導入予定だった全パワーユニットが日本市場に出揃い、待望のツーリングもラインナップに加わったBMW3シリーズ。フルメンバーとなったことで、同一モデル内での相互関係も気になるところ。そこで3シリーズ徹底比較を決行。新たな魅力や気付きを探った。
改めて、至る所が刷新され存在感が増している
【比較試乗】「メルセデス・ベンツC200 vs BMW 330i Mスポーツ vs アウディA4 45 TFSI クワトロ」ミドル級セダンのエースを探せ!
日本でのデビューから間もなく1年の時が経つG20系3シリーズ。欧州市場での新たな型式認定基準となるWLTP対応に手が回らず、世界的にローンチスケジュールが遅れる中、日本においてはようやくパワートレインやトリムラインも充実、そしてツーリングも発売を開始したところだ。
プレミアムカテゴリーのベストセラーに返り咲くべく、その準備が整ってきたところで、320iを除くパワー&ドライブトレイン、そしてツーリングを連れ出して比較する機会に恵まれた。
今回連れ出したモデルは5種類。320dはセダンとツーリングの両方を、そして330i、330e、M340iはセダンで、トリムラインは全てMスポーツ。駆動方式は330iと330eがFR、他はxDriveとなる。
新型3シリーズの車寸はセダンで全長4715mm、全幅1825mm、全高1430mm。前型F30系に比べるとそれぞれ+70mm、+25mm、10mmのマイナスとなる。このセグメントでは唯一の全幅1800mmはかえってチャームポイントでもあったが、Cセグメント以上の動向をみれば拡幅は致し方なかったというのも理解できなくはない。
一方、ツーリングの車寸は全長と全幅はセダンと変わらず、全高はルーフレール分が増えて1475mmとなる。荷室容量は5名乗車の状態でセダンが480L、ツーリングが510L。リアシートは共に40:20:40の分割可倒式で、ツーリングは2名乗車時には最大1510Lの積載容量を確保する。これは前型に対してわずかながら大きくなっている。ガラス部分が独立で開閉できるリアゲートは新型でも引き継がれた。
ホイールベースは共に前型比で40mm長い2850mm。その恩恵は後席居住性、特に足元空間のゆとりからも感じられる。座面高はやや低く感じられるものの、背もたれの角度や前席下部へのつま先の収まりに違和感はない。ただし181cmの筆者が座るとセダンでは頭側方の圧迫感がやや気になるところで、この点、側面の絞りが小さいツーリングの方が歴然と快適なのは、前型と同じだ。
搭載されるエンジンは320i、330i、330eがB48系2L4気筒直噴ターボ、M340iがB58系6気筒直噴ターボ、そして320dがB47系2L直噴ディーゼルターボとなる。
今回はスケジュールの関係で320iが取材には同行できなかったが、日本市場を重視して専用チューニングを受けたユニットは184ps&300Nmを発揮。PHEVとなる330eは320iと同スペックのエンジンに83kW&265Nmのモーターを組み合わせ、システム出力は252ps&420Nmとなる。そして330iは258ps&400Nmと、これらが4気筒ガソリンユニットのバリエーションだ。加えて日本では一番の売れ筋となるだろう、シーケンシャルツインターボと尿素SCRを採用した新骨格の4気筒ディーゼルユニットを積む320dは190ps&400Nmを発揮。そして現状のフラッグシップとなるM340iは唯一の6気筒ガソリンとなり、387ps&500Nmをマークする。
気持ちよさを求めるならバランスの良い330i
まず試乗したのは320dだ。エンジンのフィーリングは前型のB47系に対して音・振動の面で明らかに洗練された印象だ。低回転域から発せられる分厚いトルクも過剰な演出は控えめで、アクセル開度に応じてリニアに駆動輪へと伝わってくれる。力強さは充分に感じられる一方で吹け上がりの頭打ちは早めで、スポーツモードで引っ張っても4000rpm前半でパワーの乗りは留まり、シフトアップポイントも4800rpm付近と伸びやかさは前世代に一歩譲るところだ。もっともユーロ6d規制をクリアした今日びのディーゼルユニットはおしなべて同様のフィーリングで、さしものBMWとてスポーティネスを二の次にせざるを得ない事情が伺える。
330eは前型の同等グレードに対して、モーターとエンジンとのリンケージやトルクバンドの連携といった日常でも多用する領域のマナーが一段と巧くなった印象だ。バッテリー容量は前型の7.6kWhから10.3kWhへと強化され、満充電時からのEV走行距離はWLTCモードで52.4kmと大幅な向上をみているだけではなく、スポーツモードの高負荷時には10秒間、モーターのパワーを40ps上乗せして292ps相当の動力性能を引き出すエクストラブースト機能も備えている。
動力性能的には330iと同等、そしてモーターの特性を利して中間加速などはそれ以上の迫力を感じさせるなど、車名に偽りなしといったところだ。が、燃費については200kg軽いとの差異は思いのほか小さく、普通充電環境が近くにない向きは、ランニングコスト面でのメリットは320dに遠く及ばずと思っておいた方が良さそうだ。
