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水冷スポーツスターの本命か?──新型ハーレー・ダビッドソン・ナイトスター・スペシャル試乗記

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水冷スポーツスターの本命か?──新型ハーレー・ダビッドソン・ナイトスター・スペシャル試乗記

ハーレー・ダビッドソンの2023年モデルに追加された「ナイトスター・スペシャル」の魅力とは? 河西啓介が試乗した!

空冷から水冷へ

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2023年、創立120周年を迎えたハーレー ダビッドソン。アニバーサリーイヤーに相応しい、魅力的なモデルを続々登場させている。その1台が「ナイトスター・スペシャル」だ。

話を少し前に戻そう。2021年、ハーレーは軽量コンパクトなスポーツモデルとして長年人気を博してきた「スポーツスター」シリーズのエンジンを空冷から水冷へと置き換えるという、大きなモデルチェンジをおこなった。

そのとき登場したのが新世代の「スポーツスターS」である。スポーツスターSは見た目も空冷モデルとは大きく変わっていた。端的に言えばかなりモダンでスポーティー。空冷スポスタのオーセンティックな雰囲気を好んでいた守旧派にとっては(ワタシのことです)、ちょっと違和感があったのも事実だ。

翌年、「ナイトスター」が発表された。水冷エンジンを積む「スポーツスター」シリーズの第2弾であり、そのスタイルは空冷モデルへのオマージュを感じさせる、レトロ感のあるものだった。フロント19インチ、リア16インチホイールを履いた、ロー&ロングなプロポーション。小ぶりなピーナツ型の燃料タンク、シンプルなシングルシート。

もちろんその心臓部は新開発の975cc水冷Vツインエンジンであり、燃料タンクをシート下に配して低重心化を図った構造やライディングモードなどの電子制御デバイス装備と、中身は一新されている。

個人的には、従来の“スポスタらしさ”を残した外観と、新世代のパワーユニット&車体が組み合わされたナイトスターはかなり好印象で、これこそ水冷「スポーツスター」シリーズの本命! と、思ったのである。

11万円の違い今回、2023年モデルで追加されたのは「ナイトスター・スペシャル」だ。

名前の通り。ナイトスターに特別な装備を施したスペシャル版である。外観から見ていくと、まずヘッドライトにバイザーのような「スピードカウル」が備わっている。これは空力効果も多少はあるだろうが、見た目のスポーティーさを演出する意味合いが大きいと思われる。

そしてタンク(実際の燃料タンクはシート下にあり、これはタンク風のカバーなのだが)のグラフィックが目を引く。1970年代のハーレーに使われていた、レインボーカラーのレトロなロゴが描かれているのだ。これがなかなかいい。いま風に言うと“エモい”のである。

実用面での違いは、タンデム用シートおよびステップが備わったこと。スタンダードのナイトスターはシングルシート仕様で、シンプルでカッコいいのだが、もしタンデムライドを望むなら後付けでパッセンジャー用シートとステップを用意しなければならなかった。

またスタンダードのアナログメーターが、TFTカラー液晶のデジタルメーターになっているのも特筆すべき点。スマートフォンに専用アプリをダウンロードし、Bluetooth接続することでナビゲーション画面を表示させられるなど、インフォテインメント機能が大きく進化している。

跨ってみると、じつはポジションもスタンダードのナイトスターとは微妙に異なっている。シート高は715mmとスペシャルのほうが10mm高い。

とはいえこの違いはよほど気をつけて比べないとわからないが、明らかに感じられるのはハンドル位置の高さだ。

低めにセットされたスタンダードに対し、スペシャルはバーハンドルの形状が違い、グリップ位置が少し高め。ゆえに上体を起こした、ゆったりしたポジションを取ることができる(スタンダードも決して前傾ポジションではないが)。

このライディングポジションやタンデムシート装備などを鑑みるに、シンプルなスタンダードのナイトスターに対して、スペシャルは快適性やツーリング性能を重視したキャラクター付けがされているのだと感じる。価格を比べると、スタンダードが226万3800円(税込)からなのに対して、スペシャルは237万3800円(税込)から。つまり11万円の違いであり、両車の装備を比べるとスペシャルの価格はおトクな設定だと言えるだろう。

スタンダードとスペシャルで迷ったら……走りについては、スペシャルもスタンダードも基本的には変わりがない。

89psの最高出力と95Nmの最大トルクを発揮する975cc水冷Vツイン「レボリューションマックス975T」はビュンビュンと軽く吹け上がり、盛大な振動を伴いながらドゥロロロン! と回った空冷Vツインとはまったく別モノ。

そして空冷モデルとの最大の違いは取りまわしの軽さだ。ナイトスター・スペシャルの車重は225kgと空冷モデル(2021年式スポーツスターXL883Nアイアン)の256kgに対し30kg以上軽く、さらに燃料タンクをシート下に配置したことによる低重心化の恩恵で、じっさいの車重の違い以上に走りの“軽快さ”を感じる。

あえて走りについて、スタンダードとの違いを見つけるなら、前述したハンドル位置の違いからスペシャルのほうがよりリラックスしたポジションが取れるので、ハンドリングの軽さや自由度が増したように感じられる。

とはいえそれも両車を交互に乗り換えればわかるかな……という程度のもの。

もしナイトスターのスタンダードとスペシャルで迷っている人がいたならば、単純に装備や価格の違いで選べばいい、と、アドバイスする。

もし自分だったら……と、考えると、タンデムシートがあること、メーターにナビが映せること、そしてタンクに描かれたレトロなロゴがセンスよく効いている(と感じた)ことから、スペシャルのほうを選ぶと思う。

従来モデルのいいところをバランスよく採り入れたナイトスター・スペシャル、今後水冷「スポーツスター」シリーズの中核を成すモデルになりそうな予感である。

文・河西啓介 写真・安井宏充(Weekend.) 編集・稲垣邦康(GQ)

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