現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 【ヒットの法則436】プジョー207SWはひとクラス上の307に近い内容を持っていた

ここから本文です

【ヒットの法則436】プジョー207SWはひとクラス上の307に近い内容を持っていた

掲載 更新
【ヒットの法則436】プジョー207SWはひとクラス上の307に近い内容を持っていた

2008年4月、プジョー207SWが日本上陸を果たした。ハッチバック、クーペ&カブリオレのCCに続いて、SWが登場したことで、207シリーズが完成したことになる。ではこの207SWにはどのような狙いがあったのか。今回は1.6L NAエンジンを搭載したベーシックな207SWの試乗記を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine2008年6月号より)

リアセクションの重さを感じさせないアローライクフォルム
デビュー時の5ドアハッチバック以来、スポーツハッチのGT、ホットハッチのGTi、クーペ&カブリオレのCCと意欲的にそのバリエーションを増やしてきた207シリーズ。欧州市場では発表2年もたたないうちに、既にミリオンセラーを記録するヒット作となっている。

●【くるま問答】ガソリンの給油口、はて? 右か左か、車内からでも一発で見分ける方法教えます(2020.01.21)

人気の理由としては、Bセグメントでありながらひとつ上、Cセグメント級の実力を備えるという、近頃流行りの「ワンランクアップ作戦」が効いていること、そして個性溢れるスタイリングを挙げることができる。

そんな207シリーズだが、日本仕様において、このたびラインアップにひとまずの完成を見た。プジョーで定番となっている、人気のSWシリーズが追加されたのだ。

SWの位置付けは「ハッチバック以上」というもので、スタイリッシュさが命のプジョーデザインにはうってつけのカタチ。SWという名称には荷室を広げただけのステーションワゴンではないという意味が含まれている。ドイツ車好きならば、アウディのアバントを思い出せば、わかりやすい。

新型207SWに関しても、やはりリアセクションのデザインに注目が集まりそうだ。206SWには取って付けたかのような違和感があったが、今回はそれもまったく感じさせない。206とは違って、ハッチバックと同時にSWの開発も進められたからだ。

大型リアランプと逆方向に切れ込んだリアウインドウが作り出す「アローライクフォルム」が印象的だ。SW化に伴ってハッチバックよりリアオーバーハングを120mm伸ばしているが、そのことによるリアセクションの見た目の重さを打ち消すようデザインされている。全体のシルエット的にも荷室が長くなった、ワゴンっぽくなったという印象はほとんどない。普通のハッチバックモデルとまったく変わらない印象を持つほどだ。

実際、207ハッチバックがその場になければ、SWと気付かない人もいるかもしれない。ルーフ面が巨大なガラスで覆われているのも外観上の見どころのひとつだ。

足まわりのチューニングはモデルごとに細かく設定
日本仕様として用意されたのは今のところ2グレードのみとなっている。いずれも搭載されるのは既にお馴染みの、PSAグループとBMWとの共同開発1.6Lガソリンエンジンで、グレードとしては120ps自然吸気+4速ATの207SWと、175psターボ+5速MTの207SW GTiとなる。前者には特徴的なデザインのアルミニウムルーフレールが備わっている。

インテリアはデザインこそ変わり映えしないものの、ハッチバックとはかなり違う空気が漂っているように感じる。それもそのはず、天井が高くなり、その上、巨大なガラスルーフで覆われているから、室内の開放感がまるで違うのだ。前席だけではない。後席もシート位置を後方にずらしたことで、足下スペースに余裕ができ、リラックスして座れるようになった。この広さと居住性なら、あえてミニバンなど買う必要はないと感じる人もいるだろう。

注目のラゲッジスペースはどうか。後席はワンタッチでフルフラットにすることができる。5名乗車で337Lの荷室が、2名乗車+フルフラット状態では1258Lにまで拡大する。その上、ハッチゲートのウインドウは単独で開閉可能。小さな荷物ならば、わざわざハッチゲートを開けずとも出し入れが可能だ。

さらに、機能性にも気を遣っている。荷室の左右やフロア下に充実のスペースがあり、また荷物を隠すシェルフは使いやすい3分割。頻繁に大きな荷物を運ぶようなヘビーユーザーを除けば、これで十分ではないだろうか。

今回、試乗に用意されたのはベーシックなSWのみ。GTiは少し遅れてデリバリーとなる。スペック的にはハッチバックよりも全長と全高が大きく、重量もやや多くなっている。