330i、そしてM340iのエンジンはそのスポーツ性において文句のつけようがない。320iでは物足りないトップエンドでの伸びも、330iは6500rpmの向こうまでしっかり伸び切るし力感も充分。Mスポーツ同士の比較であれば320iとの価格差は50万円だが気持ちよさを求めるならば、あえて330iを選ぶ価値はある。そしてM340iはもはやこれがM3でも構わないというほどのパフォーマンスと官能性を備えるも、330iに比べて300万円を上回る価格差をみるに、BMWの直6は完全にプレミアムアイテムになってしまったという感慨に浸ってしまう。
そのM340iはフットワークも抜群で、四駆の重苦しい悪癖をまったく感じさせないどころか、スポーツモードではDSCとの連動でぐんぐんとイン側につけていく鋭さも持ち合わせている。発表間もない試乗機会では高速サーキットでの安定性の高さとインフィールドでの鋭いターンインとのバランス感に心底驚かされた一方で、低中速域での乗り心地の渋さに心配させられたが、今回の試乗では距離の浅い個体にも関わらず、この点も少しながら確実に改善の跡がみてとれた。
今回の中では320dが最も3シリーズらしかった
330iはさすがにxDriveほどのスタビリティは感じられないが、M340iに比べると100kg軽い上に、車検証上で51:49という重量配分(M340iは53:47)もあって、物理的な軽さがどのモデルよりもポジティブに現れている。古からのBMWらしさという点では最も色濃くそれを継承するハンドリングといえるだろう。操舵ゲインの立ち方とクルマの動き方に位相ズレはなく、コーナーでは頭の入りの軽さや後輪側の粘り、舵を戻しながらパワーを乗せていく時の姿勢など、所作のよさという点でいえば今回の5台で最も感銘を受けたのはこのモデルだ。装着する19インチのブリヂストンのトランザT005が粗い舗装面や目地段差などではインパクトを多く伝えてくるのが惜しかったが、乗り心地も総じて受容できるレベルにある。
こと快適性でみれば330eのそれは他より一歩抜きん出ていた。何より効いているのは後席下に置かれたバッテリーと、その後ろに移動した燃料タンクなどが後軸に適切なプリロードを掛けている点。加えて装着された18インチのミシュランPS4のダンピング性能によるところも大きいはずだ。1830kgという重さが巧く乗り心地に転化されたうえ、48:52という棚ぼた的な重量配分もあってコーナリング時もトラクションはがっちり掛けられるが、いかんせん車体の動きはさすがに重く、Eセグメントに近いもっさりした応答感を感じることも多い。
320dは乗り心地的にもハンドリング的にも最もバランスよく3シリーズらしさを味わえるパッケージだ。M340iと同様、xDriveを背負うがゆえのネガはほぼ感じられず、あくまで後ろを軸としたスロットルワーク主体のコーナリングが楽しめる。重量はセダンが1680kgで重量配分はぴたりと50:50。新型3シリーズのライドフィールで印象的なのはバウンドの収まりがすこぶる良くなったことだが、フラットネスという点においてはミシュランPS4を履いた320dセダンが最も優れていたように思う。
320dツーリングの方はセダンよりも後軸側が70kg重いが、ハンドリングはそれを思わせないほど一体感があるし、相当な大入力でも大開口がゆえの剛性不足を感じることはない。ボディ形状の違いからくる残響感も常速域では無視できるレベルにある。もちろん厳密に走りの解像度を突き詰めればセダンの側にカチッとした精緻さが見いだせるわけだが、ライフスタイルを無視してまでセダンを選ぶ意味はない。
トータルバランスをみるに標準モデルを無視することはできないが、現状でも新型3シリーズの総合力はライバルとは一線を画するところにあることは間違いない。検討されている向きには好機到来とお伝えしておきたい。
【Specification】
BMW M340i xDrive
〇 もはやM3同然の敏捷性と官能性/× 価格的には330iに軍配
M340i専用に設定された500Nmに達する3Lの直列6気筒エンジンを搭載。Mスポーツサスペンション、可変スポーツステアリング、Mスポーツディファレンシャル、Mスポーツブレーキシステムなどが標準装備される。xDriveでありながらFRに近いパフォーマンスが体感でき、8速ATのシフトチェンジも俊敏かつスムーズだ。
BMW 320d xDrive Touring M Sport
〇 後席居住性もセダン比で優位/× 強いていえばノイズレベルが高い
後席スペースは先代よりもゆとりが生まれ、ラゲッジルーム容量も通常時で510L、最大で1510Lまで拡張される。また、ラゲッジには試乗車のようにアンチ・スリップ・レール・システムをオプションで装着することができ、容易な荷物の積み込みや、走行中に荷物が動くことを抑制してくれる。
BMW 320d xDrive Touring M Sport
BMW 330e M Sport
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みんなのコメント
運転していて、凄く気持ち悪い