現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > ホンダの新型「ヴェゼル」が提案する新しいクルマのデザイン

ここから本文です

ホンダの新型「ヴェゼル」が提案する新しいクルマのデザイン

掲載 更新 163
ホンダの新型「ヴェゼル」が提案する新しいクルマのデザイン

スタイルは誰のためにある?

以前、ホンダのN360などのデザインを担当した、まさにレジェンド・デザイナーにお話を伺ったことがある。ホンダにデザイナーとして入社したばかりの頃、本田宗一郎氏から「デザイナーが自分のセンスに任せてデザインしたのでは、客が気にいる商品は出来ない。客を知り、客の気持ちを想像しながら、先回りして作る商品があってこそ、初めて客の心が掴めるんだよ。そして俺は客のことを誰よりも知っている」といわれた。大学を出たばかりで意欲に燃え、自分のデザインで勝負してやろう、と意気盛んであっただけに、かなりの衝撃を受けたという。同時にクルマのデザインとはなんたるかを考え直すきっかけになったそうだ。

話題の「ニッサン パビリオン」で体験試乗できる!日産の新型クロスオーバーEV「アリア」の気になる中身

カリスマ創業者である本田宗一郎氏によるホンダイズムというものが、もし健在であるなら今回の新型ヴェゼルのデザインはユーザーにとってどういうものだろうか? 試乗を前にして、そんなことを考えていたところにひとつのニュースが飛び込んできた。

「発売後1ヵ月で累計約3万台を受注。月間販売計画の6倍以上となる好調な立ち上がり」というものだ。確かに初期受注としては凄い数字である。購入理由としてあがったのは運転支援システム「ホンダセンシング」の安全性の高さや、低燃費で環境性能の高いことなどである。そしてもう一点、存在感と精悍さを併せ持ったフロントマスクのデザインというアンケート結果だった。ユーザーにとって魅力的なデザインだと判断されての結果ということになる。

さっそく実車に対面する。コマーシャル画像でもかなりインパクトがあるフロントマスクだが、実際に見ると意外なほど都会的でスマートな印象。これまでのホンダデザインにあった直線的なキャラクターラインで構成され、さらに光り物が散りばめられた表情と決別するかのような新鮮さを感じたのだ。どこかほっこりさせるような柔らかさと、ボディ同色のルーバーが演出する近未来的なシャープさが絶妙に溶け合ったフロントマスクには、独特のエレガントさを感じる。

リアスタイルをみる。旧型よりもリアのピラーが前傾することでクーペスタイルがより強くなった。しかし、見どころは天地に薄く、横一直線に走るようにデザインされたリアのコンビネーションランプユニット。最近の流行とはいえ、都会的なホンダ流のデザインはクーペスタイルをよりスタイリッシュに演出していた。結果的に完成したボディは、F1マシンの設計や開発を担当している「HRD Sakura」の風洞実験施設で開発され、SUVとしてはトップクラスの空力性能を得ている。

デザインが多くのストレスを軽減してくれる

そんなデザインコンシャスなヴェゼルを街に連れ出してみる。まだデリバリーが始まったばかりの上に、3万台受注という威力だろうか、注目度は高い。もちろんこの勢いがズッと続くわけではないだろうが、安定した販売台数を維持するとすれば、デザインの鮮度が落ちないことも重要な要素となる。その点はそれほど心配する必要はないと思う。

そんな印象のまま、しばらく走っていると、このデザインのさらなる魅力に気が付いた。車体感覚がとてもつかみやすいのである。フロントスクリーンの視界の良さに加え、ボディサイドのスッキリとした面構成、そしてストンと切り落とされたような前後のボディなど、余計な出っ張りがない。そのため、駐車枠に入れたりするときにも気遣いが必要となる場面が本当に少なくなる。

まだある。ホンダセンシングのテストで乗り入れた高速では、巡航時にはエンジンの出番が多くなるものの、静粛性の高い移動が出来たのである。風切り音は低く、シューといった走行音とともに快適なクルージングが続く。これも空力特性に優れたデザインがあってのこと。

一般道では路面のうねりをソフトに吸収しながらのゆったりとした乗り心地と、そして日常シーンのほとんどをモーターで走行する2モーターハイブリッドシステムのお陰もあるのだろう、キャビンはひとクラス上と言えるほど快適だった。低燃費だけでなく、こうしたシームレスな走りやデザインの仕上がりのよさのお陰で、ストレスは減るものである。

走りを味わったあとに車内のデザインに目をやる。水平基調のインパネはシンプルでゴチャゴチャした感じがほとんどない。おまけにスイッチ類は着座姿勢を崩さず自然に手が届く位置に配置されている。そして乗り込んだときから気になっていたのが、ダイヤル式のスイッチの採用と、そうした操作スイッチに金属のしっとりとした質感を与えたことである。ダイヤルの操作感もソフトで安物感なし。旧型のヴェゼルがタッチ式のスイッチだっただけに、この感覚的な操作ができるダイヤル式になったことはなんとも嬉しい。

