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米製4.0L直8エンジンに英製ボディ レイルトン・ロードスター 息子が好んだブルー 前編

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米製4.0L直8エンジンに英製ボディ レイルトン・ロードスター 息子が好んだブルー 前編

複数のブランドを創業したマックリン

筆者が1度対面してみたかったと思う人物に、ノエル・マックリン氏がいる。今はなき自動車メーカー、インヴィクタとレイルトンを創業した彼は、60年に渡って技術開発や新規ビジネスへ積極的に取り組んだ。モータースポーツ活動にも熱心だった。

【画像】レイルトン・ロードスターとインヴィクタSタイプ 同時代のクラシックと比較 全129枚

オーストラリア・パースで生まれたマックリンは幼くして乗馬をたしなみ、10歳の頃にロンドン・チェルシーへ移住。住んでいた家の屋上では、ペットとしてライオンを飼っていたという。趣味のアイスホッケーは、国際試合のメンバーに選ばれる程の腕前だった。

一家が営むマレーシアでの天然ゴム事業は成功し、映画製作やモータースポーツなどへの豊かな資金源になった。1914年に第一次世界大戦が勃発すると、マックリンは連合軍が守る西部戦線へ参加。爆風に襲われるが、一命はとりとめた。

終戦後、マックリンは自動車産業へ進出し、シルバー・ホーク・モーター社を創業。さらに、ロンドン南西部のコバムを拠点にインヴィクタを立ち上げ、大恐慌を経て、今回ご紹介するレイルトンへも事業を拡大した。

1925年には富豪の知人、フィリップ・ライル氏からの資金提供を受けて、シフトチェンジを必要としない自動車の開発に着手。蒸気機関へも関心を広げた。インヴィクタのシャシーにメドウズ社のエンジンを搭載したスポーツ・モデルも生み出した。

直列8気筒エンジンのテラプレーン

レイルトン・ブランドを設立したのは1933年。映画製作から手を引いたマックリンは、所有する大きなワークショップを稼働させる新ビジネスを必要としていたのだ。

その時に目をつけたのが、アメリカ・デトロイトのハドソン・モーター社が発売した、4.0L直列8気筒エンジンを搭載した新モデルのテラプレーン。高品質なクルマを低価格に提供するという、可能性を見出した。

ただし、製造品質や洗練性、動力性能には惹かれた彼だったが、アメリカ的なスタイリングには納得できなかったようだ。シャシーを流用しながら、レイザーエッジと呼ばれた低いボンネットのコーチビルド・ボディを採用している。

電気系統やサスペンションも、オリジナルから改良。欧州市場に合わせたチューニングが施され、クロームメッキ・ラジエターが誇らしいレイルトン・テラプレーンを発売した。

このブランド名の由来となったのは、マックリンと交流のあった優れた技術者、リード・レイルトン氏。また彼は、レーシングドライバーでパイロットのリチャード・シャトルワース氏にも、プロトタイプ開発のために投資を持ちかけている。

レイルトン氏がテラプレーンへどの程度関わっていたのかは不明だが、1934年にはコーチビルダーのフリーストーン&ウェッブ社によるツアラー・ボディを搭載した、スタイリッシュな1台目が完成。報道陣や裕福な人々を驚かせた。

実際に体験すると信じられない高性能

当時の英国の自動車愛好家からは、アメリカと自国の寄せ集めスポーツカーだと非難されたようだ。それでも、レイルトン・テラプレーンは、単にブランド名を置き換えただけの内容とは違っていた。

ラジエターやダンパーが新しいだけでなく、軽量化も施されていた。当時のAUTOCARで試乗したサミー・デイヴィス氏は、その仕上がりに感銘を受けている。

「このクルマの高性能ぶりは、実際に体験すると信じられないものだとわかります。サルーンやツアラーで499ポンドという価格は、他の高性能モデルと比較しても驚くほど低い設定です」

実際、彼は1934年のラリー・モンテカルロへレイルトン・テラプレーンで参戦。3位入賞を果たしている。同年のアルパイン・トライアル・ラリーでも好成績を残した。

マックリンは販売戦略にも長け、著名な自動車愛好家もレイルトンを選ぶようになっていった。レーシングドライバーのホイットニー・ストレート氏や、アストン マーティンへ展開する事業を立ち上げたライオネル・マーティン氏もそこに含まれていた。

イタリア人技術者のアキレ・サンピエトロ・トムソン氏も、アルプスのステルヴィオ峠でレイルトン氏とともにドライブ。洗練された4.0Lエンジンのパワーと、トップギアでの豪快な走りに魅了されたようだ。

1933年から1939年に約1400台を製造

ボディはフリーストーン&ウェッブ社以外にも、ユニバーシティ社やキャリントン社、クレアモント社など複数のコーチビルダーが担当。アメリカ製の堅牢なメカニズムを、英国流の上品なボディで包み、様々なドライバーの好みに対応した。

1933年から1939年にかけて、当時としては少なくない約1400台のレイルトンが、複数のバリエーションでラインオフしている。ハドソン・モーター社によるアップデートを受けながら。

派手なドライビングスタイルで、マッドジャックという愛称が与えられていたシャトルワース氏も、そのタフさとパワフルさに魅了された。サルーンに軽量な16インチ・ホイールを履かせるなど、改造も試みていた。

1936年、リチャードは航空機のエンジンをトレーラーに積んで走行中、モーリス10HPと衝突。モーリスは完全に破壊されたが、レイルトンはヘッドライトが1つ外れ、ボディとアルミホイールの損傷程度で済んだという。

彼は数台のレイルトンを所有していた。その1台、シャシー番号741240のクルマは、当時105.6ポンドでマックリンから購入している。

当初はボンネットとスカットル、運転席だけをシャシーに載せた状態で、7000エーカー(約857万坪)もの広大な敷地を走り回っていたそうだ。だが、しばらくしてシャシーを短縮し、リチャード自らデザインしたスポーツボディを載せることを考えた。

この続きは後編にて。

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