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A110並みの馬力重量 カム・マヌファクトゥア912cへ試乗 750kgに170psのフラット4

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A110並みの馬力重量 カム・マヌファクトゥア912cへ試乗 750kgに170psのフラット4

4気筒のポルシェ912がベース

今回は、普段とは違うポルシェのレストモッドをご紹介しよう。ハンガリー・ブダペストでチューニングを手掛けるミクロス・カズメール氏は、ベース車としてポルシェ912を選んでいる。リアアクスルの後方に、水平対向4気筒エンジンを積んだポルシェだ。

【画像】カム・マヌファクトゥア912c どれがお好み?ポルシェのレストモッド EV化の例も 全116枚

オリジナルの912は、初代ポルシェといえる356の後継モデルとして1965年から1969年にかけて作られた。水平対向6気筒エンジンを積んだ新型911の、エントリーグレードという位置づけにあった。

実際、高価な911より多く売れた。価格を抑えるため車載装備の一部が省かれ、エンジンも2気筒少なくコンパクトで、911より車重は軽かった。リア寄りの重心バランスが改善し、燃費も優れていた。

ポルシェは912を3万台近く生産している。良いポルシェだと思う。カズメールがカム・マヌファクトゥアというブランドを立ち上げ、レストモッドの対象に選ぶほど。

試乗したクルマは彼が初めて仕上げた1台で、プロトタイプといえる状態にあった。名前は912cという。2023年の初めには、本格的な生産体制に移るそうだ。既にオーダーした人は、その1年後から完成車を受け取れるという。

カズメールは、クラシックなポルシェとレンジローバーの大ファン。そんな彼のアイデアを、ひと足先に筆者が楽しませていただいた。

入念な軽量化で車重は750kg

レストモッドの出発点は、入念な軽量化。ボディパネルはボンネットにエンジンリッド、フロントフェンダー、ドアがカーボンファイバー製へ置き換えられる。内側にある細かな部材も。

オリジナルのスチール製ボディシェルは、サスペンションの取り付け部分を中心に強化される。ノーマルの912の車重は950kgと重くないが、カム・マヌファクトゥアの912cは750kgまで減量している。エアコンを搭載し、ガソリンが満タンの状態で。

カズメールは、実際に走り込んで燃料タンクが空になったら、700kgを切るだろうと話す。現代の感覚では驚くほど軽い。

ボディパネルのフィッティングはバッチリ。仕上がりは極めて美しい。ヘッドライトなどがLEDに交換されていないため、一見するとオリジナルのままに勘違いするほど。

車内にはカーボン製バケットシートが載り、ダッシュボードの化粧パネルもカーボン製。パネル類は、カーボンの織り目を見せることも、当時のクルマのようにクラシカルにすることも可能だという。1960年代や1970年代のレーシングカー風を理想としている。

アルミホイールはオリジナルと異なるデザインだが、お好みで選べる。タイヤはヨコハマのAD08RS。15インチでフロントが195/55、リアが205/50と控えめながら、サーキットも許容するアイテムだ。

お値段は、ベース車両と英国での税金などを含めて、30万ポンド(約4950万円)から。これより仕上がりが良くないレストモッドで、より高い例を筆者は知っている。

2.0Lへボアアップし、最高出力170psを発揮

水平対向4気筒エンジンは、1.6Lから2.0Lへボアアップ。エンジンブロック自体とクランクはオリジナルで、最高出力は170ps/6800rpmを発揮する。レッドラインは7200rpmに設定され、最大トルクは21.9kg-m/5450rpmと太い。

トランスミッションは、1速が横に飛び出たドッグレッグ・パターンの5速マニュアル。リミテッドスリップ・デフも組まれる。

フロントのマクファーソン式サスペンションには、車高調整できるコイルオーバーを装備。トレーリングアーム式のリア側には、車高調ではないダンパーとスプリングが組まれていた。

カズメールによると、リアも車高調にできるそうだ。その場合はエンジンの位置が若干前寄りになり、前後の重量配分を50:50に近づけることも可能だという。現状では、リア側に約6割が載っている。

ブレーキは964型ポルシェ911用のものが組まれる。アシストは付かない。

2.0Lで170psと聞くと、物足りなく感じる読者もいらっしゃるだろう。それでも車重は750kgだから、パワーウエイトレシオはアルピーヌA110と同等。フランス製ミドシップは、300psでも1119kgある。

ここまで912cを確認して、繊細で軽快なドライビングフィールを想像するかもしれない。ところが実際は少々異なる。

ステアリングのロックトゥロックは1.7回転しかない。筆者は、ゴーカートのように振り回して欲しいと伝えられた。サスペンション・スプリングが短く、バンプストッパーに当たっても気にしなくていいとも。

ケータハム級の半端ないクルマへの没入感

912cは、全身で運転するタイプのクルマだった。シートポジションは良好で、ペダルはティルトン社のフロアヒンジで踏みやすい。どれも感触は良いものの、かなり重たい。

ステアリングホイールは驚くほどダイレクトで、ヘビーでクイック。もう少し穏やかな特性でも良さそうだ。シフトレバーは古いフォルクスワーゲン・ビートルのようにゲートが曖昧。こちらも、改良の真っ最中らしい。

エンジンは痛快なフラット4の唸りを放ち、アクセルペダルの操作に鋭く反応。これ以上のパワーアップも可能らしいが、公道用スポーツカーとしては丁度良いように思う。

低い回転域から力強く、サウンドは912cの雰囲気にピッタリ。往年のレーシングカーを理想とするクルマらしく、うるさい。

乗り心地は、全体的に落ち着いていて好印象。荒れた路面では、時折処理しきれない場面もあった。

ステアリングホイールを握って左右へ切り込むとリミテッドスリップ・デフが反応し、フロントノーズの向きを変えるアシストをしてくれる。極めて機敏で、運転しがいがある。

見た目の雰囲気やスペックから、郊外の大型シアターへ気軽にドライブするようなスポーツカーをイメージしていた。だが実際は、土曜日の早朝にワインディングを駆け登り、眼下の景色を眺めつつコーヒーを飲むようなドライブが向いている。

クルマへの没入感は半端ない。ケータハムに近い。

独自性が強く運転の楽しいレストモッド

あいにく、筆者はオリジナルのポルシェ912を運転したことがない。どれほどの変化を得ているのか、正しくは判断できない。それでも、カム・マヌファクトゥアのレストモッドは他の事例とは大きく異なるし、間違いなく仕上がりは好ましい。

ポルシェ912は、オリジナルへ忠実にレストアされる例も多い。クルマの重要性に対する考え方は、人によってそれぞれだろう。

予定している生産台数は20台から30台だというが、希望者が多ければ制限はしないという。仕上がりに対する厳しい縛りもない。リラックスした912cを望めば、カズメールはそれに応えてくれる。インテリアも自由にオーダーできる。ロールケージを組む必要もない。

まだプロトタイプだとしても、912cの独自性は強い。運転の楽しい、レストモッド・ポルシェなことは確かだといえる。

カム・マヌファクトゥア912c(欧州仕様)のスペック

英国価格:30万ポンド(約4950万円/ベース車両込み)
全長:4163mm
全幅:1610mm
全高:1320mm
最高速度:225km/h(予想)
0-100km/h加速:6.0秒(予想)
燃費: 10.6km/L(予想)
CO2排出量:−
車両重量:750kg
パワートレイン:水平対向4気筒2000cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:170ps/6800rpm
最大トルク:21.9kg-m/5450rpm
ギアボックス:5速マニュアル

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