排気量6.6リッターのV型12気筒ツインターボ・エンジンは、街中を走っているときに存在をアピールすることはない。あくまで静かに、滑らかに回転して、裏方に徹している。そして粛々と仕事をこなしながらも、そのオーラがときおり顔をのぞかせてしまう。
たとえば、タバコ屋の角を曲がるようなとき、アクセルペダルを踏む右足の親指にほんのわずかに力を入れると、遠くから快音が聞こえる。その「クォーン」という濁りのない音は、ごく控え目な音量ながら、はっきりと聞こえる。優秀なオーディオシステムは、ボリュームを絞ってもしっかりと音が聞こえるのに似ている。
「993は古いクルマなのに信頼性も戦闘力も高い」──Vol.3 L. A. Kentaさん
【主要諸元】全長×全幅×全高:5265mm×1900mm×1485mm、ホイールベース:3210mm、車両重量:2290kg、乗車定員:5名、エンジン:6591ccV型12気筒DOHCターボ(609ps/5500rpm、850Nm/1550~5000rpm)、トランスミッション:8AT、駆動方式:4WD、タイヤサイズ:フロント245/40R20、リア275/35R20、価格:2523万円(OP含まず)。快音が耳に届くのと同時に、トルクが盛り上がる。厳密に言えばこのくらいの操作ではトルクが「ドン」と立ち上がるわけではなく、ブ厚いトルクの気配を感じる程度だ。そして、その気配だけでゾクゾクさせてくれる。こんなエンジン、ほかに記憶がない。
格闘家は、組み合った瞬間の気配やオーラで相手の力量がわかるという。まだひとつの技も繰り出していないBMW M760Liであるけれど、街中を走り出してすぐに、とてつもない力量を感じる。
搭載するエンジンは6591ccV型12気筒DOHCターボ(609ps/5500rpm、850Nm/1550~5000rpm)。M760Li xDriveは、7シリーズ唯一のV12エンジン搭載グレードである。609psというスーパースポーツ級の最高出力をボンネットの下に秘めながら、市街地での乗り心地は良好だ。といってもエアサスペンションの設定はソフトでフワフワしているわけではなく、しっかりと大地を蹴っていることが実感できるソリッドなもの。高質と硬質とが合わさった、BMWらしい乗り心地だ。
2019年夏のマイナーチェンジによってキドニーグリルの面積が約4割増しになり、BMW 7シリーズのエクステリアは威厳を増した。キドニーグリルは大型化すると同時に、ヘッドランプと接するようになり、横方向への広がりを感じさせる。キドニーグリルが天地方向に高くなったのを相殺するために、ヘッドランプのデザイン処理でロー&ワイドな雰囲気にしたのだと推察する。結果、“いかにも走ってやるゼ”という顔つきになった。
「威厳を増す」と「走ってやるゼ」が矛盾することなく両立している点が、BMWのフラグシップの特徴だ。
タイヤサイズはフロント245/40R20、リア275/35R20。全グレード、エア・サスペンションは標準。“M”の威力高速道路に入っても、100km/h程度の巡航なら街中での印象と大差ない。オーラを感じさせながらもゆったりまわるエンジンと快適な乗り心地に身を任せていると、精密に組み立てられたものが正確に動いている感じがひしひしと伝わってくる。ぶっ飛ばさなくても、運転していて気持ちがいい。
車名に「M」の文字が入っていることからもわかるように、BMWのモータースポーツ活動や高性能仕様を担当するBMW M社の手が入ったモデルである。ただし「M3」や「M4」のようにガチのモータースポーツを想定した「Mシリーズ」ではなく、普段使いの快適性と高性能の両立を図った「Mパフォーマンス」というラインだ。
マイナーチェンジによってキドニー・グリルが大型化された。トランスミッションは8AT。センターコンソールはV12の文字入り。そして道が曲がりくねってくると、いよいよ「M」が本領を発揮する。
アクセルペダルを踏み込むと、乾いた快音が鼓膜を震わせるのと同時に、ナイアガラ瀑布のような大トルクが立ち上がる。それでも野蛮な感じが一切しないのは、エンジンの回転フィールが精緻なことと、大パワーを4駆システムが4つの車輪に適切に振り分けているからだ。