足まわりのチューニングはプジョーの常で、SW専用のものになっている。プジョーのシャシまわりへのこだわりは尋常ではなく、ダンパーやスプリングなど構成パーツの組み合わせが、ボディタイプやグレード、エンジン、トランスミッションなどの違いによってこと細かに変えられている。見かけは全く同じでも、モデルによって設定が少しずつ異なっていて、しかもそれが全車に共通した乗り味にまとめられているのは見事というしかない。

リアの重量増が走りに粘り腰をもたらしている
結論から言って、プジョー207SWの走りは、207シリーズ中最良で、最もプジョーらしいと思えるものだった。動き始めの硬くちょっと物足りない印象に始まり、それが100mも走れば全身に血が回ってしなやかさが増して、路面からの入力をきっちり受けつつもジワッといなしてしまう独特の乗り心地を味わうことができる。

ひとたびワインディングに入れば、路面を掃きながら撫でて走るかのごとき粘り腰で、「これぞプジョー」と唸さらせるものだった。リアの重量増も安定したコーナリングに寄与していると思われる。

ここ数年のプジョーシリーズの中では抜きん出て「ネコアシ」だ。古くからのプジョー乗りで、最近のはちょっといただけない、と思っていた方もぜひ一度試して欲しい。

エンジンパワーはちょっと物足りないぐらいだが、これがプジョーのキャラクターにはあっている。ATのセッティングも、かなり良くなった。もっとも、国産車も含めた最新レベルで比較すれば「まずまず」の部類である。それでもクルマが気持ちよく走るということは、それだけネコアシが気持ちよいということの証拠と言って良さそうだ。

207SWの躍動感あるスタイルは、ワゴンというより、むしろハッチバックと言って通用するもので、そのSWを気持ちよく走らせていると、ハタと気づくことがあった。サイズ的に見れば、ほとんど307のハッチバックと同等。そういえば、価格的にもSWの2グレードと307ハッチバックの2グレードが見事に対応している。

そして、これが肝心なのだが、307後継の308シリーズがひと回り大きくなっているという事実。そう、207SWは307の実質的な後継モデルなのではないかということだ。

エンジン排気量は小さくなっているが、これはダウンサイジングの賜物だ。1.6L直噴ターボはNAの2.0L以上にも相当する。実用に限った話でいけば、207シリーズSWを実質的なCセグメントとして見ることができるのではないかとも思う。

そうなると、207シリーズは広いユーザー層に対応するものであり、新たに登場する308シリーズは307の代替ではなく、まったく新しいハッチバックモデルの価値を持ち込むことになるはずだ。そして、そこが308シリーズの成功の鍵となるだろう。

もうひとつ、207シリーズがプジョーラインアップの中心となるのであれば、望みたいモデルがある。それは、207シリーズよりも小さなモデルだ。1007とは別に、キュートなコンパクトカーの設定が必要となってこないか。107はトヨタとの関係があって日本導入は難しいか。(文:松本雅弘/Motor Magazine 2008年6月号より)



プジョー207SW 主要諸元
●全長×全幅×全高:4150×1750×1535mm
●ホイールベース:2540mm
●車両重量:1320kg
●エンジン:直4DOHC
●排気量:1598cc
●最高出力:120ps/6000rpm
●最大トルク:160Nm/4250rpm
●駆動方式:FF
●トランスミッション:4速AT
●車両価格:269万円(2008年)

プジョー207SW GTi 主要諸元
●全長×全幅×全高:4150×1750×1510mm
●ホイールベース:2540mm
●車両重量:1330kg
●エンジン:直4DOHCターボ
●排気量:1598cc
●最高出力:175ps/6000rpm
●最大トルク:240Nm/1600~4500rpm
●駆動方式:FF
●トランスミッション:5速MT
●車両価格:335万円(2008年)

[ アルバム : プジョー207SW はオリジナルサイトでご覧ください ]

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油5円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

