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スバルの“名機”は色褪せない~WRX STI EJ20 Final Edition試乗記

掲載 更新 9
スバルの“名機”は色褪せない~WRX STI EJ20 Final Edition試乗記

なんとももったいない話だ。このエンジンがもう作られなくなってしまうなんて。

2019年に生産中止が決定したスバルの水平対向エンジン「EJ20」型。このエンジンを搭載する最終モデルとして、限定販売されたのが「WRX STI EJ20 Final Edition」。

ロールス・ロイスはなぜ高級なのか?

乗ると、「心底、惜しいなぁ」と、思った。それほどいいクルマなのだ。

【主要諸元】全長×全幅×全高:4595mm×1795mm×1475mm、ホイールベース2650mm、車両重量1500kg、乗車定員5名、エンジン1994cc水平対向4気筒DOHCターボ(308ps/6400rpm、420Nm/4400rpm)、トランスミッション6MT、駆動方式4WD、タイヤサイズ245/35R19、価格452万1000円(555台限定・完売)。WRX STIは、2014年の販売開始以降、時折、性能を引き上げた限定モデルを販売してきた。2015年の「S207」、2017年の「S208」、そして2018年の「TYPE RA-R」など。エンジンパワーや、エンジンのバランスどり、足まわり強化など、チューニング内容は多岐にわたる。

これら限定モデルの“有終の美”を飾るのが、2019年12月に販売開始された「EJ20 Final Edition」だ。「WRX STI Type S」をベースに「回転系パーツの重量公差および回転バランス公差を低減したバランスドエンジンを採用」したとメーカーが謳うモデルである。

エンジンまわりは、ピストン、コンロッド、クランクシャフトの再軽量化と組み合わせの調整をおこない、よりスムーズにまわるよう目指したという。クラッチカバーとフライホイールも、選び抜いた部品を組み付けたとのこと。精度にとことんこだわったのである。

くわえて、足まわりはブレンボ製のブレーキシステムを採用。ゴールドに輝く19インチ径のアルミホイールは、BBS社製の鍛造だ。

超希少な555台2019年10月23日に開幕した東京モーターショー2019で、プロトタイプを公開。555台の限定販売と発表された。で、フタを開けてみたら、あっというまに売り切れ。周囲にも買い逃した自動車ジャーナリストがいるぐらい。

“555”の数字といえば、1990年代に世界ラリー選手権で活躍した「インプレッサ555」を彷彿とさせる。アーダス・タバコカンパニーの銘柄「ステートエクスプレス555」のロゴを貼った、バカッ速いマシンはじつにカッコよかった。

EJ20型エンジンの生産中止は、各国の排ガス規制強化の影響だ。ひとつの時代が終わったのである。初代「レガシィ」への搭載が発表された当時、“新世代のスバル エンジンが登場した!”と、話題を呼んだのが懐かしい。

久しぶりのEJ20型エンジンは、まさに“熟成”という言葉がぴったり。ウルトラスムーズな感覚で、レッドゾーン手前までシュンッとまわるときの快感などが味わえなくなるのは寂しい。

昨今、すぐれたスポーツモデルはあるものの、全長4595mmの適度なサイズ感にくわえ、マニュアル トランスミッションを操作し、思いどおりの回転域を使って走れるモデルはほとんどない、ドライバーとクルマとの“一体感”という点でWRX EJ20 Final Editionのキャラクターは際立つ。

初めて乗るとき、アイドリングのままクラッチを1速とつなげようとすると、トルクが細くてエンジンがストールしそうになるが、これもWRXの魅力かもしれない。

そこでアクセルペダルを軽くあおって、1000rpmの手前あたりまでブンッとエンジン回転をあげ、そこでスパッとクラッチをつなぐ。ボディはパッと弾けるように加速する。

くわえて、「スバルの開発者やるなぁ」と、感心したのは、パワーバンドを上のほうに持っていった点だ。227kW(308ps)の最高出力は6400rpmで、422Nmの最大トルクは4400rpmで発生。まわして楽しめるように開発されているのだ。

5速でほぼ直結となる、クロースレシオの6段ギアボックスは、短いトラベルでのシフトアップとシフトダウンが可能なので、やや上でつながるクラッチペダルを操作しながら、こまめに3000rpmから上を使うよう走ると、たいへん気持ちがよい。

3000rpm以下の場合、追い越し加速時などにややトルクの薄さを感じる。それこそ、むかしの小排気量スポーツカーを思い出す。したがって、こまめにギアを変更し、アクセルペダルへの反応が速いトルクバンドを使う。とはいえ、まったく苦にならない。これこそ操縦の醍醐味である。

マニュアル トランスミッション搭載車でも、ずぼらな運転を許容するクルマもある。が、WRX EJ20 Final Editionはちがう。5000rpmあたりまで引っ張って、そこでぽんっとシフトアップ。回転はそんなに下がらない。そして上の回転域までひっぱって……を、繰り返すのが楽しい。

インテリアは、もとになるWRX STIとほぼおなじである。試乗車は「フル パッケージ」装着車両だったため、フロントシートは、レカロ社製のスポーツタイプ(電動調整式)。ホールド性、座り心地はいずれも良好だった。

ライバル不在「マニュアル車はひさしぶり」という人でも、すこし運転すれば慣れるはず。WRX EJ20 Final Editionは決して運転の難しいクルマではない。

マニュアル トランスミッションを操りながら、EJ20型エンジンのサウンドを聴けば「運転ってこんなに楽しかっただろうか…」と、思うだろう。とはいえ、WRX EJ20 Final Editionは完売。もし気になるのであれば、素のWRX STIでも良いと思う。中古車という選択肢も大いにアリ。

WRX EJ20 Final Edition とおなじ400万~500万円の価格帯で、ライバルといえばホンダ「シビック タイプR」だ。まもなくマイナーチェンジモデルが販売開始される。WRXと異なり5ドア ハッチバック。

ほかにマニュアル トランスミッション搭載モデルといえば、スバル「BRZ STIスポーツ」(359万7000円)やトヨタ「86 GRスポーツ」(385万円)、マツダ「ロードスターRF」(343万9700円~)などがあるものの、いずれも2ドアのスポーツモデル。

なるほど、WRXはライバル不在である。輸入車にも目を向けると、ルノー「メガーヌR.S.トロフィMT」(489万円)がある。最高出力221kW(300ps)、最大トルク440Nmを発揮する2.0リッター直列4気筒ガソリンターボ エンジンを搭載する。とはいえ、メガーヌもシビック同様、5ドア ハッチバック。ミドルクラスの4ドア セダンで、マニュアル トランスミッション+高性能エンジンという組み合わせは世界的にも希少だ。

WRX EJ20 Final Editionの不満を強いてあげるとすれば、ダッシュボードの質感か。とはいえ、これは買えなかったものの負け惜しみにしか聞こえない……。

文・小川フミオ 写真・安井宏充(Weekend.)

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みんなのコメント

9件
  • サイコーの大人のおもちゃ。
    乗ったことがない人が可愛そう。
    ピーキーなEJ20は最高に楽しい!
  • エンジンはいいが初代に比べるとデカくなりすぎた。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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