エクステリアもインテリアも満足度の高いデザイン。この新型ヴェゼルをもし本田宗一郎氏が見たらなんというだろうか? 今後のホンダデザインの方向性を示すものだともいわれているだけに、ひょっとすると「よくやったな」と評価するかもしれない。

生前の本田宗一郎氏と鈴鹿サーキットで、幸運にも数分間、話す機会を得たことがある。F1のこと、クルマ作りのことなど、なんでもいいから話を聞こうとした。すると

「若い連中はよくやっているし、もう俺が何かを話す必要なんかないぞ」と豪快に笑いながらこちらの質問を遮った。破天荒さや高圧的なことばかりがクローズアップされているが、そのときの本田宗一郎氏は、若き人々へすべてを託した心優しき好々爺だった。

ありきたりとも思える「使う人のためにデザインしろ」のひとこと。“ホンダらしさ”を維持するためには決して忘れてはいけない言葉だろうと思いながら、試乗を終えた。

ボディ同色のルーバーで構成され、近未来感を感じさせる個性的なフロントマスクはリアスタイルとも共通性のあるデザイン。

エアロパーツなど装備することなくシンプルで美しいエクステリアデザインと優れた空力性能の両立。

水平基調でシンプルなインパネ。操作系も手の届く範囲にある。また身体の触れる部位には柔らかな触感のパッドを装備。

静かでシームレスなモーター特有の加速がストレートに味わえる。

ドライバーだけでなく、乗員すべてが快適に移動できるように、ゆとり空間を追求。

ひざ周辺や足元の広さが確保され、快適な居住性を実現している。

温度調節など多くの操作系には操作感のいいダイヤル式を採用。しっとりとした質感は上質で高級感がある。

エアコンの吹き出し口にもダイヤル式。L字型の送風口から、風がフロント席乗員の頬をなでるようにサイドウインドウに沿って後方に流れる「そよ風アウトレット」

スマートフォンでドアロックやエアコンのON・OFFなどの操作を可能にする「Hondaリモート操作」

モーター走行を中心にさまざまなドライブモードを使い分ける独自の2モーターハイブリッドシステム。

リアシートを前方に倒すとフラットで広さもある使いやすい荷室が出現。

スペック

モデル名:e:HEV Z(FF)

価格:2,898,500円(税込み)
ボディサイズ:全長×全幅×全高:4,330×1,790×1,590mm
車重:1,380kg
駆動方式:FF
トランスミッション:AT
エンジン:直列4気筒DOHC 1,496cc
最高出力:72kw(98PS)/5,600~6,400rpm
最大トルク:127Nm(13.0kgm)/4,500~5,000rpm
フロントモーター:
最高出力:96kW(131ps)/4,000~8,000rpm
最大トルク:253Nm(25,8/0~3,500rpm
問い合わせ先:ホンダお客様相談センター 0120-112010

TEXT : 佐藤篤司(AQ編集部)
男性週刊誌、ライフスタイル誌、夕刊紙など一般誌を中心に、2輪から4輪まで“いかに乗り物のある生活を楽しむか”をテーマに、多くの情報を発信・提案を行う自動車ライター。著書「クルマ界歴史の証人」(講談社刊)。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油5円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

