最近は「電動化」という言葉が頻繁に使われる。一部にはエンジンを搭載しない電気自動車という認識もあるが、正確にはハイブリッド、プラグインハイブリッド、燃料電池車なども含まれる。電動機能を搭載すれば、エンジンを併用しても電動車だ。
その意味で電動車の国内販売比率は、急速に高まっている。2010年には、国内の新車(乗用車)に占める電動比率は約12%だったが、2020年は36%に達した。小型/普通乗用車に限ると40%近くになる。
脱炭素でEVに駆逐されるってマジ!? ハイブリッドはいつまで生き残れるのか
2010年の時点では、アクアは登場しておらず、ハイブリッドはプリウス、インサイト、シビックハイブリッドなどに限られた。それが今では、ヤリス、ノート、フィットなど、売れ筋車種の大半にハイブリッドが用意される。その結果、電動比率も大幅に増えた。
その一方で、ハイブリッドを含めた電動化が困難な車種もある。
文/渡辺陽一郎 写真/編集部、TOYOTA、SUZUKI、NISSAN
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悪路向けのSUV:ランドクルーザーなど
悪路走行向けのSUVの代表格であるランドクルーザー。写真は、2014年に日本でも期間限定で再販されたランドクルーザー70
電動化が困難な車種の代表が悪路向けのSUVだ。ランドクルーザーやハイラックスのように、副変速機付きの4WDを備える後輪駆動ベースのSUVは、ハイブリッドなどの電動化が難しい。
その理由は「必ず生きて帰ってこられること」を、最も大切な機能とするからだ。
2021年3月15日に掲載した「新型ランドクルーザーは5月発表へ!!」でも述べたとおり、ランドクルーザーのような悪路向けのSUVは、生活のために激しい悪路を走る。雨季には川が道を横切ったり、デコボコの激しい泥道の急斜面を登ることもある。
このようなルートで立ち往生すると、救援も難しく、乗員の生命にまで危険が及ぶ。従って生還できることが最優先され、ユーザーは今までの実績を重視する。
新型になって走行安定性、乗り心地、安全装備などが進化しても、その替わりに悪路走破力が少しでも下がり、立ち往生すれば生還が不可能になるからだ。
そのために1984年に登場したランドクルーザー70シリーズは、海外では今でも新車として売られている。40年近くにわたり、ユーザーを生還させてきた実績が重視されるからだ。
従ってランドクルーザーのような悪路向けのSUVでは電動化が難しい。新しい機能やメカニズムを採用すると、そのぶんだけ故障因子も増えるからだ。
仮に電動化するとしても、地域によって対応が変わる。日本仕様はハイブリッド化できても、過酷な使われ方をする地域では、従来のメカニズムを搭載する。
走行距離も含めて過酷に使われる商用車:ハイエースなど
耐久性が高く設計されている商用車は、全般的に価格が高額となる。ハイエース スーパーGLの場合、306万1000円。ハイブリッドになった場合、価格が40万円弱以上高くなると予想される
商用車は1年間に数万kmを走る場合もあり、乗用車に比べて走行距離が長くなりやすい。重い荷物を運ぶことも多く、エンジン、プラットフォーム、サスペンションまで、さまざまな機能で耐久性が重視される。
プロボックスのようにハイブリッドを搭載する商用車もあるが、ワンボックスバンのハイエースなどは使われ方も過酷だから、電動機能の信頼性も高めねばならない。
そして商用車の価格は、耐久性を高めたこともあって全般的に高額だ。例えばハイエースでは、直列4気筒2Lガソリンエンジンを搭載するベーシックな5ドアバン「DX」の3/6人乗りでも、価格は248万5000円(6速AT)になる。
5ドアバン「スーパーGL」になると、成形天井など内外装の質を高め、リアクーラーも標準装着されるから、2Lガソリンエンジン搭載車でも価格は306万1000円だ。この「スーパーGL」に、両側スライドドアの電動機能、スマートエントリー&スタート、LEDヘッドランプなどをオプション装着すると330万円に達する。
この「スーパーGL」をハイブリッド化すれば、価格がさらに40万円は高まるから370万円だ。4WDなら400万円になる。アルファード「ハイブリッドX」(8人乗り)は、4WDを併用して454万7000円だから、ハイエース「スーパーGL」にハイブリッドを加えたら、これに近い価格になってしまう。