ボディは全長×全幅×全高:5265mm×1900mm×1485mm。最小回転半径は6.1m。上質なレザーとウッドをたっぷり使ったインテリア。面白いのは3210mmという長~いホイールベースと、優に2トンを超える車重の大型セダンでありながら、タイトなコーナーでもミドル級のスポーツカーのような身のこなしを見せること。
ハンドルの手応えは抜群で、タイヤが路面とどのように接しているかが、文字通り手に取るようにわかる。そしてハンドル操作に対しての反応は正確で敏捷だから、操舵するのが楽しい。
ボディカラーは「フローズン・ダーク・シルバー」。51万1000円のオプション。フロントシートは電動調整機構、ヒーター&ベンチレーション機構、マッサージ機構などさまざまな機構が備わる。フロント・リアのガラスルーフ「スカイ・ラウンジ・パノラマ・ガラス・サンルーフ」は標準。オーディオ・システムは、Bowers&Wilkinsダイヤモンド・サラウンド・サウンド・システム(1400W、16スピーカー)。ラゲッジ・ルーム容量は515リッター。コーナー出口はV12の見せ場だ。アクセルペダルを踏み込むと、ほどよい重みを感じさせながらエンジンはスムーズに回転を上げ、ジワーッとトルクが盛り上がる。ここで「ドスン!」と力が出るのではなく、力が盛り上がっていく過程に美しさや気品を感じさせるのがこのエンジンの持ち味だ。
ナイアガラのように迫力があるのに、シルクのようにキメが細かくて滑らか。最近はなかなかふれる機会がないけれど、大排気量のV12ってやっぱり素晴らしい。
高度な自動運転技術も搭載V12にノックアウトされていたのですっかり忘れていたけれど、このクルマは高速道路でハンドルから手を放す(ハンズオフ)機構が備わる。高精度の3Dマップをベースにする日産「スカイライン」とは異なり、3眼カメラとレーダーを使って先行する車両に追従するシステム。つまりコバンザメ方式で、したがって単独走行ではハンドルから手を放すことはできない。
ハンズオフでの走行は安定していて、ハンドル操作は滑らかでタイミングも適切だ。加減速も安心して任せられるもので、システムを作動させるインターフェイスも直感で操作できる優れモノ。V12や好ハンドリングが宝の持ち腐れとなる渋滞では、すっかりお世話になった。
コバンザメ式の問題は、先行車両がフラフラするとこっちもフラフラしてしまうこと。安定した走りをする車両を見極めて付いて行くようにしたい。
マイナーチェンジによって、フルデジタルのメーターパネル・デザインが変わった。ハンズオフ機能付きACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)は、ステアリング・スウィッチで操作する。普段は一流のビジネスマンで、その実、オリンピアン級のアスリートでもある。これ1台あればほかにクルマはいらないと思ったけれど、7シリーズにお乗りの方はそんなビンボー臭いことは考えず、ほかに何台もお持ちでしょう。
と、世の中にこんなにいいクルマがあるのかと感心しながらBMWジャパンに返却して、大事なことを忘れていたことに気付く。モデル名に「L」が付くということは、すなわちロングホイールベースの後席スペースを広くした車両だ。それなのに、後席に乗るのを忘れていた……。
リアシートも電動調整式。リアシート用フットレスト付きの助手席は、リアシートからも操作出来る。リアシート用の10インチディスプレイは、Blu-rayプレーヤー付き。センターコンソールは、リアシート用のエアコン操作パネル付き。リアシートのセンターアームレストには、シート調整用スウィッチや、各種車両設定用の液晶パネル付き。各種車両設定用の液晶パネルは、取り外し可能。Bピラーはアンビエント・ライト付き。それにしても、もしM760Li xDriveがショファーカーとして使われるとしたら、運転手さんはなんと幸せなことだろう。大阪日帰り出張なんか命じられたら、自分だったら心が躍ってしまう。
文・サトータケシ 写真・安井宏充(Weekend.)
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