ジャガーEタイプ S1(2) スタイリングにもメカニズムにも魅了! 人生へ大きな影響を与えた1台
ジャガーEタイプ S1(2) スタイリングにもメカニズムにも魅了! 人生へ大きな影響を与えた1台
AUTOCAR JAPAN
もの凄く「絵になる」クルマ ジャガーEタイプ S1(1) そのすべてへ夢中になった15歳
もの凄く「絵になる」クルマ ジャガーEタイプ S1(1) そのすべてへ夢中になった15歳
AUTOCAR JAPAN
日本の「ペダル踏み間違い防止技術」世界のスタンダードに! 事故抑制のため国際論議を主導
日本の「ペダル踏み間違い防止技術」世界のスタンダードに! 事故抑制のため国際論議を主導
乗りものニュース
90年前の“博物館級”のオートバイがオークションに登場 “2輪界のロールス・ロイス” 1936年製ブラフ・シューペリアがカッコ良すぎる
90年前の“博物館級”のオートバイがオークションに登場 “2輪界のロールス・ロイス” 1936年製ブラフ・シューペリアがカッコ良すぎる
VAGUE
HRC渡辺社長、フェルスタッペンの4連覇を祝福「ホンダ/HRCとしてサポートし続けてこられたことを誇りに思う」
HRC渡辺社長、フェルスタッペンの4連覇を祝福「ホンダ/HRCとしてサポートし続けてこられたことを誇りに思う」
motorsport.com 日本版
斬新「日本の“フェラーリ”」に大反響! 「約700馬力のV8スゴイ」「日本なのに左ハンしかないんかい」「めちゃ高ッ」の声! 同じクルマが存在しない「J50」がスゴイ!
斬新「日本の“フェラーリ”」に大反響! 「約700馬力のV8スゴイ」「日本なのに左ハンしかないんかい」「めちゃ高ッ」の声! 同じクルマが存在しない「J50」がスゴイ!
くるまのニュース
本拠地の欧州で「メルセデス・ベンツのタクシー仕様」シェア急降下! なぜ? 「“ベンツのタクシー”に乗れたらラッキー」な時代が到来するのか
本拠地の欧州で「メルセデス・ベンツのタクシー仕様」シェア急降下! なぜ? 「“ベンツのタクシー”に乗れたらラッキー」な時代が到来するのか
VAGUE
「銀の皿」に「レジ横のガム&タバコ販売」に1000円以下のメニューと「ザ昭和」がたまらない! トラック野郎を癒し続ける「采女食堂」はぜひ立ち寄るべし【懐かしのドライブイン探訪その5】
「銀の皿」に「レジ横のガム&タバコ販売」に1000円以下のメニューと「ザ昭和」がたまらない! トラック野郎を癒し続ける「采女食堂」はぜひ立ち寄るべし【懐かしのドライブイン探訪その5】
WEB CARTOP
ラッセルが今季3度目のPP獲得。ガスリーと角田裕毅がQ3で健闘見せる【予選レポート/F1第22戦】
ラッセルが今季3度目のPP獲得。ガスリーと角田裕毅がQ3で健闘見せる【予選レポート/F1第22戦】
AUTOSPORT web
F1ラスベガスGPで追い上げ2位のハミルトン「予選がしっかりできれいれば、楽勝だったろうに」
F1ラスベガスGPで追い上げ2位のハミルトン「予選がしっかりできれいれば、楽勝だったろうに」
motorsport.com 日本版
中央道「長大トンネル」の手前にスマートIC開設へ 中山道の観光名所もすぐ近く!
中央道「長大トンネル」の手前にスマートIC開設へ 中山道の観光名所もすぐ近く!
乗りものニュース
ペレス、チームメイトのフェルスタッペンとは対照的に10位が精一杯「レッドブルは最高のチーム。来年は良いマシンが作れるはず」|ラスベガスGP
ペレス、チームメイトのフェルスタッペンとは対照的に10位が精一杯「レッドブルは最高のチーム。来年は良いマシンが作れるはず」|ラスベガスGP
motorsport.com 日本版
「ん、ここ工事してなくない?」 高速道路の車線規制“ムダに長い”場合がある理由とは?
「ん、ここ工事してなくない?」 高速道路の車線規制“ムダに長い”場合がある理由とは?
乗りものニュース
日本専用の新型「“MR”スポーツカー」初公開! 旧車デザイン×「ネットゥーノ」エンジン採用! 600馬力超えの「チェロSE」登場
日本専用の新型「“MR”スポーツカー」初公開! 旧車デザイン×「ネットゥーノ」エンジン採用! 600馬力超えの「チェロSE」登場
くるまのニュース
ピエール・ガスリー、予選3番手から無念マシントラブル脱落に「顔面平手打ちされたみたい」残り2戦にポテンシャルは確信|F1ラスベガスGP
ピエール・ガスリー、予選3番手から無念マシントラブル脱落に「顔面平手打ちされたみたい」残り2戦にポテンシャルは確信|F1ラスベガスGP
motorsport.com 日本版
モーターマガジンMovie 週間視聴回数BEST5 プラス1(2024年11月17日~11月23日)
モーターマガジンMovie 週間視聴回数BEST5 プラス1(2024年11月17日~11月23日)
Webモーターマガジン
F1マシンを脇に歌舞伎……来春鈴鹿のグリッドでも! 日本GPアンバサダーに就任した市川團十郎「息子と歌舞伎の扮装で踊る計画を」
F1マシンを脇に歌舞伎……来春鈴鹿のグリッドでも! 日本GPアンバサダーに就任した市川團十郎「息子と歌舞伎の扮装で踊る計画を」
motorsport.com 日本版
運営ブチギレ!? 一般車が「検問突破」何があった? 国際イベントでありえない"蛮行"発生! ラリージャパン3日目の出来事とは
運営ブチギレ!? 一般車が「検問突破」何があった? 国際イベントでありえない"蛮行"発生! ラリージャパン3日目の出来事とは
くるまのニュース

みんなのコメント

163件
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

264.9万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

69.8390.0万円

中古車を検索
ヴェゼルの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

264.9万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

69.8390.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村