「EV時代の1リッターカー」メルセデスベンツ『CLA』新型、800Vシステム採用で超急速充電にも対応
「EV時代の1リッターカー」メルセデスベンツ『CLA』新型、800Vシステム採用で超急速充電にも対応
レスポンス
限定88台! TWRのV12スーパーGT「スーパーキャット」が世界デビュー、クラシカルなジャガーXJSをベースに構築された現代的なカーボンファイバー製の一台
限定88台! TWRのV12スーパーGT「スーパーキャット」が世界デビュー、クラシカルなジャガーXJSをベースに構築された現代的なカーボンファイバー製の一台
LE VOLANT CARSMEET WEB
ナビタイムが新「タクシーモード」発表、抜け道ルート強化…過去のプローブデータ解析
ナビタイムが新「タクシーモード」発表、抜け道ルート強化…過去のプローブデータ解析
レスポンス
2024年最後の開催! 英「H&Hクラシックス」のオークションに、ワンオーナーで希少価値の高いクラシックカー出品へ
2024年最後の開催! 英「H&Hクラシックス」のオークションに、ワンオーナーで希少価値の高いクラシックカー出品へ
LE VOLANT CARSMEET WEB
6速MTあり! トヨタが本気で「小さなスポーツカー」を開発! “全長3m”で「ちょうどいいサイズ」の4人乗りクーペが凄い! “頑張れば乗れる”小さな「爆速スポーツ仕様」モデルとは
6速MTあり! トヨタが本気で「小さなスポーツカー」を開発! “全長3m”で「ちょうどいいサイズ」の4人乗りクーペが凄い! “頑張れば乗れる”小さな「爆速スポーツ仕様」モデルとは
くるまのニュース
よりユーザーフレンドリーに!! トライアンフ「タイガースポーツ660」新型モデル発表
よりユーザーフレンドリーに!! トライアンフ「タイガースポーツ660」新型モデル発表
バイクのニュース
「好きなキャンプ飯ランキング」第1位は? 株式会社 NEXER がアンケート結果を公開
「好きなキャンプ飯ランキング」第1位は? 株式会社 NEXER がアンケート結果を公開
バイクブロス
[ポルシェ]オーナーも夢じゃねぇ! [中古価格]が下がったら買いたい空冷ポルシェ3台
[ポルシェ]オーナーも夢じゃねぇ! [中古価格]が下がったら買いたい空冷ポルシェ3台
ベストカーWeb
東名阪道 大山田PAにスマートIC新設決定! 周辺の渋滞緩和とアクセス性向上に期待。【道路のニュース】
東名阪道 大山田PAにスマートIC新設決定! 周辺の渋滞緩和とアクセス性向上に期待。【道路のニュース】
くるくら
モトグッツィ伝説の「V7スポルト」復活! 倒立フォークや専用走行モードを採用…ただの外装バリエーションじゃないんです!
モトグッツィ伝説の「V7スポルト」復活! 倒立フォークや専用走行モードを採用…ただの外装バリエーションじゃないんです!
モーサイ
「抽選」「台数限定」は間違い! スーパーカブ50ファイナル車は受注期間内に注文すれば必ず手に入る
「抽選」「台数限定」は間違い! スーパーカブ50ファイナル車は受注期間内に注文すれば必ず手に入る
モーサイ
KTM初のクラッチレス機構「AMT」搭載モデル・1390スーパーアドベンチャーSエヴォ伊ミラノEICMAショーで発表!
KTM初のクラッチレス機構「AMT」搭載モデル・1390スーパーアドベンチャーSエヴォ伊ミラノEICMAショーで発表!
モーサイ
「ボルボS90」、2024年度「オートエクスプレス中古車アワード」で最優秀エグゼクティブカーに輝く
「ボルボS90」、2024年度「オートエクスプレス中古車アワード」で最優秀エグゼクティブカーに輝く
LE VOLANT CARSMEET WEB
【MotoGP】移籍ビニャーレスは初乗りKTMマシンに好感触「最初からスムーズ。僕がスタートで後退していた理由も理解した」
【MotoGP】移籍ビニャーレスは初乗りKTMマシンに好感触「最初からスムーズ。僕がスタートで後退していた理由も理解した」
motorsport.com 日本版
東海北陸道~上高地が超便利に!?「高山清見道路」延伸工事中 “大渋滞”高山市街を「完全スルー」どこまで工事進んだのか
東海北陸道~上高地が超便利に!?「高山清見道路」延伸工事中 “大渋滞”高山市街を「完全スルー」どこまで工事進んだのか
くるまのニュース
キアの新型電動SUV『EV3』、2025年欧州カーオブザイヤー最終選考に
キアの新型電動SUV『EV3』、2025年欧州カーオブザイヤー最終選考に
レスポンス
SP忠男から XSR900GP用「POWERBOX FULL RS ステンレス」が発売!
SP忠男から XSR900GP用「POWERBOX FULL RS ステンレス」が発売!
バイクブロス
フェリペ・マッサ、自身2度目のデイトナ24時間挑戦へ。初参戦の2024年はクラス3位/IMSA
フェリペ・マッサ、自身2度目のデイトナ24時間挑戦へ。初参戦の2024年はクラス3位/IMSA
AUTOSPORT web

みんなのコメント

この記事にはまだコメントがありません。
この記事に対するあなたの意見や感想を投稿しませんか?

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

225.0245.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

26.469.8万円

中古車を検索
207SW (ワゴン)の車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

225.0245.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

26.469.8万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村