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三菱のSUVは全方位で進化した!──新型アウトランダーPHEV試乗記

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三菱のSUVは全方位で進化した!──新型アウトランダーPHEV試乗記

フルモデルチェンジした三菱自動車(以下、三菱)の新型「アウトランダーPHEV」のプロトタイプに小川フミオが試乗した。クローズドコースでの印象とは?

サーキットで試乗会を開催したワケ

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三菱自動車の新型アウトランダーPHEVがかなりいい。プラグ・イン・ハイブリッドのSUVで、走りも曲がりもいいし、燃費もすこぶる良い。

9月中旬に開催されたプロトタイプの試乗会で体験した新型アウトランダーPHEVは、量産車が出てきたあかつきには、クルマ好きにも自信をもって勧められそうだ。

アウトランダーPHEVは、全長4710mm、全高1745mmのSUVだ。「出かけたら無事に戻ってこられる」のが三菱自動車のクルマづくりのコンセプトといい、オフロードむけドライブモードも充実。プロトタイプでオフロードは未体験であるいっぽう、舗装路での走行性能はかなりのものだ。

驚いたのは、プロトタイプの試乗会の舞台が、サーキットだった点。なにしろ、あたらしいアウトランダーPHEVには3列シート仕様まで用意されるのだ。むしろ山道とかでキャンプに行けますよ、っていう打ち出しのほうがよかったのでは?

開発陣に、そう言ったら、「それはそれで自信があるけれど、なにより運転が楽しめるクルマとして訴求したいので、まずはサーキットで試してもらいたかったんです」という答えが返ってきた。

あたらしいアウトランダーPHEVは、ルノー・日産アライアンスで開発した新型プラットフォームを使う。これが第1の特徴。すでに、北米ではガソリン・エンジンモデルがデビューしているし、日産も、北米では新型「ローグ」(日本名エクストレイル)に、このプラットフォームを使っている。

三菱自動車では日本市場むけに、プラグ・イン・ハイブリッド(のみ)を用意する。あたらしいアウトランダーではモーターの総出力を引き上げた。くわえて、ツインモーター4WDをベースにした独自技術の「S-AWC」を改良して、後輪左右のトルク配分まで可能になったという。

新型はよく走ります

ひとことでいって、体感的にかなりパワフルになっている。かつ、ドライブが楽しい。

数値では、これまでのアウトランダーPHEVと比較した場合、フロントモーターの出力が60 kWから85kWに、リアモーターが70kWから100kWにパワーアップ。駆動用バッテリー容量も、12.8kWhから20kWhへ上がった。

エンジンは2359cc直列4気筒ガソリンNAだ。燃料タンクの容量を45リッターから56リッターへ拡大したそうで、これも興味ぶかい。より長距離走行を意識した改良だ。

サーキットを走らせると、ドライブモードのうち標準の「ノーマル」で充分に加速がよく、楽しいのに感心した。基本的には大トルクのモーターが動き、ぐいぐいと車体を加速させていく。一般の舗装路面用には4つのモードが設定されていて、ドライバーは任意で選べる。

モーターとエンジンをどう使うかは、選んだモードと、走りかたで決まってくる。制御はかなり細かい。興味ぶかいのは、走りを楽しみたいときのために、「パワー」と「ターマック」(舗装路)というふたつのモードが用意されていることだ。

「パワー」は、動力性能最優先というモード。システムの最大出力が出る設定で、同時に、アクセルペダルを踏み込んだときのレスポンスを高め、エンジンパワーも積極的に使う。いっぽう、走るとき、曲がるとき、止まるとき、それぞれの場面で、車輪の駆動力を最適配分するS-AWC(スーパー・オール・ホイール・コントロール)というシステムは、パワーモードでは安定性重視となる。

「ターマック」は、メーカーの説明によると「乾燥舗装路面でのスポーツ走行向き」のモードだ。アクセルペダルを踏み込んだときのレスポンスは「パワー」モードより抑えめであるいっぽう、エンジンを積極的に使ってパワフルな走行をめざす。いっぽう、S-AWCはコーナリング時の旋回性を重視する。ステアリングのパワーアシスト量も抑えめ(重め)にして、わかりやすいスポーツ性を演出しているのも特徴といえる。

たしかに、サーキットの直線に入ったところで、ふたつのモードのちがいを確かめてみると、「パワー」のほうが加速は鋭い。ダッシュ力の強さにはおどろく。しかし、タイトに作られた複合コーナーを抜けるときは、「ターマック」のほうが扱いやすかった。

新型ではステアリング・システムが改良を受けたうえに、さきに触れた「S-AWC」がブレーキをうまく使いながら、車体姿勢を制御しているのだろう。“速度がやや高すぎるかな?”と、思いながら、タイトコーナーに入っても、タイヤ鳴きすらなく、スイっと曲がれてしまう。SUVを操縦しているとは思えないほど、痛快かつ軽快な走行感覚を味わえるのに感心した。いっぽう静粛性は高く、オールマイティである。

戦略的な価格

プラグ・イン・ハイブリッドの特徴を活かして、「イノベーティブペダルオペレーションモード」のスイッチをオンにすると、回生ブレーキが強く働き、アクセルペダルを踏む力を緩めただけで強く減速する。いわゆる“ワンペダル走行モード”が使える。これは市街地で楽チンであるいっぽう、自分なりのドライブを楽しみたいときはオフに出来るのがよい。

バッテリー出力をあげたのは、「極力エンジンを始動させないため」と、三菱では説明する。EV走行換算距離は最大で83~87km(WLTCモード)に達するという。

外部充電は3通りだ。EV充電用コンセントによる「普通充電」(約7.5時間で満充電)、街中での「急速充電」(約38分で80%まで充電)、そして「エンジンを発電機として使う充電」(停車しながら約94分で80%まで充電)だ。

新型アウトランダーPHEVの価格は462万1100円から。競合他社の一般的なハイブリッド仕様のSUVに負けない戦略的な価格であるそうだ。

文・小川フミオ 写真・安井宏充(Weekend.)

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