「衝突時に何が起きるか」を目の当たりにする
クルマの衝突事故を目撃する人はほとんどいない。それは良いことだが、事故原因を解明しなければならない警察や、事故後の対応に追われる弁護士や保険会社にとってはそうとも限らない。
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だからこそ、英国の交通事故調査協会(ITAI)は毎年「クラッシュ・デイ」を開催している。その名の通り、クルマの事故に特化した1日で、協会の会員や関連サービス関係者も招待される。
こう疑問に思う人もいるかもしれない。ユーロNCAPのような機関が最新モデルの衝突試験を行っているのに、なぜITAIが同じことを1日かけて行う必要があるのかと。
「ユーロNCAPの試験は重要ですが、性質が異なります」と説明するのは、独立事故調査員クリス・ゴダード氏だ。彼は英国の警察でも同様の業務に従事した経験があり、クラッシュ・デイでは写真撮影を担当していた。
「ユーロNCAPの衝突試験は厳密に管理され、車両の安全性を検証することを目的としています。一方、ITAIの試験はより現実的な状況に近く、調査員の理解力を高めることが目的です。今日の実験をいくつか見た後、(調査官は)いつか事故現場に赴いたとき、似たようなタイヤ痕や損傷を見て、『何が起きたか分かった。あの損傷や痕は以前にも見たことがある』と言うかもしれません」
今年のクラッシュ・デイは、ダービーシャー州アッシュボーン近郊のダーリー・ムーア飛行場で行われた。ここは英国空軍の元訓練基地(現在はモータースポーツやイベントの会場)だ。
高速衝突試験が滑走路の短い区間で行われ、低速衝突試験はその隣のエリアで実施された。衝突試験に用いられる車両は24台で、そのほとんどが警察に押収された、あるいは裁判所命令の対象となったハッチバックだった。
標識柱や道路脇のキャビネットといった障害物、そして停車中の車両との衝突など、12件の衝突試験が計画されていた。車両はすべて遠隔操作で運転される。
その日の最初の衝突実験では、ヴォグゾール・メリーバが90km/hの速度でアルミ製ポールに激突した。このポールはパッシブ・オブジェクトと呼ばれ、乗員に重傷を負わせずに車両を減速させるよう設計されたものだ。メリーバのフロントエアバッグは両方とも作動したが、フロントガラスは無傷で、キャビンはバルクヘッドにより保護されていた。
衝突後、車両は約100m転がり続けた。舞い上げられた塵が落ち着いた後、見学者が車両を取り囲み、損傷箇所や現場を調べた。
その後、ルノー・クリオが100km/hで従来の非パッシブ式標識柱に衝突した。結果は先ほどのポールと大きく異なった。標識柱は車両前部を破壊し、ほぼ瞬時に停止させた。もし人が乗っていたら、この衝撃で乗員は命を落とすか、少なくとも重傷を負う結果となったであろう。
しかし、一部の参加者は、衝突の結果は前の実験より深刻だったものの、少なくとも車両の移動は阻止されたと主張した。
ゴダード氏は、昨年行った同様の実験を振り返り、その時は標識柱が車両底面に傷跡を残したと語った。
「標識柱は坂道のような働きをして、車両を空中に跳ね上げ、シャシーに引っかき傷を残しました。衝突と傷跡を目にしていなければ、同様の損傷には意識を向けないでしょう。法医学には『あらゆる傷は痕跡を残す』という原則があります。自動車事故では数千もの接触点が生じます。わたし達の仕事はそれらの原因を解明することです」
保険会社などの事故調査に活用
低速衝突ゾーンで行われた事故の1つは、トヨタ・オーリスが後退してスズキ・ヴィターラの側面に衝突するというものだ。オーリスの速度は8km/hだったが、これが実際の事故であれば、ヴィターラはドアとシルに受けた損傷によって全損扱いとなる可能性が高い。
英国の損害査定会社クエストゲイツの調査員は、こうした事故現場の検証がギャップ(GAP)保険関連の請求対応に有益だと述べた。
「保険会社が車両を全損扱いする傾向が強まり、PCP(ローン期間)終了間際に偽装事故を起こす人も増えています。この問題は深刻化しています」と調査員は語る。
同席した保険会社側の弁護士は、「わたし達は保険会社に対し、根拠のない人身傷害請求への対応を支援しています。本日の衝突実験は、日常では経験できない事態を可視化し、わたし達のような専門家が結果を把握する良い機会となります」と付け加えた。
その後も衝突実験が続いた。高速側面衝突や、歩行者ダミーとフォルクスワーゲン・ゴルフが衝突する実験(ダミーの頭部がフロントガラスを粉砕)などだ。しかし、終盤に差し掛かる頃、最も注目を集めたのはトラックへの高速追突実験と、停車中の車両列への追突実験であった。
前者では、ジャガーXタイプが約100km/hで7トンのトラックに追突した。車両の半分がトラックの下に潜り込むという、悲惨な結果となった。
「ダッシュボードがあんな風に折れ曲がるのは初めて見ました」とゴダード氏は言う。「これまで遭遇したことのない損傷を目の当たりにし、その原因を知るということに価値があるのです」
大トリは別のジャガー、今度はSタイプが約120km/hで停車中の4台(ヴォグゾール・アストラ、マツダ3、プジョー308、プジョー207)の後方から追突した。当然ながら、ジャガーとヴォグゾールの損傷が最も激しく、残りの車両はそれぞれ前部・後部の損傷具合が段階的に軽減していった。
予測可能な結果に見えたが、ゴダード氏は常に新たな発見があると話す。「見てください、マツダのエンブレムの跡がプジョーの背面に残っています。こんなことは初めてです!」
これまでに調査した数々の衝突事故を踏まえ、どのメーカーのクルマが最も優れた衝突保護性能を持つか尋ねてみた。「間違いなくボルボです」と彼は答えた。「ボルボにとって安全性は単なるマーケティングツールではなく、DNAの一部です。それが結果に表れています」
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