を愛でるのは難しいかもしれないが、カーアクションとしての迫力は格別。ハイスピードで疾走しつつ、あらゆる手練手管を使ってライバルを蹴落とすというアクションをずーっと続けているからだ。
そもそも、110分のランニングタイムの半分以上の時間がカーアクションに費やされているんじゃないかと思えるほどの充実っぷり。だからなのか、映画の最後に「これはプロフェッショナルがやっています。絶対に真似しないでください」というテロップが流れる。
このテロップが公開当初からあったかは判らないが、真似して走りたくなる人がいたのかもしれない。
本作の撮影で使われた車は35台。その車を整備するためのメカニックが常時85人も待機していたという。また、それぞれの車にかけた改造費は、1台につきおよそ25万ドルから30万ドル。いまのレートで日本円に換算すると3500万円から4200万円。
高級車が何台も買えてしまう金額を、改造するだけにつぎ込んでいるのだ。ちなみに、本作には車以外の乗り物も登場するのだが、その“隠し玉”は映画を観てのお楽しみと言っておこう。
●解説●
かつてストックカーレーサーとして名を馳せたエイムズ。経済が崩壊した現在は工場で真面目に働くよき夫であり父親だ。ところが、ある日、愛すべき妻が何者かに殺され、その犯人として逮捕されてしまう。
そんな彼が放り込まれた刑務所では、経営者主催による情け無用のデス・レースが開催され人気を博していた。エイムズは、事故死した仮面の人気ドライバー、フランケンシュタインの身代わりを命じられる。
オリジナルの『デス・レース2000』はB級映画の帝王なる異名をもつ、かのロジャー・コーマンのプロデュース作。リメイク版の本作でも彼が製作に名を連ねているのは、コーマンの映画を観て育ったアンダーソン監督のこだわりに違いない。
本文で13年の歳月を費やしたと書いたが、そもそもの始まりはこのコーマンがアンダーソンの長編デビュー作『ショッピング』(94)を気に入り、自社でアメリカ配給をしたことからだった。
そのときコーマンはアンダーソンに会い、「どんな作品を撮りたいか」と尋ねたところ、『デス・レース2000』のリメイクを挙げたのだ。コーマンにとっても苦節13年の作品だったことになる。
そして、オリジナルの主人公を演じたデビッド・キャラダインが、冒頭のレースシーンに登場する仮面のレーサー、フランケンシュタインの声を担当。この粋なカメオ出演にオリジナルファンが大喜びしたのは言うまでもない。
先ほど、ステイサムを“小柄”と書いたが、本作の彼は上半身裸シーンがあったためか、これまでにないマッチョなボディになっている。何でもネイビーシールズの元兵士のトレーニングを3カ月受けて作った身体だという。
本作はスマッシュヒットを記録して、10年には続編の前日譚『デス・レース2』、3作目になる『デス・レース3 インフェルノ』(2013)が製作された。『2』で使われた車はフォードマスタングGTを筆頭に『1』と同じ。
この2作はビデオ用として作られて劇場公開はされなかったが、『2』の出来はまずまずで、シリーズファンの人気も高い。どちらも主人公を演じているのは、ミュージシャンとしても知られるルーク・ゴスだった。
* * *
『デス・レース』
Blu-ray:2,075円(税込)/DVD:1,572円(税込)
発売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント
(C) 2008 Universal Studios and H2S2 Filmproduktionsgesellschaft mbH & Co. KG. All Rights Reserved.
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みんなのコメント
むしろAUDIのイメージですね。
ドラマ版もリメイク版もそうですし。