また、ハイエースは後輪駆動の商用車で、荷室を平らに仕上げた。前輪駆動ミニバンのアルファード、後輪駆動でもセダンになるクラウンハイブリッドなどとは、車内の作りが大きく異なる。
ハイブリッド化するには、リチウムイオン電池などの搭載位置にも工夫が必要だ。独自性が強いため、価格が高くても大量に販売できる見通しがないと、ハイエースにハイブリッドを設定するのは難しい。
その点でモーター機能付き発電機を搭載して、減速時の発電/アイドリングストップ後の再始動/エンジン駆動の支援を行うマイルドハイブリッドであれば、7~10万円の価格上昇で成立する。
メカニズムもコンパクトで搭載しやすい。その替わり燃費向上率も3~5%と小さく、マイルドハイブリッドでは搭載するメリットも弱まる。
軽トラックや軽ワンボックスバン/エブリイやハイゼットなど
キャリィなどの軽商用車は、重い荷物を運ぶことが多くため、CVTではなく5速MTと4速ATが採用される。軽商用車は、燃費の向上が厳しく、もしハイブリッドを搭載しても改善するのが難しいとされる
価格を安く抑えることが求められる軽自動車には、今のところ本格的なストロングハイブリッドは用意されない。
それでも前述のマイルドハイブリッドは、スズキや日産が幅広い車種に搭載するが、軽自動車のトラックやワンボックスバンでは難しい。前述のとおり燃費向上率が小さく、価格も7~10万円は高まるからだ。
しかも軽商用車は、エンジンの排気量や動力性能の割に重い荷物を運ぶ。従ってN-VANなど一部の車種を除くと、軽商用車に軽乗用車のようなCVT(無段変速AT)は採用されない。5速MTと4速ATが中心だ。
そうなると燃費の向上が難しい。乗用車のタントでは、ノーマルエンジンを搭載する2WDのWLTCモード燃費は21.2km/L、JC08モード燃費は27.2km/Lだが、ハイゼットカーゴは大幅に下がる。ノーマルエンジンの2WDは、4速ATの場合、WLTCモード燃費が14.1km/L、JC08モード燃費でも17.8km/Lになる。
エブリイもノーマルエンジンで2WDの4速ATは、JC08モード燃費が17km/Lだ。軽商用バンの燃費数値は、全高が1700mmを超える軽自動車乗車と比べても、65%前後に留まって燃費を向上させにくい。
1組のクラッチを使った有段ATの5速AGS仕様のJC08モード燃費は19.4km/Lに向上するが、それでも20km/Lには達しない。
このように軽商用車は、仮にハイブリッドを搭載しても、燃費を向上させるのが難しい。そうなると乗用車と同様の燃費規制を課せば、軽商用車の成立が困難になってしまう。
その一方で軽商用車は、日本の物流を支える大切な存在で、社会インフラでもある。軽商用車はボディとエンジン排気量が小さいため、小型/普通商用車に比べると本質的に環境負荷が抑えられる。地域内の配達などが中心で、走る距離も短いから、燃費規制にも別枠を設けるべきだ。
純粋なスポーツカー:フェアレディZなど
発売が期待される次期型フェアレディZにはV型6気筒3Lターボエンジンが搭載見込みで、今後ハイブリッド化することは可能だろう
ここまで紹介した例と比べると、スポーツカーは、現時点では電動比率が低いものの、今後の充実が期待される。
次期フェアレディZは、V型6気筒3Lターボエンジンのみになりそうだが、ハイブリッド化しても支障はないだろう。レクサスのLCやRCでは、すでにハイブリッドが用意され、GT-Rもマイルドハイブリッド化される可能性がある。
今後はすべてのクルマを画一的に電動化するのではなく、可能な分野から手掛けていくことが大切だ。
電動化に向けた制度を作る時は、厳しい経済環境下で仕事のためにクルマを使うユーザー、環境性能の向上とコスト低減の間に挟まれながら尽力している開発者など、現場で働く関係者の声をしっかりと汲み取って欲しい。そうしないと不幸な結果を招く。
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みんなのコメント
よく書くけど、あなたのご贔屓な日産だって
海外では似たようなものだろ。
そういうことを棚に上げるから
安置がバレバレなんだよ。
小さめの補助バッテリーに幾らかでも回生電力を貯めて、僻地でメインバッテリーが死んでもエンジン始動ができますといった具合にさ。