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【スペクター】ロールス・ロイス初の電気自動車が意識したもの【九島辰也】

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【スペクター】ロールス・ロイス初の電気自動車が意識したもの【九島辰也】

車種別・最新情報 [2023.07.08 UP]


【スペクター】ロールス・ロイス初の電気自動車が意識したもの【九島辰也】
文●九島辰也 写真●ユニット・コンパス

【ロールス・ロイス スペクター】初の電気自動車を日本でお披露目

 ロールス・ロイスの新車発表会に行ってきました。久し振りです。「行くのが」ではなく「新型車が」です。雲上クルマですからね、そうたくさんのモデルをラインナップしません。ファントム、ゴースト、カリナンあたりでしょうか。オープントップのドーンは先日生産終了がアナウンスされました。南アフリカのケープタウンで行われた国際試乗会に参加しただけあり、思い入れのあるクルマです。まぁ、いくら思い入れがあっても購入には至りませんが。


ロールス・ロイス スペクター
 では、新型車はどんなキャラクターかといえば、BEV(電気自動車)です。ついにそんな時代になりましたね。ウルトララグジュアリークラスの電動化は進んでいます。最高出力は430kW、最大トルクは900Nm、航続距離は530kmだそうです。それを250万kmにおよぶテストプログラムと-40度から50度の温度変化の中で開発してきたというから本気ですね。もちろん、ベースになるのはBMWテクノロジーですが、ロールス・ロイス技術陣の意地もお見受けします。

 とはいえ、EVとしてのパフォーマンスは走らせてみないとわかりません。レーシングカーのようなオールアルミ製スペースフレームを採用したそうですが、その効力は乗ってみて別途インプレッションをお伝えしたいと思います。

 デザインはご覧のようにロールス・ロイスらしく仕上がっています。2つにセパレートされたヘッドライトとパルテノングリルは健在です。スタイリングは2ドアなのでクーペボディのレイスのような感じですね。当然ドアヒンジは後側になります。

 ユニークなのは、自動車界にとどまらず、デザインはクルーザーやテーラードウェア、現代アートなどからインスピレーションを得ているところ。クルーザーやテーラードウェアなどは英国車やイタリア車のハイブランドではたびたび登場するワードですが、現代アートはそうありません。もはや工業品の枠を飛び出して芸術の範疇に足を踏み入れています。そういえばかつてファントムとゴーストには“アール・デコ・コレクション”なるものがありました。その時も「すごいなぁロールス・ロイスは。コラボの相手は芸術的ERAなんだ」と思ったのを記憶しています。発想が他のカーメーカーとは違いますね。まさに異次元かと。

 ところで、このクルマのネーミングですが、“スペクター‘と言います。多くの方は007シリーズに登場する悪の組織を思い浮かべるでしょう。そのままタイトルにもなりました。でもロールス・ロイスが使うのにそのニュアンスは含みません。意図するのは単純にその意味、「亡霊」や「幽霊」です。


ロールス・ロイス レイス(2013年モデル)
 ここで勘のいい方ならお気づきでしょうが、彼らはいつもそんな名前を付けます。“ファントム”や“ゴースト”、“レイス”は同様の意味です。それと「朝焼け」の“ドーン”と「雲」の“クラウド”、「影」の“シャドウ”云々が使われてきました。でもってその共通する意味は「音もなく忍寄ってくるもの」となります。そうです、ロールス・ロイスが伝えたいのは、自分達のクルマはそれだけ静かでスムーズな乗り物だということです。事実1910年代のガソリンエンジンのロールス・ロイスとクラシックカーラリーイベントでご一緒したことがあります。年代の近いベントレーやブガッティがエンジン音をドドドッと唸らせている中、ロールス・ロイスは異様なほど静かに走っていました。まぁ、ベントレーやブガッティはそもそもレーシングカーですから素性が違いますが、それにしてもその差は明らか。「あれ、もしかしてあれは電気自動車だったのか?」なんて思ってしまいます。

 それはともかく、ロールス・ロイスあたりになるとクルマだけの知識を磨いても十分とはいえません。というか、カーブランドの成り立ちは当然のこと、クルーザーやテーラードウェア、現代アートにもある程度の知識は必要になります。そうでなければデザイナーインタビューしても話は広がりませんから。幸いその辺は個人的に好きなカテゴリーなのでそんな時が来ても心配はいらないでしょう。それよりクルーザーはどのブランドなのか、テーラードウェアはどこを指しているのか興味が募ります。ロールス・ロイスのチーフデザイナーが何からインスピレーションを得るのか。想像するだけでワクワク。皆さんも知りたいですよね。そんな話が聞けたら共有しますので、乞うご期待です。

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