共倒れ回避のカギ
鉄道と路線バスが並行する地域で、これまで両者は「ライバル関係」にあると認識されてきた。しかし、人口減少やモータリゼーションの進行を踏まえれば、共倒れは避けなければならない。
【画像】「えぇぇぇ!?」これが阿南駅の時刻表です。画像を見る!(8枚)
・鉄道の「相互直通運転」
・路線バスの「共同運行」
はすでに各地で実施されているが、鉄道と路線バスという異なる交通モードを超えた協働となると、実現には独自の課題がともなう。
現在、地域交通の厳しい状況を受け、鉄道と路線バスが連携して持続可能な運行を目指す動きが出てきている。本稿では、鉄道と路線バスの協働が持つ意義と可能性について考察する。
鉄道とバスの協働改革
JR四国と徳島バスの協働事例は、鉄道と路線バスの協力関係の先駆けとなるものだ。ここでは、
・協働が生まれた背景
・ユーザーからの評価
・公共交通事業者の視点
からの評価を深掘りしていく。
まず、この「協働が生まれた背景」についてだが、鉄道と路線バスの協働を実現したのは、JR四国の牟岐(むぎ)線と並行する徳島バスのケースである。2023年のダイヤ改正で、1日1往復運行されてきたJR四国の特急「むろと」が廃止された。牟岐方面が夜間、徳島方面が朝にそれぞれ運行されていたが、ついに運行が終了した。
この状況を受け、JR四国は特急廃止の決定を下した。その背景には、経営状況の厳しさがある。JR四国の資料「四国における鉄道ネットワークのあり方に関する懇談会II」では、牟岐線の営業係数(100円の収入を得るために必要な費用)が紹介されている。徳島~阿南間では営業係数が183であったが、阿南~牟岐~海部間では
「635」
となり、後者の区間は大きな赤字を抱えている。さらに、輸送密度(1kmあたりの乗客数)が低く、2020年度の阿南~牟岐間では1日に437人しか運んでいなかった。これは新型コロナ前の2019年度比で27.7%減少している。こうした経営面の厳しさから、JR四国と徳島バスが連携して、2022年4月から協働運行を始めることになった。
運賃統合で経済効果倍増
次に、「ユーザーからの評価」について見ていこう。JR四国の阿南駅では、鉄道とバスの発車時刻が一緒に表示され、利用者にとって非常にわかりやすくなった。以前は鉄道便とバス便が別々に記載されていたため、どの便に乗るかを判断するのが難しかったが、現在は両方が併記されるようになり、便利さが大きく向上した。
また、JR四国の乗車券や定期券を持っていれば、追加料金なしで徳島バスに乗車できるという点も、ユーザーにとって大きなメリットとなっている。例えば、徳島~阿南間でJRの列車を利用し、その後阿南から牟岐まで高速バスを利用する場合、通しの乗車券で1640円となり、従来の料金(徳島~阿南の鉄道630円、阿南~牟岐のバス1200円)よりも190円安くなる。この運賃体系の変更により、両社はコストを分担しており、経済的なメリットを生み出している。
さらに、ユーザーの利便性を高めるために、鉄道の駅とバス停の位置が調整されており、目的地によっては移動手段を柔軟に変更できる点も魅力的だ。JRの乗車券に加え、定期券や回数券、団体券などにも対応しているため、利用者の選択肢が広がった。
ただし、注意すべき点もいくつかある。高速バスの座席は、多客時には優先的に利用者が決まるため、
「空席がある場合に限」
鉄道利用者がバスに乗ることができる。また、鉄道やバスの遅延が発生した場合、乗り換えができないこともある。このような制約もあるため、事前に情報を得て利用計画を立てることが求められる。
このように、JR四国と徳島バスの協働運行は、ユーザーにとって大きなメリットをもたらし、鉄道とバスのシームレスな運行を実現している。今後、他の地域でもこのような協力関係が広がれば、公共交通の利便性が向上し、地域活性化にもつながるだろう。
公共交通再生に必要な新たな連携
最後に「公共交通事業者の視点」について考察する。鉄道事業者にとって、営業係数が非常に悪いエリアでは、自社の鉄道便増便に対する地域からの過度な期待や圧力があり、車輛や人員の確保にかかる費用負担を回避できる新たな手法は非常に有益である。
特に、阿波海南から甲浦までの区間では、阿佐海岸鉄道のDMV(デュアル・モード・ビークル)が走っており、この区間は阿佐線計画の一部として、牟岐駅から高知県後免駅を結ぶ予定であったが、結局は未成線となり、JR四国の支援も受けられない地域となった。それでも、DMVという観光資源が生まれ、室戸方面への公共交通のアクセスを改善するためには、徳島方面からの便が少しでも充実していることが重要だ。特に、牟岐や阿波海南方面への公共交通を充実させるためには、路線バスとの協働が大きな助けとなった。
一方、路線バス事業者にもメリットがある。コロナ禍やモータリゼーションの影響で経営が厳しいバス事業者にとって、2024年問題を迎えるなかで人件費を確保することは重要な課題だ。室戸や生見、阿南から大阪への高速バスは、都市間輸送だけでなく、地元の短距離移動の客も取り込むことができるため、ビジネスチャンスを広げる可能性がある。高速バスと地元路線バスを一体化させることで収益の増加が期待できる。また、高速バスは大阪と室戸方面の観光地を結ぶ路線でもあり、インバウンド需要を考慮すると、地元路線バスとしての利用に関して懸念もある。
筆者(西山敏樹、都市工学者)も阿佐海岸鉄道の調査などで何度も阿南での乗り換えを利用してきた。大学の休暇が長めの3月、8月、12月によく出かけるが、高速バスは混雑するものの、地元客はいつも五人程度で、大きな問題が発生することはない。地域の行政や産業にとっても、公共交通の集客性が高まることは悪いことではない。
・免許返納をする高齢者
・免許取得を避ける若者
が増えている現状では、公共交通での集客性の向上は非常に好ましい傾向といえる。
JR東日本エリアでも新たな協働
JR東日本盛岡支社と岩手県北バスは、2025年4月から共同経営を開始すると発表した。
この取り組みでは、JR東日本の山田線盛岡~宮古間の乗車券を所持している利用者が、JRの列車と106バスの両方に乗車できるようになる。106バスは、国道106号線にちなんで名付けられ、地元ではその名称が定着している。事前実験の結果、2025年1月末までの10か月間に、1日平均約34人がJRの乗車券を使ってバスを利用していたことがわかっている。
この新しいサービスにより、利用者は移動手段として鉄道とバスを自由に選べるようになり、従来の鉄道とバスが連携していない状況と比較して、運賃面でも利用者にとってメリットがある。
また、公共交通全体の利便性向上が期待され、鉄道事業とバス事業の連携による相乗効果が見込まれる。
法的課題解決後の協働効果
鉄道と路線バスの連携はまだ始まったばかりであり、事例は少ない。
これには法的な議論も存在した。異なる交通事業者が運賃や運行ダイヤなどを調整することが、独占禁止法上の「カルテル」に該当するのではないかとの指摘があったからだ。複数の事業者が
・価格
・販売
・数量
・販路
などを共同で決定し、市場での競争を制限する行為はカルテルとして問題視される。しかし、鉄道と路線バスの協働に関しては、地域内で基盤的なサービスを提供し維持することを目的とした
「独占禁止法特例法」
に基づき、許可されている。鉄道とバスの協働の効果が明確になるのは今後であるが、牟岐線や山田線の事例は地域公共交通維持の可能性として、今後も各地で取り上げられるだろう。
また、政策面でもカルテルに対する指摘が緩和される動きが見られる。鉄道と路線バスの協働は、地域公共交通全体の底上げにつながり、それぞれのメリットを活かすことで生活者にも恩恵をもたらす。そのため、各地での議論に期待したい。
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